1.2 プロローグ II
僕は村上祐介。冴えない地方大学の2回生だ。
頭は良いとは言えないが悪くはない、顔も醜くは無いが特に目立った所もない、つまらない大学生だ。
中学は普通に公立で、周りに流されるまま所謂自称進学校とやらへ進学し、またそこでも周りに流されそれなりの大学を選んだ。そして適当に入ったサークルとやらで適当な女と付き合っては振られ、このたび三度目の失恋を迎えた訳だ。
こんな酷く退屈でつまらない人生を歩んでいる僕だが、一つだけ人とは違うところがある。
それはもう一人の僕だ。いつも横にいる不思議な存在。これだけが僕の人生を少しだけ鮮やかにしていた。
月曜日を迎え、重い足取りで大学へと向かう。今日は不運なことに朝から講義が入っている。さらに件の元彼女とも、2時限目の講義で顔を合わせなければならない。ああ、不幸だ。
「おはよう、祐介。今日はいつにも増して暗い顔をしているね。なにかあったのかい?」
こいつは遼太郎。高校からの友人だ。というか今現在、僕の唯一の友人だ。
少しばかりセンチな気分になりつつ、やんわりと昨日の事を話す。
「あーあ、どうせまたつまらない、とかで振られたんだろ?」
やはりそれなりに長い付き合い、勘がいい。
「でもそれが君のたった一つの良ささ。同時に唯一の欠点でもあるけどね」
褒めてるか貶してるか分からないぞ。
「まあ、次はきっと上手くいくさ」
どうだかな。
こんな感じの友人との他愛ない会話をしつつ、僕は大学へと歩いていく。
元彼女との顔合わせという難関イベントをこなし、僕はようやく帰宅した。
今は午後8時半。いつものようにコンビニ弁当を温めつつ、テレビをつけた。
丁度野球の放送が流れていた。
そういえば初めての彼女とは野球を見に行った。彼女は野球が好きで、ほとんど野球の知らない僕は野球についての知識を叩きこまれた。おかげで今じゃ僕は一人の野球ファンになっている。
そんなどうでもいい事を考えつつ、温めた弁当を食べる。
未だに慣れない無駄に濃い味。体に悪いとは分かっていても、自炊する気力はわかないものだ。
『よう、相棒。野球はどうだ?』
ふとぼーっとしていると。またもう一人の僕が隣にいる。
「残念ながらTが負けてるよ。いつも最初はいい感じなんだけどなぁ」
『毎年そうなんだから、いい加減期待するのは止めたらどうだい?』
「それでも応援したくなるのが人間という生き物さ」
と適当な話をしていると、弁当を食べ終わった。
さて風呂に入ろうかとすると、もう一人の僕は消えていた。
いつ現れ、そして消えるのか未だに分からない。
まあどうせ明日会えるからいいかと、僕は深く考えず風呂に入った。
短い(´・ω・`)
追記 誤字修正しました。