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台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに  作者: にしのくみすた
第3章

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秘密の宝石は親愛の証(前編)

 街でいちばん大きい本屋にやってきた。


 ここは一般向けの本屋なので魔導書は置いていないが、それ以外の本はかなり充実している。

 さっそく恋愛小説のコーナーを見ることにした。


「モチコちゃん! 気になる本はあるかな!」


 びっしりと並んだ本を前にして、チャンチャルは楽しそうだ。


「恋愛小説だけでも、いっぱいあって悩むね」


 モチコは平積みになっている大量の本を眺める。

 棚にある本も含めるとさらにすごい数だ。


 いくつかの本には、書店員さんの推しコメントが書かれた札が付いていて、それを見るだけでも楽しい。

 恋愛小説にはどれも表紙にすてきなイラストが描かれていて、部屋に飾っておくだけでも楽しめそうだ。

 チャンチャルの解説も参考にしながら、あれやこれやと吟味していく。


 ふと一冊の本が目に入った。


「これ、表紙のイラストが可愛い」

「表紙買いも全然アリだよ!」


 本を手に取ってみる。

 表紙には、文学少女っぽい子と、スポーツ少女っぽい子が並んで描かれていた。


「モチコちゃん! お目が高い!」


 いつも楽しそうなチャンチャルのテンションが、さらに高くなる。


「それは『ひみしん』だよ! いま一番流行ってる作品! 内容もいいから超おすすめ!」

「ひみしん?」


 モチコのつぶやきに、マルシャが横から補足をしてくれる。


「タイトルの略称よ。それ、なかなか良くできてて、面白いと思うわ」


 マルシャも読んだことがあるらしい。


 本のタイトルを見ると『秘密の宝石は親愛の証』とあった。

 略して『ひみしん』か。


 ネタバレにならない程度に、チャンチャルがあらすじを説明してくれる。


 ――とある女学園で、退屈な日々を過ごしていた主人公。

 ふとしたきっかけで、学園の人気者であるスポーツ万能少女から、部活のマネージャーに抜擢される。

 大会優勝を目指し、ふたりは共に充実した毎日を過ごすようになる。


「主人公は、退屈な日々から救ってくれたスポーツ少女に、感謝の気持ちを抱くようになるの!」


 いつしか感謝は親愛に変わっていく。

 だが、人気者のスポーツ少女に自分は釣り合わないと思った主人公は、親愛の気持ちを心の奥にしまっておくことにした。


「それで主人公は、ペンダントをつくるんだ!」

「ペンダント?」

「相手の瞳とおなじ色の宝石で出来たペンダント! それを胸に隠しておくことで、親愛を心に秘めておくんだよ!」


 チャンチャルはちょっと早口で、ものすごく熱心に説明してくれた。


「最近はこの本の影響で、宝石ペンダント作りが流行ってるの! シグナスのスタッフにもやってる子多いよ!」

「へえ、そうなんだ」


 まずは定番の恋愛小説から読み始めようと思っていたところだ。

 いま流行っているというこの作品はちょうど良いかもしれない。

 表紙イラストの絵柄も好みだし。


「じゃあ、この本にしようかな」

「モチコちゃん! お買い上げありがとうございます!」


 なぜかチャンチャルが嬉しそうにお礼を言う。


「そしたら、モチコちゃんには特別サービスだよ!」

「え? サービス?」

「今ちょうど私が持ってる、この本も貸してあげる! セットで読むといいよ!」


 そう言ってサコッシュから取り出したのは『めちゃ簡単! 宝石ペンダントのつくりかた』という本だった。


「ペンダントを作る本?」

「そう! ひみしんを読んだら、絶対作りたくなるから!」

「ちーちゃんも作ったの?」

「んー、それは秘密!」


 そう言ってにしし、と笑うチャンチャルがかわいかったので、モチコはそれ以上つっこまなかった。


 そのあと、みんなで本屋をぐるりと見てから、お会計を済ませる。

 購入した『ひみしん』と、チャンチャルから借りた本をトートバックに入れ、本屋を後にした。


(中編に続く)

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