2.10
軽く彼女から自己紹介をしてもらった。
名前は山崎昴。僕や遼太郎と同じ二回生である。
趣味は特にないらしい。友人も多くはないと聞いている。
「昨日東野君に急に声を掛けられて少し話をしないかって、あんまりそんな経験したことなかったから思わず二つ返事でokしちゃったの。」
・・・この子は本当に大丈夫なのだろうか。心配になる。
「でその時に村上君の話になったの。やけに東野君が君について熱く語ってね、そこまで言われると直接会いたくなるじゃない。だから無理やりお願いして連れてきてもらったの。」
・・・遼太郎、素知らぬ顔で横を向いていてもバレバレだぞ。というか君が気になった子じゃなかったのか・・・?
「いや、最初は不思議な子だなと思って話しかけたのだけど、少し話したら何故かやけに親近感を感じてね。冷静に考えてみたら君に似ているからだと思うんだ。」
そうか・・・?
「そうさ、君も彼女も至って普通だ。怖いくらい普通だ。特に特徴もなく、欠点と言えば普通過ぎる位しかない。」
君は横に彼女がいるのを忘れてないかな?
「ちょっと東野君、それは私に対しての悪口かな?」
少し微笑みながら先程と変わらない口調で彼女は言う。
・・・少し怖い。
とまあ他愛もない話を三人で延々としたわけだ。
気が付けば日が暮れている。彼女は僕や遼太郎とは反対方向の列車に乗るらしい。
「お話楽しかったよ、村上君。東野君も無理なお願いしてごめんね。じゃあまた機会があったらよろしくね。」
彼女はそういうと、反対側のプラットホームへの階段へ向かう。
彼女の姿が見えなくなってから、遼太郎は僕に言った。
「今日彼女は言わなかったけど、実は前々から君を気にしていたらしい。」
確かに、遼太郎が軽く話しただけであそこまで興味を持つ訳がない。
「彼女は君に気があるのは間違いない。」
そうかい、だがしばらくは恋愛なんて御免だ。
と思いつつ、僕たちもホームへ向かった。
ようやく話の流れが決まった・・・
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