2.3
何時間程話しただろうか。少しばかり懐かしい洋楽がかかる店内に赤い陽が差し込んできた。
「祐介、もうそろそろ出ないか?」
そう言われて初めて僕は、時計の針が五時半過ぎを示している事に気付いた。
また長く話し込んでしまった。話していると時を忘れてしまう、僕の悪い癖だ。
遼太郎は先に出るぞ、とさっさと店の外へ出て行ってしまった。
と、自分の分を払わずに出ていきやがった。心の中で悪態を吐きながら仕方なく僕は二人分のコーヒーを支払う。
これで何度目の奢りだろう。いや、考えると恐ろしいので考えないことにする。
遼太郎とは途中まで同じ電車だ。僕たちはまたいつも通りの会話をする。
「ところで祐介、今日家に泊まりに来ないか?」
何が悲しくて男二人で夜を過ごさなきゃならんのだ。
「そんなこと言って、週に一度は泊まりに来るじゃないか」
そりゃあ、一人で野球観戦するほど寂しいことは無いからな。
……まあ、正確には一人では無いんだけれど。
仕方ない、今日は泊まりに行くとするか。
「そう言うと思ったよ。さあ急いで晩飯を買わないと。試合開始に間に合わない」
遼太郎の家に着いたのは少しばかり短針が6を通り過ぎた頃だった。
急いで晩飯のパックを並べつつテレビのスイッチを押す。
もう試合は始まってしまっていた。幸いな事にまだ点は入っていない。
今日こそは勝ってくれと期待しつつ、晩飯を食べ始めた。
机のパックから中身が無くなる頃、Tは3点を失っていた。
少しばかりどんよりとした雰囲気が流れ、僕は段々と見る気を失っていた。
「祐介、もう帰るのかい?」
これ以上点を入れられると辛いからな、これじゃ野球ファン失格だ。
「まあいいけど、じゃあまた明日」
さて駅まで歩こうかという時
『やあ、相棒。本当に帰ってしまうのかい?』
後ろから声を掛けられた。