死人と獣 壱
青い夏は鮮やかに通り過ぎ、木々は紅葉の兆しを見せつつある秋口に入る、
夏に出会った自称天才陰陽師、芦屋 龍治と藤原高校二年で芦屋の陰陽事務所でバイトをする事になった俺、白銀 虎の物語はあの九十九神の事件以来、
なんの特筆するような事も無くただだらだらと平凡な毎日を送っている、
朝は低めのテンションで起床し、
飼い猫のミケに餌をやり、
朝食を食べたあとに学校へ行く、
授業が終わると芦屋の事務所へ赴き、
雑事やちょっとした依頼の手伝いをして帰宅、諸々を済まし就寝。
こんな毎日の繰り返し…
何も変わらない平凡な日が続くのは良い事だ、
学校は相変わらずだし、バイトのちょっとした依頼なんてのも依頼者のただの勘違いだったり低級霊などのいたずらばかり、
ただの勘違いなのに祓ったふりをして金を巻き上げる悪徳陰陽師が雇い主で俺の借金が100万から減らない事を除けば本当に平凡な一般高校生の毎日、
しかしこんな普通の日々を過ごしているこの町がもう一つの顔を持っているとなったら話は別、
しかもそのもう一つの顔が原因でこの町全体が混乱に見舞われ、
いつかは滅びてしまう可能性だってあるのだったらこんな悠長に暮らしている訳にはいかない、
早く情報を集め、対策を練らなければならない、
なのになんの情報も得られないままと言うのはやはりもどかしいというか歯痒いと言うか、
まあ、そんな町一つ巻き込むような大事に俺なんかが動き回ったところで何か出来るかどうかわからない、
ただそんな出来事が起こっていると知ってしまった以上、
その出来事に怪の類いが関わっていてその存在を眼で見て、肌で感じて、足を突っ込んでしまった以上は何も意味がないとしてもじっとはしていられないのだ。
だから今日も事務所でぐうたらしている糞雇い主に町に怪しい所がないかチェックしてこいと、
自分は何もしていない癖に、こき使われても文句も言わずに何故か前回の被害者でありクラスメイトの赤村 雀と一緒に町を探索している、
本当はかなり文句を言ったのだが、雇い主と言う卑怯な肩書きと、
給料無しと言う卑怯な呪文を呟かれたので大人な俺は大人しく従った。
「ねえねえ、次はどこのに行く!?まだまだ怪しい所はいっぱいあるよ。」
何故かすこぶる元気な同級生の赤村とこの町の怪しい所、怪しい噂を調べ始めて二日、いまだ有力な情報を得れないまま、
いつになったら俺の自由時間と一連の確証を示す情報をてに入れれるのだろうか、
うんざりしている所に構わず赤村は話を続ける、
「あ!そうだ!!次は西の外れの神社に言ってみようよ!あそこはまだ行ってないし私も入った事ないんだよね。」
「ああ、あそこは神社というより供養とかを専門にしているみたいだぞ?ペットやら動物が主らしいし。」
「そうなんだ、じゃあ逆に調べてみる価値ありだね、相手が人間だけだと思ったら大間違い、この前だって人形が犯人だったしね!。」
その人形に襲われた人間がなぜこんなにも他人事のように話せるのか、
こちら側からしたら少し引くくらいの乗りで行けるのか不思議で仕方がないのだが、
どうせ何も情報は無いし、行く宛も無いので赤村について西の外れの神社に行くことにした。
「ずいぶん来たな、こんな所人なんかなかなか来ないだろう、まあここで扱っているのは動物やペットだし俺達に縁がありそうには感じないもんな。」
早く帰りたいがために適当に済まそうとしている俺の目に古い石碑が見えた。
「見てみて!猫塚だって!!なんだか怪談めいてる名前だね!ほら!写真写真!。」
俺の気を知ってか知らずか、
赤村は芦屋に借りたカメラで此処を撮れと捲し立てる、
しょうがない、
撮らないと五月蝿そうなので撮ってやろう、
猫塚か、人を化かすと言われる動物でありペットとして人間と馴染み深い存在として奉られているのだろう、
怪談話とすればお誂え向きだ、
一応写真を撮っておいても損は無いだろう。
カシャリとシャッター音がなり、
俺達は次の場所へと足を進めた、
何かの気配を感じたのか、ただ雰囲気に呑まれただけなのか、
ここに長居したくはないと感じた印象だけは俺の中で残り続けた。