表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレにホレないモノはなし!~完全無欠のスコッパー~  作者: GIMI
第8章 新たなる戦いの幕開け
135/156

135.悪魔の輝眼族

「うぉおおおおらぁあああああ!!!」


 2体の魔人へと颯爽と飛び掛かっていたのは、やはりジアルマだった。

 強そうな相手が現れて、ジッとしてられる奴じゃない。

 大剣を引きずるように、間合いを詰めると、ジアルマは魔人に向かって、一閃した。

 しかし……。


「グルゥウウウアア!!!」


 分かれた上半身から復活した魔人が、自らの腕でそれを受け止める。


「な、なんだと……!?」

「グルァアアア!!!」


 そのまま、力任せに腕を振るうと、いとも簡単にジアルマの身体が宙を舞った。


「くっ!?」


 態勢を立て直し、再び大剣を振るうが、やはりそれも、魔人の剛腕に留められる。

 先ほどまでとは、パワーも耐久力も、そして、反応速度も段違いだ。


「へっ!! ようやく面白い相手が現れたぜ!! こいつはタイマンでぶち殺す!!」


 激しいバトルを開始したジアルマと魔人。

 だが、そのジアルマに横合いから攻撃を加えようとした者がいた。

 下半身から生まれたもう一体の魔人である。

 ふとましい脚とは思えない、素早さでジアルマに迫るそいつ。

 だが、その頬に、一筋の傷が刻まれた。

 コルリである。


「ディグ!! こいつらは、私達に任せて!! 本丸を!!」

「ああっ!!」


 2体の魔人をジアルマとコルリに任せ、残るメンバーでルチルと対峙する。


「ふふっ、鋼帝竜を倒しただけあって、やはりあの2人もなかなかやりますわね。私が強化した魔人は、レベル99の者でもたやすく葬りされる力があるというのに」

「ルチル! 今からでも遅くない!! 魔族側につくのはやめるんだ!!」

「あー、そういうので、ほだされる私ではありませんので。あと、最初に言っておきますと、同族でも、容赦はしませんわよ」


 言葉通りに、ルチルが神視眼に力を込めると、暗黒色の剣が、空中にいくつも浮かび、襲い掛かってきた。


「闇魔法!?」

「全員オレの後ろに!!」


 オレは、土壁スキルを使い、魔力でできた刃から身を守る。


「まぁ、土で防御なんて、あまりエレガントではありませんわね」

「泥臭さがオレと相棒の持ち味でね!!」


 軽口を叩いて、自分を鼓舞すると、オレとアンシィは嵐帝の加護の力で、奴へと飛翔する。

 先ほどから、相手はその場を動いていない。

 あくまで、予想だが、彼女の機動力は大したことない。


「ぶっぶーですわ。動く必要がないだけです」

「えっ!?」

 

 思考を読まれた!?

 そう思った時には、オレは何かにぶつかっていた。

 見ればそれは、いつの間にか、進行方向に設置されていた、謎の黒い球体だ。

 腹部にまとわりついたそれから、電撃のような激しい衝撃が放たれる。


「ぐぁああああああああっ!!」

「ディグ!!」

「はい、遅いですわ」


 シトリンが風魔法で、オレを助けようとするが、その魔力が放たれる直前に、黒い球体が、今度はシトリンに襲い掛かる。

 フローラも同様だ。


『ぐぁああああああああああああああああっ!!!』


「まったく。やはり、人間と言うのは、戦闘中でも無駄な思考が多いですわね。シンプルじゃないですわ」


 自分の髪の毛をもてあそびながら、つまらなそうにつぶやくルチル。

 黒い球体の電撃が過ぎ去ったオレは、地面に膝をついて、息を整える。

 そうだ。忘れていた……。

 彼女が輝眼族だとすれば、心読スキルを持っているということ。

 オレ達の思考は、常に読まれて続けている。

 今みたいに、下手な攻撃は、すべて、発生する前につぶされてしまう。

 これまで戦った敵と同じように戦うことは不可能。

 だが、それは、相手だけのアドバンテージじゃない。


「ま、そう考えますわよね」


 同じく黒い球体からダメージを受けながらも、シトリンがオレの前へと進み出た。

 輝眼族には、輝眼族。心読スキルには、心読スキルだ。


「シトリン、頼む……!」

「ああ」


 決意を込めた瞳で、シトリンは神視眼の力を全力で解放する。

 額のクリスタルが、金の光を放ち、幾何学模様を浮かべた。

 だが……。


「な、なぜだ……?」


 シトリンの顔に驚きの表情が浮かぶ。


「心が……読めない……!?」

「あなたのような型落ちの輝眼族の力では、私の心は読めませんわよ」


 ルチルは鼻で笑うようにして、シトリンをねめつける。


「私はすでに、普通の輝眼族よりも先のステージにいるのです。考えて、わかりませんでしたか? 普通の輝眼族が、闇の魔法なんて使えると思います?」


 そうだ。シトリンの最も得意とする属性は"風"と"光"。

 それは、シトリンだけが得意というわけではなく、輝眼族の特徴といったものだろう。

 しかし、ルチルは、闇の魔力で戦っている。

 本質的に光の存在であるはずの輝眼族が、闇の魔法を使うなんて、そもそもがおかしいのだ。


「やはり、何千年も眠っていて、脳が錆び付いていらっしゃるのかしらね。ちなみに、こんなこともできますわよ」

「ぐっ!? ろあえ;sんたおんdgぽだfばpbsfxぱんpsxふぁpbfだ!!!!?」

「シトリン!!!?」


 突然、シトリンが苦しみ出した。

 しかも、尋常な苦しみ方じゃない。

 目を見開いて、言葉にならない言葉を発しながら、倒れ伏す。

 オレは、完全に気絶してしまったシトリンを必死に抱き支えた。


「何をした!!!?」

「私の心を読もうとしつこかったので、カウンターをしかけさせていただいた次第ですわ。この子、悪意とか憎悪に随分弱くなっているようでしたから、少しそういった悪感情を思念波として送らせていただきましたの」

「そ、そんな……」


 もはや化け物なんてレベルじゃない。

 こいつの強さ、能力は常軌を逸している。

 このままじゃ、街へ引き返すどころか、この場で全滅もあり得る。


「あなたの思っている通りですわ。私達の力は、魔王様から与えられたもの。人間如きがどうにかできる強さではありませんの。素直に諦めた方が良いのではなくて?」

「ああ、確かにそうかもしれない……」


 オレは、シトリンの周りに土壁を形成し、安全を確保すると、ルチルへと向き直った。

 そして、アンシィを握る手に力を込める。


「だけど、どんなにお前が強かろうと、シトリンをこんなにしたお前を、オレ達が許すと思うか?」

「ふふっ、許すとか許さないとか、そんな狭量な尺度では──」


 ルチルが言葉を切る前に、オレは、目の前の地面を掘り抜いた。

 一息にルチルの足元の地面までトンネルを掘ると、そのまま、スコップドリルでルチルを狙う。

 だが、当然のように、ルチルはオレの攻撃が届く前に、空中へと飛び上がっていた。


「だから、あなたの行動は丸わかりですってば」

「だったら、これならどうだ!!」


 アンシィが、炎帝の加護を発動する。

 スコップの刃先が赤熱し、そして。


「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


 同時に、オレは、自分自身の中にある、熱いエネルギーを解放した。


「これは……!?」


 さすがのルチルもわずかに驚きの声を漏らす。

 フュン伝手に与えられた、炎帝竜からの新たな加護。

 なんのことはない。それは、アンシィが以前もらったものと同じ、炎の力を身に纏う加護だ。

 レベルが上がった今のオレだからこそ、人間でありながら、炎帝の加護を受け入れることができた。

 そして、オレが得たものとアンシィが得たもの。2つの加護の力は1つとなり、より大きな炎となる。

 名づけるならば……。


『炎帝の魂!!』


 爆炎を纏った刃が、ルチルを掠める。

 金髪のわずか数本が、焦げるとともに、風に散った。


「素晴らしいですわ!! この炎!! 竜帝のものですわね!!」

「フローラ!!」

「オールアップ・プログレッシブ!!」


 フローラの呪文により、オレの身体がスッと軽くなる。

 バフがかかったのだ。

 相手に思考が読まれてしまうならば、それを前提に戦うのみ!

 全力のパワーで、全力のスピードで、全力の炎で。

 相手が対処できないほどの攻撃をぶちかますのみ!!


「いいですわ、ディグさん!! その単純明快な思考!! まさに、かつての輝眼族が追い求めた人物像!!」

「はぁあああああああああああああ!!!」


 奴の戯言には耳を傾けず、オレは、とにかく全力全開でアンシィを振るう。

 コルリのアドバイスを経て、フローラが自ら編み出した呪文「オールアップ・プログレッシブ」は、一律に能力を向上させる通常のオールアップとは異なり、魔力を込めれば込めるだけ、対象の身体能力が向上するという魔法だ。

 常に大量の魔力を込め続けなければならないこの呪文は、フローラがそれだけに集中しなければならないという欠点はあるものの、その能力向上の度合いは、他のバフ系呪文の追随を許さない。

 普段のコルリよりも、さらに速い体捌きを獲得したオレは、縦横無尽にルチルへと攻撃を繰り出した。

 炎帝の魂の攻撃力もあり、ルチルの顔にも、さすがに余裕がなくなっている。いける!!


「いける!! じゃありませんわよ!!」 


 ルチルが腕を振ると、漆黒のかまいたちが吹き荒れる。

 輝眼族が得意とする風とルチル特有の闇の混合魔法だろう。

 その破壊力はすさまじい。

 まともに受ければ、致命傷。ならば!


「受け流す!!」


 フローラのバフにより、究極的に高まった動体視力で、かまいたちの軌道を完全に読む、幾筋かのその刃を掻い潜るようにして、オレはルチルに肉薄した。

 初めて、ルチルの顔に焦りの表情が浮かんだ。

 さあ、シトリンにしたことの報いを受けろ!!


「おらぁあああああああああああ!!!」


 オレは、唐竹割りの如く、アンシィを真っ向から全力で振り抜いた。

20000PV到達しました!

明日11月22日(日)の19時15分頃から、連続投稿を行います。

まだ、ストックあまり書き溜められていないので、今から頑張ります。

このタイミングで、ブクマ、評価等いただけるととても励みになります。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ