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2018年6月 お題「あめの日」その1
水の精霊ウンディーネの少女たちがはしゃぎ声をあげて駆けていった。
たらいをひっくり返したようなこのどしゃ降りの中を、傘もささず雨合羽もつけずに薄青いワンピースだけで飛び出していく彼女たちはすっかりこのあたりの名物になった。観光客らが完全防水のカメラやスマホを片手に薄着の少女たちを熱心に撮影している。彼らは少女たちのはしゃぐ理由を知らないのだろう。
水の化身である彼女たちにとって、天より振り来る雨に触れることは、彼女たちの父とも言える天界の神との再会に等しい。
少女たちの恐ろしい父親の前で好色の目を向けるのであれば、相応の覚悟が必要だ。今年も、観光客が雨に流される事故を心配せずにはいられない。




