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少しずつ変わっていく世界【1】


【少しずつ変わっていく世界】



 ──あの夢みたいな日から、一週間が経過した。 LINEのグループは、私が最初にスタンプを送り、皆がそれに答える形で各自の個性が全開のスタンプを返してきて以降、ピタリと止まっている。


 少し寂しい気もするが、元々は住む世界が違う、友達ですらない子たちの集まり。それが『クリスタルガールズ』だ。


 冷静に考えれば、動きがない方が当たり前なのかもしれない。 あれから、鳳四魂大社にも足を運んでいないし。留年が決まったとはいえ、朝早く起きられた日はちゃんと学校に行っている。バイト先にも出勤しているし、ティーンの毎日はそれなりに忙しいのだ。



 ──ピロン、と聞き慣れた通知音が鳴った。高鳴る胸を抑え、冷静を装って画面を開く。


隼人:『ごめん!少し遅れる。30分くらいかかると思うから、適当にお茶でもしててくれないかな?』


ひかり:『全然いいよ(^^) 適当に待ってるー!』



 今日も慌ただしいJR梅田駅。普段のアルバイトでは素通りして北新地まで行くから、このダンジョンのような駅で立ち止まっている自分に、どこか違和感を覚える。


 今日の装いは、流行を押さえた完璧なはずのスタイルだ。


 秋の気配に合わせて、バーバリーのトレンチコートを羽織る。その下には、先日ZARAで一目惚れした黒のミニスカートと、パールが散りばめられたミュウミュウの白いニット。 ロングブーツは、先日衝動買いしたシャネルの新作だ。


 ちなみにこれは、エマも手に入れていた。


 彼女のインスタに投稿された全身写真を見て「エマが持っているなら、やっぱりこれが正解なんだ」と再確認した代物。お値段は全く可愛くなかったけれど、これで「正解」に乗れるなら安いものだ。


 メイクも完璧、髪も可愛く巻いた。


 どこからどう見ても、今風の可愛らしい女の子……になれているはずだ。


 

 既読を確認し、自分に少しばかりの笑顔が浮かぶのが分かった。そして、時間潰しに阪急百貨店へ入る。特に何も考えず、足は自然とコスメフロアへ向かっていた。


 独特の香りと、眩しいほどの照明。カウンターに並ぶコスメはどれも秋の装いで、深いブラウンやパープルのアイシャドウが目を引く。 普段はイヴ・サンローランやディオールを愛用しているけれど、今日は迷わずシャネルのカウンターへ向かった。


 理由は簡単。


 『エマが働いているから』……ただそれだけだ。


 カツカツと響くブーツのヒール音。


 反響する楽しげな笑い声と、BAたちの澄んだ声。色んな音が入り混じるこの空間には、当然、色んな感情も渦巻いているであろう事は予想出来る。


 あのお守りを肌身離さず持ち歩くようになってから、霊感とは少し違う、もっと鋭い「直感」のようなものが研ぎ澄まされていた。


 元々敏感な方ではあったけれど、それ以上に「場所」や「人」の気を深く感じる。 心霊スポットの類は昔から苦手だが、今やその半径5キロ以内にさえ近づきたくない。そんな感覚だ。



「あ……」


「ヤッホー」


 たまたま空いていたカウンターで、レジを触っていたエマとパチリと目が合う。私はネイルを反射させながらヒラヒラと手を振った。



 ……前から思っていたけれど、エマの顔立ちは羨ましいくらいに綺麗だ。


 量産型の可愛さとは一線を画す、正統派の女優のような気品がある。艶やかな黒髪のロングヘアも、彼女の意志の強さを象徴しているようでよく似合っていた。


 自分で言うのも虚しいが、流行を追いかけて自分を見失いがちな私とは、対照的な存在。だからインスタで初めて彼女を見かけた時に、手が勝手にフォロータブをクリックしたのだろう。


 フォロワーに媚びない姿勢もまたどこかで恰好良く思えている。



「何しに来たの?」


「時間つぶし。ってか 毎回投稿に『いいね』してるの、気づいてる?」


「ええ。まるで熱心なファンね」


「熱心なファンだよ。エマはフォローした時から私の憧れだもん」


 私の嘘偽りない言葉にエマはふっと表情を和らげると、少し真剣な眼差しをこちらに向けた。


「それより、ちょうど話したいことがあったの。今から休憩なんだけど、30分くらい時間無いかしら?一緒にカフェへ行かない?」


「いいけど……話したいこと?」


「ええ、ちょっとね」


 

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