33/35
【サカイメの書架】2019年9月 お題「ごはん」
異世界に飛ばされて勇者をやることになったアキコは、ついに魔王との決戦に挑んだが、魔王は強かった。体力は底をつき戦況は絶望的だった。アキコは薄れゆく意識の中で思った。
おにぎりが食べたいなあ、と。
小さい頃から、食べたいと思ったものは必ず誰かが用意してくれた。それはシャーマンだったお祖母ちゃんが最期の力を振り絞ってアキコのお食い初めの儀式をしたからなのよと母が言っていたのは冗談だと思っていた。
だが、魔王が攻撃の手を止め、真っ青な顔で震えながら何かを握るような手付きをしているのを見て、冗談ではなかったと悟った。
お食い初めの儀式の意味は、一生ごはんを食べるのに困らないように、だったとアキコは思い出した。




