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2018年3月 お題「卒業」その2
今日は卒業式だった。だがその帰り道、最後の最後で嫌なやつに声をかけられた。隣のクラスの不良、高森蘭だ。
「なあ田中だろお前、ちょっといいか?」
僕は慣れた手つきでカツアゲ用の財布を取り出した。
「ごめん千円しか無いんだ」
「ちっ……ちげえよ! そうじゃなくて……」
「え、何」
「いやその……か、金が無いなら他に金になりそうなもん出せよ」
「え、無いよ。時計も安物だし」
カードだってないし。
「嘘つけ、こんな見えるとこにいいもんつけてんじゃねえか。これよこせよ」
「え、これ?」
「うん。金だろ一応。これくれよ」
「まあいいけど……」
高森がむしり取っていった制服のボタンは、二番目だった。




