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陰陽ごっこ  作者: hima
第壱幕 出会いとマネキン
3/20

出会いとマネキン 参

毒舌陰陽師の元へ助手として働き出して早々一ヶ月、

決して下僕ではない、

手下でもない、

助手だ、これだけはしっかり頭に刻み込んで欲しい、

陰陽師といってもあの芦屋 龍治とかいう男、

本当にその類いの男なのだろうか?

助手として働いていた一ヶ月も町の案内、探索、社巡りぐらいしかしていない、

好き勝手ぼろ雑巾のように使いっぱしりにされる毎日だ、

俺は騙されてるのか?ちゃんと時給は発生してるのか?

まあ、あいつが金の事とやかく言わないだけまだありがたい、

良しとしよう、

そう、一ヶ月じゃ何もわからない、

わかった事と言えばあの男は尊敬する価値もない駄目男と言うことくらいだ、敬語なんて勿体無い、

ただの全自動罵詈雑言吐き出し機だな、

そう、しつこいようだが決してあいつの下僕ではない、

まだまだこの先不安でならない

最近起きてるらしい連続行方不明事件で教師も生徒もピリピリしてやり辛いし

はぁ…面倒臭いよお、何もかも面倒臭い、

いっそあの花壇にお花さんになりてえ



「あ、また溜め息はいてる!最近溜め息ばっかりなんだから、駄目だよ白銀君。」


放課後のチャイムと共にオレンジ色の陽が差し込む廊下で一人の女子に声をかけられた。


「ああ、赤村か、いいじゃないか溜め息くらい、男には色々と考えるべき事が山積みなんだよ。」


赤村 雀(あかむら すずめ)、小さな時からの幼馴染みでいつもお節介を焼いてくれている、

幼馴染みといっても小学5年の時に引っ越して高校で再会という流れなので一概に幼馴染みという表現が合っているのかはわからない、

しかもお節介は俺だけに焼いているゲームや漫画の幼馴染みによくある感じでもない、

誰にでもこうなのだ、

誰にでも分け隔てなく優しく、お節介を焼くのだ、


「なにが男には~よ、人には誰だって問題が山積みなんだよ?それを受け止めて強く生きないとねっ!。」


まるで自分に言い聞かせるように笑った

なぜか俺にはその笑顔が酷く寂しげに見えたり見えなかったり、

赤村は引っ越して離れていた期間に変わってしまっていた、

思春期の女子だ、

家庭の環境が原因だろう、

詳しくは俺にはわからない、

前から世話焼きではあったが今は何か違う、何か引っ掛かるんだよなぁ、

まぁ、人は変わっていくものだしそこをいちいち気にかけるのは野暮ってもんだろう、

俺も人の事言えたもんじゃないが。


「そんなことよりさっ、しってる?最近町で出回ってる噂なんだけどさあ、。」


嬉しそうにはしゃぎながら赤村は俺に聞いてきたが、

俺には女が喜びそうな噂なんて微塵も興味が無い


「んあ?しらねえよ、なんだよ噂って、誰彼の恋模様の話か?興味ないね。」


「違うよお、私だってそんなもの興味の欠片もないんだけどさ、噂っていうのはぁ、う~んなんだろ?この町の七不思議みたいな感じかな?。」


興味の欠片もってお前、女ってその色恋沙汰は大好物じゃないか、

さばさばしてんなあ。


「なんだよその七不思議ってのは、流行ってんの?。」


「うん、流行ってるっていうのかわかんないんだけどね、お化けマネキンって話なんだけど…。」


「お化け…マネキン?なんじゃそりゃ。」


赤村の話を短くすると、

ある女生徒が電車に乗る際、

いつも駅前のベンチにいつも女が座っている、

普通なら別に気に止める事では無いのだが、

真夏の時期なのにその女はいつも帽子を深く被り真冬のような格好をしていたそうだ、

毎日、毎日、女はそこに座っていた、

そしていつのまにか居なくなっている

それに気づいた数人も気味悪がって誰も近付く人は居なかったという、

女が座り始めて約一年、

女は真冬の格好をしていたのだがある初夏の日の事、

一人の女生徒がいつも厚着の女が薄着なのに気が付いた、

いつもと違う、あまりにも突然の違和感にどうしても気になった女生徒は女に近づいてよく見てみたくなった、

色白で微動だにしない女に近付くにつれ、

女生徒は体が冷えるような違和感は強くなって行き、

あと1メートルという所まで来たとき女生徒は小さな悲鳴と共に近付いたことを心底後悔した、

何と女は生きている人間では無く、

ただのマネキンだったのだ、

(じゃあ誰がここに毎日マネキンを、何のために…)

女生徒は混乱と恐怖でその場を走り去った

その日以来、その女生徒とマネキンを見た者は居ないと言う…。


少し探せばありがちな話だ


「それがどうしたんだ?下らない噂だろ?。」


「いーえっ!本題はこれからなの!。」


「本題?まだ何か続きがあるのか?。」


「そうなのっ!近頃そのマネキンが夜な夜な町を徘徊して女性を襲ってるらしいの、そして被害者が出たその夜の駅前ベンチにマネキンが座るんだって、それが近頃の連続女性行方不明事件と関係が有るんじゃないかっていわれてるの!どお?少しは興味湧いてきたんじゃない?。」


「そんな非科学的な事あるわけないっしょ?どうせただの噂だって。」


どっかの陰陽師じゃあるまいし、

そんな事に首突っ込んだってろくなことないだろ…

あいつは興味を示すかも知れないが。


「やっぱりいち女子として心配でしょ?そこでっ!ここに調査依頼してみようと思うの、今朝たまたま見つけたのよねえ。」


そう言って赤村は一枚のビラを俺の前につきだした、

なかなかの勢いで、

殴られるかと思った…。


「ん…?あ、し、や、おんみょう?事務所ぉ~っ!?。」


どっかの陰陽師の名前があった…、

いつの間に出してんだよこんなチラシ、

なんでも相談下さいだと?

聞いてねえ、

まてよ?今の俺の状態を赤村に知られるのはまずい、

あいつが俺をあんな扱いやこんな扱いを受ける所を見られるのは避けねば、

「こんな胡散臭げな所止めとけって、ぼったくられた挙げ句適当に調査するふりしてはい終わりってパターンだってば。」


「そうかなぁ、でも陰陽って書いてるしこの話にピッタリじゃないかな?。」


くそ、なかなか折れないなこいつ、

どうすりゃいいんだ?

そこでまたしても俺はナイスアイデアを思い付いた、

我ながらこの逃げの口実への情熱と才能は他者を寄せ付けない勢いがあるな、

自慢にならないけど。


「わかったわかった、じゃあ俺が代わりに聞きにいってやるから、お前は安心して生活していればいいさ、俺様に任しておきなさい。」


俺様とか言っちゃったよ、

ちょっと調子のり過ぎたかな、

あの野郎みたいじゃないか、

まあいいかたまには、

とりあえずこの場をやり過ごすことが第一だ。


「わあ、本当に?ありがとう!実は今日用事があって帰るの遅くなるからいつ行くか悩んでたの、やっさしぃ!さすが虎ちゃん!。」


悩んでたのかよっ!こいつまさか最初からこのつもりで、

怖い…女って奴は怖いよぉ


「わかったから!もお見え見えなお世辞はやめろ、ちゃんと言っとくから、そして虎ちゃんて言うな。」


赤村はまだ何か言いたげだったがそろそろバイトに間に合わなくなりそうだったので俺はさっさと話を切り上げた、


「わかった!じゃあよろしくねっ虎ちゃん!それでは予定あるから、バーイバーイ。」


けろっと笑いながらそう言うと赤村は踵を返し、

黒く艶のある、ロングストレートの髪を翻し、

さっさと帰っていった、

やれやれ、あっちでもこっちでもパシリかよ、

面倒臭いがどうせ行かないと殺されるか悪霊を斡旋されるんだしついでに話しとく位いいか。


しかしマネキンだの行方不明だの有り得ないって、

てかバイト行かなきゃ殺される俺の人権の方が有り得ねーか…




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