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オレにホレないモノはなし!~完全無欠のスコッパー~  作者: GIMI
第6章 我らにクダけぬモノはなし!
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074.渚のヴィーナス

 艶姫さんご自慢のカラクリ水陸両用車で、遊郭を出発したオレ達。

 コトコトとゼンマイを回転させながら、快調に坂道を下っていく。


「速ーい!!」

「ディグ様! これ楽しいです!」


 アンシィとアルマは、初めて乗る車にキャッキャと騒いでいる。

 対して、昨日の地震に引き続き、フローラは少し怖いのか、隣のシトリンにぴったりと抱き着いている。

 振動は少しあるが、オレの世界の車にも引けを取らないくらいの快適さだ。

 ジャスパーとかいうカラクリ職人は大したものだな。

 風を感じながら、そんなことを思っていると、いよいよ港へと入る。

 しかし、艶姫さんはまったくスピードを緩める様子もない。


「艶姫さん!?」

「このまま行くで~!!」


 坂道を降りた勢いのまま、オレ達を乗せた車は、港の突堤から海へとダイブした。

 浮遊感の後、ウォータースライダーのラストのような衝撃と共に、着水。

 一瞬、沈むのでは、とやきもきしたが、車はプカプカと浮かんでいる。


「さあ、このままゴーゴーや!」


 艶姫さんが、何やらギアを牽くと、8つあるタイヤが横方向に倒れ、さながらホバークラフトのような姿勢になる。

 後部からはスクリューが飛び出し、ウィーンという駆動音と共に、それが回転し出したかと思うと、地上を走るのと遜色ない速度で、車が前へと進み出した。


「本当に凄いですね……」

「ジャスパーはイーズマの三大職人の一人やからな。歴代最高のカラクリ職人や言われとる。今もなんやおもろいもん作っとるみたいやし」

「へぇ……。ちなみに残る2人は?」

「武器職人アイオライトと和菓子職人トパゾラや」


 おっと、武器職人はわかるけど、和菓子職人は盲点だったぜ。


「冒険者やったら、特に会いたいのはアイオライトやろう。バカンスを終えたら、また、どこかのタイミングで紹介したるから」

「おおっ、ありがとうございます!!」


 コネクションゲット! 神域の聖塔であらかた武器はゲットできたとはいえ、武器なんてものは、いつ壊れるかもわからないしな。


「あれ、なんか……」


 ゼンマイの駆動音とは別の振動が車のボディにわずかに響いている気がする。


「地震やね」

「えっ、また……?」


 昨日、この港に上陸した時に、地震にあったばかりだけど……。


「多いんよ。この国の地震は他の国の地震と発生源が違うから」

「どういうことですか?」

「イーズマの地震を引き起こしとるんは"竜"や」

「えっ、竜?」

「そう、鋼帝竜アダマントドラゴン。地底の奥深くで眠るその竜の身じろぎが、この国の地震を引き起こしとるんや」

「へぇ……」


 またまた出ましたよ。竜帝。

 炎帝竜、嵐帝竜と続いて、今度は鋼帝竜ですか。

 しかし、たった一匹の竜の身じろぎが地震になるなんて、あまりにスケールがでかすぎて、どうにもイメージが追い付かない。


「こんだけ地震が多いってことは、その竜の活動が活発になってるってことですか?」

「いや、地震自体は鋼帝竜の寝返りみたいなもんやし。活発かと言われると、どうかはわからん。少なくとも、以前姿を現したのは8年ほど前の事やから、次に地上に現れるのは、もう少し先になるというのが大方の予想や」

「地上に出てくるとどうなるんですか?」

「そうやね……イーズマは滅ぶ」

「えっ……!?」


 さすがに笑えない発言に、思わず身体が硬直する。


「うそうそ、滅ぶまではいかんよ」

「滅ぶまでは……ってことは」

「でも、過去、それに近いところまでいったことがあるんよ。鋼帝竜の強さは、もはや天災や。人間の手では、その被害を多少抑え込むことしかできへん。8年前も……」

「8年前?」

「あ、いや、こないな話はええな。せっかくのバカンスや! もっと楽しい話題にしよ!」


 一瞬、艶姫さんの顔に陰が浮かんだ気がしたが、すぐに、いつものにたりとした笑顔に戻る。


「ところで、ディグはん……昨夜はお愉しみやったみたいやね」

「えっ……あっ、はい……」


 まあ、確かに楽しかったですよ。主に将棋が。


「この娘の事はどうや。気に入ったか?」

「えっと……そうですね」


 なんとも返しにくい質問だが、とりあえずチェンジなんて答えるわけにもいかないし、曖昧に答えておく。


「なんや、煮え切らん返事やなぁ。まあ、ええわ。今日はさらにパワーアップして寄こすから、楽しみにしとき」

「えっ、ちょ……」


 今日も来させるつもりなんですか……。

 どうする? とコルリにアイコンタクトを送るが、仮面をつけているので、表情はうかがい知れない。

 はぁ、とりあえず、これで明日も寝不足確定ですわ。


「さあ、見えてきたで!」


 カラクリ水陸両用車で進む先には、美しい砂浜が広がる無人島が近づいてきていた。




 港からほんの25分ほど。オレ達は艶姫さんが所有する無人島へと足を踏み入れた。

 無人島とはいえ、いろいろと人の手は入っているようで、船を停泊させるための桟橋もあれば、豪奢なペンションも建っている。

 まさに、ひと夏のバカンスを楽しむために用意された場所って感じだ。

 車から降りたオレ達はまずはペンションに案内され、オレと女性陣が別れて、水着に着替えた。

 海水パンツ一丁履くだけで着替え完了の自分は、一足早くペンションの外に出た。

 照りつける太陽。爽やかな風と波の音。気温は高いが、内地と違って湿気があまりなく、過ごしやすい環境だ。

 まだ、午前中で砂浜もそれほど温まっていないのか、裸足でも歩くことができる。

 その砂も目が細かく、さらさらとしていて、足裏に感じる感触だけでもとても気持ち良い。

 このまま大の字になって倒れてしまおうか、なんて考えていると、女性陣がぞろぞろとペンションから出てきた。


「お、おおぉ……」


 思わず声が漏れた。

 オレのパーティの4人に加え、艶姫さん、そして、仮面をつけたままのコルリも含め、全員が水着に着替えていた。

 最初に視線がいってしまうのは、アンシィ、フローラ、艶姫さんのバインバイングループだ。

 アンシィはオレンジ、フローラは白の水着を着ているのだが、ビキニタイプでどちらもなかなかに胸が強調されている。

 昨日の時も思ったが、やっぱフローラまた胸が大きくなっているような……。

 前に結び目のついた水着なのだが、窮屈そうなのでその紐を解いてやりたくなるね。

 そして、なんといっても艶姫さん。他の2人に勝るとも劣らないバインバインの胸。そして、張り出したヒップにくびれた腰。

 男が好きな体型をそのまま形にしたフィギュアでも見ているかのような完璧な造形美。

 その上、どんなケアをしているのか、きめの細かいすべすべの白い肌に潮風に吹かれてなおさらさらとなびく黒い髪。

 渚のヴィーナスとは、まさにこの人のためにある言葉だろう。

 さて、所見では、やはりバインバイングループに目が行ってしまう悲しい男の性質(さが)であるが、残る3人の水着姿もなかなかどうしてかわいらしい。

 シトリンは露出を押さえ、フリルのたっぷりあしらわれた水着だ。

 上も下も裾が長く、特に下はスカート状になっているので、水着と普通の服の中間みたいなデザインだ。

 とはいえ、普段は露出していないかわいいおへそがひょっこりはんしているのはなかなかレアリティが高い。

 続いてアルマ。彼女は……なぜかスクール水着だった。

 いや、レナコさんが入れてくれていた衣装の中にあったんだろうが、まさかそれをチョイスするとは……。

 もしかしたら、サイズ的に合う衣装があれしかなかったのかもしれない。

 もちろん似合ってないなんていうことはなく、彼女の凹凸の少ない細い身体も、スクール水着を装着することで、どことなく丸みを帯びた印象となり、なかなかどうして悪くない。

 あれも見事にカバーできている……気がする。

 さて、最後にコルリ。

 狐面をつけた彼女ではあるが、水着はしっかりと身に着けている。

 上はビキニ、下はデニムのパンツというスタイル。

 スレンダーだが、適度に女性的な丸みのある彼女の体型によく似合っている。

 艶姫さんと同じく、陽を照らし返すかのような、白く、きめの細かい肌が目にまぶしい。


「みんな……。よく似合ってる」

「ありがとうございます! ディグ様!」

「ふふっ、ちょっと恥ずかしいですね」

「ディグはこういうの好みだろうか……」

「スイカ割りしましょー! スイカ割りっ!!」


 ああ、もうにぎやかだなぁ。

 とりあえず、今日はバカンスだ。

 好きなことを好きなだけさせてもらおう。




 それから、オレ達はひたすらレジャーを楽しんだ。

 アンシィのご希望通り、スイカ割りをしたり、ビーチバレーをしたり、浮き輪で海に浮かんでゆっくりしたり。

 この世界に来てから、こんなにゆったりとした時間を過ごしたのは初めてじゃないだろうか。

 そんな風に思えるくらい、オレ達はひとしきり海でのバカンスを満喫した。

 やがて陽が暮れると、花火をしたり、夕食にはバーベキューなんかもした。

 元の世界では、こんな青春っぽいこと、あんまりする機会なかったからなぁ。ちょっと涙が出そうなくらい楽しい。


「バクバク……あんた何うるうるしてんの?」

「嬉し涙さ」


 間もなく夜も更ける。

 みんなの水着姿をしっかりと目に焼き付けておこう。


「さて、じゃあ、そろそろ始めよか」

「ん、まだ、何かするんですか?」


 串肉でお腹も満たしたところ。

 あとは、お部屋でゆっくり、なんて考えていたであろうフローラが艶姫さんに問いかけた。

 それに対し、艶姫さんは、ニッと口角を上げた。


「ああ、イーズマの夏の風物詩……肝試しや!」

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