3.5
昼、食堂でいつも通り彼女と話す。
しかし朝は酷かった……ただの公開処刑じゃないか。
「いいでしょ、私も彼女と話したの。それで決めたんだ」
だからって何故ここまで積極的になったのだろうか……一体何を話したんだ?
「ごめんとは思うけどそれは村上君には言えない。それより君は鈍感系主人公を演じているのかな?」
……分かっちゃいるさ。でも何も言われない限り、僕はこの態度を改めるつもりはない。
「……そうだよね。でも私からは……」
「やあ祐介、今日は朝から良かったね」
遼太郎が口だけ笑いながら絶対零度の視線で僕を見てくる。……お前にされても何も感じない、止めてくれ。しかしタイミングが悪すぎやしないか?
「おっとそれは悪かったね、出直してくるよ」
「いいよ、東野君。また今度話すからさ」
そう言って、彼女は少し寂しく笑った。
僕は喫茶店で夕日に照らされていた。
珈琲と煙草の香りが混ざり合い、なんとも言えない独特の空間を創っている。
今日は遼太郎と昴に一人で帰ると告げてきた。
遼太郎は驚き、昴は少し寂しそうにしていた……すまない。
分かっている。彼女は何らかの理由で僕に気持ちを伝えることの出来ない事くらい。ずっと前から僕が目を逸らせていただけだ。彼女はおそらく最初から僕に興味を持っていた。それが単なる興味なのか、はたまた好意なのかなんて当時の僕に分かるはずが無かったが、一か月も関係を続けた今の僕には分かってしまう。
じゃあ何故こちらから彼女に気持ちを伝えないのか。
それはおそらく僕も気持ちを伝えてはならないからだ。
もし彼女と共に時を過ごし続けるとするならばそれは素晴らしい世界なのだろう。気の合う二人。互いに落ち着ける空間を話すだけで築いてしまう二人。なんと素晴らしいカップルなのだろうか。
でも何故か僕の勘がこう告げている。その世界に入ってはいけないのだと。
理由は分からない。
考えれば考える程訳が分からない。
意図的に誰かが分かることの無いようにしているのか。
無駄な思考が混じり合い本質が見えなくなっている。
何が邪魔なのか。
何が真実なのか。
無駄に焦らされ、思考回路が破裂しそうだ。
ああ、分からない。
感想、批評お待ちしています。




