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陰陽ごっこ  作者: hima
第壱幕 出会いとマネキン
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出会いとマネキン 弐

……ん?


天国?いやいや、

生きてる!

見てみれば車は間一髪のところで俺を轢くことなく避けれたらしい、

まあ、俺を避けても電柱と壁は車を避けてはくれなかったみたいだが。

何はともあれ…


「やったーっ!!生きてる!死んでない!帰ってまたソーメンが食べれるぞお!いや別にソーメン好きな訳ではないけど食事ができる!生きてる証拠だぁ。」


なんてちょっとテンションあがっちゃって意味わかんないことまで言っちゃったけども、

とりあえず嬉しい!

我が愛車、タイガー号は車と一緒に捲き込まれて無惨な姿にはなったが、

命と比べたら安いものだ、

タイガー号なんて名前今つけたぐらいだし、

二階級特進、名誉の死だ。

それに耳元で女の舌打ちが聞こえた気がしたが別に気にしない、

そろそろ気にしないといけない気もするが気にしない、

俺は生きているのだからな!!


ガチャ、

黒煙を吐く赤いスポーツカーのドアが開き中から運転手らしき人が出てきた。


あ、忘れてた、

絶望からの無事生還でテンション上がりすぎて車の心配を疎か、むしろ完全に忘れてた、

大丈夫かな、けっこう派手にいってるしな…、

でもこれくらいなら保健とやらでなんとかなるだろうしこの場合は歩行者の方が法律的に強いって親父も言ってたしなあ、

いかんいかん!そんなずる賢い事ばかり考えてる場合じゃない!運転手の安否を心配せねば、

おや?でも出てきた運転手は無事そうだ、

しかも爽やかな長身イケメン、

優しそうな雰囲気だしちゃんと話せばわかってくれそうだ

ニコッ!

男は近づいてきて優しく微笑んだ

ああ、よかった、まずは謝らなくちゃな。


「あの、どうもすみませ…。」


バッコォォンッ!!!!


え?何?いきなりおもっくそ殴られた、

親にもこんな勢いで殴られたこと無いのに?

誰が?あの優しそうなお兄さんが殴ったの?

よく考えたら高校生がいきなり飛び出してきてこんなことになったら殴られる可能性だってある、

だが突然の事すぎて混乱してしまってただ驚いた顔しか出来ないでいた。


「おいこらぁ!このクソガキがあぁ!何いきなり飛び出してんだコラァッ!!。」


首くらいの長髪を後ろに纏め結びながら叫ぶお兄さんの顔は先程の優しい顔とはうって変わって鬼の形相となっていた。


「俺様の車にぶつかるなんて良い度胸じゃねえか、覚悟できてんの?んー?。」


超怖ぇ…、やばいやばい読み間違えたこの人超怖えよぉ、

いやいや、でもここで折れたら敗けだ利はこっちにある。


「いやぁ、本当すいません!でもこれには訳がありまして。」


「うるせえ。」


「でもこっちも自転車ばらばらになっ…。」


「うるせえ。殺すぞ。」


なにこの人!話全く聞く気ないんだけどっ!?

日本語わかんないのかな!?伝わってないのかな!?


「80万。それで許してやる。」


「でも俺高校生ですし、そんな大金持ってるはずないですよ!!それに俺だっていきなり何かに背中を…。」


「そんなもんバイトでもなんでもすりゃなんとかなるだろうがっ、……ん?…。」


「そ、そんなの無理に決まって…え?どうかしたんですか?。」


男は俺の後ろをじっと見つめたあと、

何か納得したようにニヤリと笑い言った。


「なるほどそういう事ね、大体の話はわかった、お前面倒なのに憑き纏われてんなぁ、その馬鹿面だとお前自体は気づいてなさそうだがな、寄せの体質ってのはそこら歩いてても厄介なのを引き寄せっからねぇ。」


「どういう意味なんですか?寄せ?体質?厄介なのを引き寄せるって?まさか。」


「おう、そのまさかよ、うらめしそうな女がお前をあっちに連れていきたがってるぜ、お前にその気が無くても全く見えてい無いとしても、あちらさんは関係ないんだよ、ただ波長が合う奴をやたらめったら苦しめて連れていきたがるのさ。」


そう言うと男は手を上に振り上げた、

俺はまた殴られると思い、目を閉じ歯を食い縛ったが殴られはしなかった、トンッ、と肩に拳を当てただけだった、

その瞬間、肩の重みが消えて、気だるい感じも無くなった、

耳元で聞こえていた声は悔しさを呟きながら遠くなっていった気がした、

いや、確実に遠くなっていったんだ、目の前にいるこの男の話が本当なら。


「あ…あなたは一体、何者なんですか?。」


男はポケットから煙草を取りだしカチンッとオイルライターで火をつけた、深く吸い込んで俺の顔に煙を吐き出しながら最大限のどや顔で堂々と答えた、

こんな現代社会で、

さも誇らしげに。


「俺様は芦屋 龍治(あしや りゅうじ)。天才陰陽師だ。」


「陰…陽師?あの?まさか!今時?。」


「疑ってんじゃねーよクソ虫、別にいいけどよ、あの女のせいだといっても金はしっかり払ってもらうからな!死人に金無しって言うだろ?。」


「それを言うなら死人に口無しでしょ、え!?本当に俺が払うの!?お金無いのに。」


「なあに、すぐにとは言わねえ、訳あって俺はしばらくこの町に居座る、その間てめえは俺様の助手兼下僕っていう名誉有る仕事をすりゃいいんだよ、ちょうど探してたんだよ下僕。」


「下僕下僕って勝手に決めないでくださいよ!嫌ですよそんなの怪しいし胸糞わるい呼び名の役職!!。」


「お前に決める権利なんて無いんだよ、俺様はお前の命の恩人だぞ?悪ーい悪霊から守ってやったんだぞ?金払わねえんだったらさっきのより酷い奴をお前に憑かせちゃうぜぇ?。」


芦屋 龍治とか言う男は憎たらしく笑う。


「くっ、なんて卑怯な、それでも陰陽師ですか?そ…それにうちの高校あれですから、バイトとかそっちは校則で禁止ですから!。」


よしっこの理由ならいけるはず!我ながらナイスアイデアッ!


「お前別に陰陽師とか信じてねえだろが、それにバイト禁止だぁ?お前の鞄からピラピラ間抜けにはみ出してんの履歴書だろ?それに日曜日で休みのはずなのに制服…どおせ面接に落ちたんだろ。」


「落ちたんじゃない、間に合わなかっただけだ、はっ、しまった!バレた。」


「じゃあ決まりだ、しっかり頼むぞ、遅刻とか無断欠勤は殺すから、あ、そうだ、お前の名前はなんだ?。」


「殺すってあんた、俺は白銀 虎(しろがね とら)です、あ、勝手に決めないでくださいよ!まだ行くって決めてないですから、てか行きたくないですから。」


「しろがね…とら?なにそれ、変な名前、変な名前なのに名前負けしてんじゃん、まあいいや、しっかりきっかり100万払うまで逃げんじゃねーぞ。」


「名前突っ込むの止めてください、多少コンプレックスなんですから…って100万!?増えてんじゃないですか!!。」


「あったりめえだバカヤロー、無料で除霊なんかするわけねえだろ、除霊代だ。」


いつかバチがあたるか地獄におちるぞこいつ、

ま、そんなこんなでファーストフード屋では無くなったけど無理矢理バイト決まりました、

決めさせられました。

はぁ…どうなっちゃうんだろ。




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