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【サカイメの書架】2019年7月 お題「夕日」
私の心に残る風景がある。
生まれ育った街に、高さ二百メートルの巨大煙突があった。
夕方、煙突を見上げると、自律制御型の煙突掃除ロボットが2台、てっぺんに取り付いて名残惜しむように西の空を見ているのだ。
可愛いねと母は言ったが、私は幼心に怖かった。巨大な虫にも見える2台のロボットが寄り添って日が沈むのをじっと待っている様子は恐ろしく、そして酷く美しかった。
後から知ったことだが、煙突の運用停止に伴いそのまま放置されたその虫型ロボットは充電されないため、補助の太陽光発電で、沈みゆく太陽から少しでもエネルギーを得ようと太陽を追っていたのだった。
人類に似ているなと死んだ父が言ったのはどういう意味だっただろう。




