始まりの学園
「ちーこーくーー」
と外まで聞こえるような大声をあげ玄関まで走った、すると凛子の父親が目の前に現れ、送ってくれると言ってくれた、
そこに母も現れ凛子の元気が無いことに気づき優しく肩を抱きしめて口を開いた、
「昔何があったって大切なのは今この時をどうするかでしょ、全くそんなムスッて顔しないのあなた顔とても可愛いんだから」
そんな優しい言葉をかけられた凛子は泣きそうになるがぐっと堪えて言葉の代わりに満面の笑みで返した、その顔を見た母は安心したのか手を放し微笑んだ。
「もう行くぞ」
父親が左腕に付けている銀色の時計を見ながら京子を急がせた。
車の中では一言も喋らずに外の風景を見ていた、別に父親が嫌いなわけでは無く父親は普段から無口で話すことが基本的に少ないのである
大きな橋を渡り商店街を抜けると大きな上り坂が見えて来る。
大きな坂を登り終えると制服姿がどこかぎこちない新入生と思われる人々が1つの掲示板に集まっていた。
校舎自体は新築され新しく敷地は普通の学校に比べると大きいと思われ部活動の盛んな女子高である。
「須賀川凛子は〜、あっ!あった1年2組かぁー」
と新入生独特の緊張感と高揚感に心がざわめいていた
そんな心境の凛子の隣で一際大きな声で喜んでいる生徒がいた。
「1年2組だよーー花梨ちゃん!またまたまた同じクラスだね!
「また蜜柑ちゃんと同じクラス??これで何回目だろうね」
蜜柑と言う子は元気そうなアウトドアタイプの女の子で、花梨とい女の子は静かで偏見だけど読書とかしてそうなんて1人で考えていると蜜柑と呼ばれている女の子がこっちを凝視していた、
凛子は気まずくなりその場を離れようとした、その時蜜柑が凛子の腕を掴んだ、凛子はいきなりの事で驚いたが辛うじて質問する冷静さは持ち堪えていた。
「な、なんですか?」
質問の答えは帰ってこなかったが品定めされるようにジロジロとみられた。
蜜柑の友達の花梨は友達の意味不明の行動に驚き蜜柑にやめるように注意した。
「いきなり失礼じゃないやめなさい」
少し強めな口調の注意した、
そんな注意御構い無しに蜜柑は凛子に問いかけた
「あなたりんりんちゃん!?」
と少し声を荒げて質問した蜜柑の問いかけを聞いた瞬時に凛子の顔がこわばった、そして凛子は少し間を開け質問を返した
「………りんりんて誰?人違いです」
と精一杯の無表情で嘘を貫いた
あれーと言う顔をしている蜜柑に花梨が、手を離しなさい、と目配せをした
「あーごめんねいきなり凄い私の知ってるアイドルに似ててさ」
と手を離しながらこんなに心のこもってない謝罪も初めてだと思う凛子、
「りんりんて蜜柑ちゃんが昔から憧れてるって言ってるアイドルさん?」
花梨は不思議そうに自分の顔を見ていることに気づき慌てて顔を隠し気まずくなりその場を後にした、
蜜柑はまだ凛子の言葉を信じていなかった
「あの子絶対リンリンだよ!」
花梨は蜜柑を満面の笑みで見つめ頬をつねった
「痛い痛いよ花梨」
頬をつねられて泣きそうになっても花梨はつねった指を緩めない、花梨は満面の笑みで蜜柑の頬をつねり続けていた
「痛い本当にごめん!!だから許して」
花梨もその謝罪の言葉を聞きつねっていた指を退けた蜜柑はつねられた頬を両手で抑えて泣きそうになりながら花梨の顔を恐る恐る見た、
「いきなりあんな迷惑なこと言っちゃダメでしょあの人迷惑がっていたでしょ」
口調は柔らかかったが言葉に重みを感じた蜜柑は何回も謝り花梨の機嫌を直そうとしていた蜜柑はまだ懲りてないのかあの子の見ていたクラス表で同じクラスなのはわかっていたので後で話しかけようとしていた
「話しかけるのはいいけどあんな風にしちゃダメだよ」
花梨の性格を熟知しているのか蜜柑の考えてることがわかるようで蜜柑が暴走しないようにあらかじめ釘を打った
蜜柑は花梨にエスパーと言いそうになったがさすがに怒らせた後はおちゃらけた事を言うと頬をつねられかねないので今は我慢した
「時間押してるよ教室に行きましょ」
と周りを見渡すともう誰もいない事に気づき早足で教室へ急ぐ2人だった
1学年は3クラスまであり、1クラス20人後半で構成されている、
机は前に5列後ろに5列の合計25席あり広い教室に幅広く置かれていた
「今年も花梨ちゃんと前後だといいねーー」
花梨と蜜柑は苗字がすおうとすずきで、大体の確率で前後の席配置になる
教室の黒板には席の順番が書いてあり数人の女子が集まって話していた。
「うちと花梨の間に誰かいる!!」
蜜柑は黒板を見て驚きが隠せなかった
花梨と蜜柑の間には誰か知らない須賀川と言う子の席だった
「須賀川さんて誰!」
蜜柑は敵対心を向けながら須賀川さんの席の方を見ると見覚えのある赤い綺麗な髪の女子が座っていた
んん?と須賀川の顔をよく見ると先ほど蜜柑が失礼をした女の子がこちらを見ない様に視線を泳がしていた
花梨は素早く須賀川さんの席へ歩み寄った
「貴方が須賀川さんですか?」
「はいそうですが、貴方は?」
「私は周防花梨と申します須賀川さんの1つ前の席になりました、そして先ほど須賀川さんに迷惑をかけた、少しお馬鹿な子で鈴木蜜柑と言います私たち幼馴染でずっと同じクラスなんです」
「誰がお馬鹿だーー!ニコニコ笑顔で変なこと言うのやめてよ!」
要らない情報までありがとう、と声に出せるわけもなくただただぎこちない愛想笑いをしていた
花梨は鈍感なのか鈍感なふりをしているのかわからないが、迷惑ですという愛想笑いをしたのにニコニコと続けて話をしてきた、
「須賀川さんの名前は何と言うのですか?」
「凛子」
凛子と言う名前を聞くと同時に蜜柑がズカズカと近づき凛子の手を握った、
「やっぱりリンリンだよね!前プロフ見たとき凛子って本名載ってたの見たんだ!うち昔リンリンのライブ見たときからファンだったんだ、あれだよあれ隣町の大っきいショッピングモールのライブ!」
凛子は名前を告げた事を早速後悔した、
がしかしここでバレると後が厄介な事になる事は分かっていたので言い訳を必死に考えて
「だから人違いです!凛子なんて名前どこにでもいますから何でさっきから決めつけるんですか?」
と少し口調を強めて蜜柑に諭すと蜜柑は少し考えている様子を見せて数十秒の時間の後、口を開いた
「オーラかな?」
「蜜柑ちゃんオーラってどういうことですか?」
蜜柑以外の2人が不思議そうに、心配そうに蜜柑の顔を見つめた、
「2人してそんな可哀想な人を見る目で見ないでよ何か私馬鹿な子みたいじゃん」
「馬鹿な子見たいじゃなくて馬鹿な子なのよ」
蜜柑と花梨の会話に笑いが込み上げクスと笑ってしまった
それを見た蜜柑と花梨がニヤニヤしながら凛子を見た、
「凛子さんも笑うのですね」
「うちも思った!何かクールな感じだから少し驚き」
またもや、やってしまったと後悔をした真顔を貫きそのうち2人が離れていくのを待っていたからである
「何かうちリンリンと仲良くなりたい!」
と凛子の机の前に回り込み真っ直ぐな目で見られると流石の凛子でも断る事は容易ではないのかため息混じりに頭を縦にふった
「私も須賀川さんとお友達になりたいです」
と自分もなりたいと花梨も机に身を乗り出し凛子にアピールした、
凛子はもうどうにでもなれという勢いで首を縦にふった
「でもリンリンは辞めてください」
凛子はリンリンと呼ばれる事だけは嫌がった
「了解仕った、ならうち凛子って呼ぶねうちの事は蜜柑でも何でもいいよー後敬語はやめようよ同い年なんだからさ」
「うんわかった蜜柑ちゃんって呼ばせてもらうね」
「私も凛子ちゃんと呼ばせていただきます、あっ私の事は花梨と呼んでくださいね」
と各々自己紹介が済む頃にチャイムが鳴り響いた