一歩歩み出す勇気を
シン、としたこの空気を変えるべく口を開いたのは、りんだった。
「ま、とりあえずラインでも交換しておこうよ。グループ作っておいた方が何かと便利でしょ」
「確かに、賛成。」
会うのは今日で二度目のこの四人。でも何となく、個々の性格は分かってきている。リンと呼ばれるこの子は一言でいうなら、生粋の陽キャだ。
でも、ただの陽キャじゃない。周りをよく見ている陽キャ。つまり、繊細な性格でもあると予想する。
私もアルバイトでキャバ嬢をしているから、空気を読むとか目の前の人を観察するとか、そういうのは考えてなくても割に無意識でできるタイプ。
多分、リンもそうだろう。暗くなった雰囲気や、少し気まずい雰囲気をこうやってサッと色を変えてくれる。
「そうですね、私もその方が良いと思います。」
そう賛同したミオは、私があまり出会ったことのない人種の子だ。──まあ、一言でいうならば、良い所のお嬢だろう。
こんなにもレディディオールのバッグが似合う子は中々居ない。それでいて、水商売独特の臭さも無い。つまり、生粋のお金持ちの娘さんって所。
性格でいうと、良くも悪くも「浮きたくない」が強いタイプだと思う。戦いの場面でも、一番最初にステッキを振ったのは私とリンで、それを見て流れで攻撃をした所を見ても、多分この感覚は外れていない。
だけど、基本的にキラキラとか可愛らしい物が好きなんだろう。あのときに誰よりも目を輝かせていたのも又、事実だ。幼少期に、変身系のアニメを見て、いつかは自分もこうなりたい…!と思っていたに違いない。
「そうね、しとこうか。」
と冷静に答えたのはエマ。
──インスタグラマーだ。と言いたい所だけど……まあ、本業は美容部員なんだけどね。
でも、その美貌と垢抜けた生活でインスタのフォロワーは5万人程度居る。ちなみに私もそのフォロワーの中の一人だ。
まさかこの神社でエマを見かけたときはびっくりしたけど…性格は、想像していた通りクールな感じだった。
インスタグラマーにしては珍しく、質問返しもしないしコメントにも返信しない。つまり、本業ではなく趣味でしたインスタがただバズってるだけなので、フォロワーに媚びない。
仕事に関しても、あくまでも自分の勤めている化粧品会社の新作が出たときに少しだけPRがてらストーリーを上げたり、可愛らしい投稿をするくらいだった。
あの戦いの場面でも、訳が分からないくせに「夢ならそれで良いじゃん、とことんやれ!」って感じでイケイケで進む私やリンとは違い、ちゃんと場面を分析して攻撃していたのもまたエマだった。
「夢なら良いなとか、夢なら面白いなって思ってたけど今日ここに来て話を聞いて、やっぱり現実だったんだ。って思ったよ。」
「……」
私が皆を即座に追加して、グループラインの名前を『クリスタルガールズ』と適当に決めてから、スタンプを送信する。
そしてそんなことを言いながら、顔を上げた。
「ってか夢にしては、この四人のぎこちなさや、とりあえずラインだけ交換しておくこの流れが余りにリアル過ぎるしね」
「私も思ってたよ。夢だったら嬉しいし、夢じゃなかったとしても何だか面白そうだって」
「リンはそういうタイプだよね」
「あ、タメ口呼び捨てでくる感じ?……ま、そっか。これから一緒に戦うときも来るって考えたら、背中を任せることになるんだしね。呼び捨てのタメ口くらいが一番良いか。」
「ねえ」
私とリンが2人で、そんなことを話し合っていると、エマが色っぽくリップを塗り直しながら口を開く。
「あの決め技の名前みたいなのは、いわないとダメなの?」
「いや、言わなくても良いけど、言った方がなんか良くない?」
「……」
リンのそんな答えに思わずブブッと吹き出すと、つられる様にして源蔵やミオも笑顔になった。
「まあ、良いか悪いかは置いといて。言った方が何となく自分の頭は整理できるかもだけど…」
「言えば良いんや。戦いの最中のことは皆憶えてない」
「え、私ら覚えてるじゃん。」
「お主らは見えとるからや。普通の人達には怨念は見えへん。つまり君達が戦ってるのも見えてないし、何やったら終わった後に、あれっ、今何してたっけ…って言う人がほとんどや」
「記憶が消えてる、みたいな?」
「まあ正式には止まってる、の方が正しいかもしれんけどな。ご都合主義のアニメみたいな感じで思っていたらわかりやすいやろう?」
「確かにね。」




