第一話
とある学園の生徒会室で長い黒髪に赤い瞳の女子生徒が椅子に座り、書類を見ていた。
どんな書類なのかというと生徒の書類のようだ。
どうやら彼女は生徒会長のようで、真剣な顔で生徒のプロフを確認しているようである。
「ん? 彼女は……」
ふと、視線が止まり書類を見ながらつぶやく女子生徒――霜月会長。
彼女がいまいる学園の出資者でもある、そんな彼女の視線に止まったのは。
髪をツインテールにゆった小柄で童顔の少女だ。
「……そう、彼女が」
写真に触れて霜月はつぶやいた。
その様子を風紀委員の二人は不思議そうに見つめていた。
「どうされたんですか?」
「なにか、悩みごとなら聞きますけど?」
二人の問いに霜月は笑みを見せて首を横にふり、書類の審査をはじめていく。
そんな彼女を不思議そうに見つめながら書類をまとめていく。
「……今日は面白い日になりそうね」
「それは予言ですか?」
生徒会長の呟きに風紀委員のひとりが首をかしげて尋ねると。
「ふふ、それはどうでしょうね」
「また、秘密ですか? 秘密が増えすぎですよ」
楽しそうに笑う霜月会長に風紀委員の二人は呆れ顔であった。
「秘密があればあるほど、女性は美しくなるものよ」
そう言って仮想キーボードをブラインドタッチしてファイルを閉じていく。
風紀委員はよくわからないといった様子で同じようにまとめていく。
「今年の二年はどう楽しませてくれるのかしらね」
「できれば前のようなことだけは起きないでもらいたいものですがね」
霜月の呟きに風紀委員のひとりは仏頂面でそれだけを言った。
セミロングヘアの風紀委員の少女は前回で疲れるほど動いたことが起きないでもらいたい様子だ。
だが、そんなことが起きないんなんてノルンか予知能力でもなければ予知はできはしない。
まあ、なにもおきないことにこしたことはないのだが。
学園自体は生徒の自主性を尊重し、責任をもてる人物へとしようとするのがこの学園のコンセプトであり。
この学園ではじめて送られるファミリアを戦闘用にしてもよし、生活に必須するだけのものでもよし。
自らの力を成長させるのもよし、といういたって変わった校風だったりする。
「ふみか、それは無理難題というものだよ。 この世になにも起きないなんてことはないよ?
旅客機の事故にしろ電車の脱線にしろ、ね」
「きちんと調整していても起きるときはすくなからず誰かが絡んでいるんでしょうけどね」
ふみか、と呼んだ少年はにっこりと笑って告げる。
中性的な顔立ちをしている為、女装とかも似合いそうではあるが。
これでもれっきとした男である。