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陰陽ごっこ  作者: hima
死人と獣
15/20

死人と獣 参

なんだこれ…どういう事なんだ。


血を流し、気を失って倒れている数人、

意識はないようだが命に別状は見当たらない、

ようやく目の前の惨状を飲み込み、頭が回ってきた俺は遅れながらも救急隊員を呼び警察に事情を伝えた、

事態が事態なだけ警察署に同行して時間はかかったものの、

なんとか日を跨ぐ前には自宅に戻ることが出来た、

本当は警察も少し俺を疑っていた節もあったのだろうが、

証拠不十分と高校生には短時間で数人を切りつけ遺体を隠すのは不可能となったらしい。


犯人は数人で事件を起こしたのか?

何のためにこんな事をしたのか?

誰にでも好かれていたあの老人の遺体を凌辱する動機とは?

普通に考えれば…いや、普通に考えなくともこれは警察の人達が考える事であり、解決するべき事なのだろう、

たかが一端の男子高校生が考え及ぶ所では無い、

だがどうも気にかかる、

眠れない、

これが人間の仕業だとは思えないのだ、

理由も根拠も無い、ただオカルトに傾倒する一般男子の妄想かも知れない、

それでも俺はじっとしていられず家を抜け出していた、

あの男へ会いに。


「ちっ、よりによって俺様が町を空けている時にまた…。」


無事家を抜け出し、

町内の警戒を強めている警察達の目を掻い潜りたどり着いた芦屋のボロ事務所で事の顛末を伝えると、

オンボロ事務所の主、芦屋 龍治は露骨に顔を顰め苛つきを露にした。


「それで、何か心当たりはあるのか?、事件現場だけを見てお前に相談するのは早計だとも思ったんだが、何だか気がかりで…。」


「まだ、何かの仕業と決まったわけじゃあねえがその爺さんの遺体が無くなってたとなると、やっぱり怪の線が濃厚になってくるな、まあ、ゴミ虫のお前にしては良い勘してるじゃねえか、まさか俺様の評価を上げようとして自作自演でもしてるんじゃねえか?。」


こんな時でも俺への罵声を忘れない不謹慎な性悪男が此処には存在しているのだから怪の可能性を視野に入れても不思議では無い、

お前なんかの評価なんぞ要る訳がないだろ、

怪より質が悪いんじゃないかこいつ。


それに、これは本当に勘なのだろうか?

本当に何か気にかかっている事なんてあるのか?

そうだ、

気にかかっている事が何なのかわからない、

ただの勘なだけなのかもしれない、

でもそれ以前に俺には周りを切り裂き、故人の遺体を持ち去るような非日常で非人道的な行いをする人間が居るとは受け入れられないだけなのだ、

怪の仕業にしてしまいたいだけなのだ。


「お?どうしたぐうの音も出ないか?大丈夫大丈夫、お前みたいな萌やし野郎にそんな芸当出来やしないのはわかってるさ。」


俺は嬉しそうににやにやと、ベラベラと喋る芦屋の減らず口を力強く遮った。


「違う、そんな事じゃない、俺は小さいときからあの夫婦にお世話になった、友達と喧嘩した時も親に叱られたときも、小学校に入学したときもテストで百点をとったときも、いつも笑顔で聞いていてくれた、俺だけじゃない赤村や他の奴らだってそうだ、そんな大切な人との最後の別れをこんな形にした犯人が許せない、これは依頼だ、この犯人を捕まえるのを手伝ってくれ、頼む。」


暫く間が空いて、芦屋はばつが悪い顔をして溜め息を吐くと俺を指差して言った。


「けっ、こんな時だけ急に汐らしくなりやがって、わかったよしょうがねえな、どおせ無能なお前には荷が重すぎて力不足だろう、俺の任務にも関わっているかも知れない、いっちょ有能な俺様が力を貸してやろう、だが勘違いするなよ?これは依頼だからな、金はきっちり耳揃えて払ってもらうからな、内容によっちゃ高くつくぜ。」


「無能は余計な気がするが、たすかるよ、頼りにしている、で?まずどうすればいいんだ?。」


「今はまだ警察が動き回っているはずだ、とりあえず明日またここで集まった後に聞き込みやら下調べをするしかないな、相手の目的がわからない以上、下手には動けん。」


芦屋はそう言って俺を追い出した、

本当に追い出した、

外には警察やもしかしたら犯人が彷徨いている可能性だってあるのに、

あの糞男は何の躊躇も無く眠いという理由だけで、

無事に家に帰還出来たから良かったものの…

あの野郎本当に信頼していいのだろうか?

そうして俺はとりあえず短いようで長い一日を終えた。

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