魔女っ子ピコニャー登場の舞っ!(後編)
タワーへ着くと、中央展望室には緑組のメンバーが揃っていた。
そこでモチコも知っている顔を見つける。
「あ! モチコちゃん! おはよう! ようこそ!」
「おはよう、ちーちゃん。今日はよろしくね」
「うん! 楽しみだねー!」
元気いっぱいのチャンチャルが、全力で歓迎してくれた。
モチコは周りにいたほかの赤組と緑組の人たちにも挨拶をする。
と、チャンチャルが誰かの腕を引っぱって連れてきた。
「モチコちゃん! モチコちゃん!」
「ん? ちーちゃん、どうしたの?」
「紹介します! 私の相方、ピコさんです!」
そう言って手で示されたほうを見た途端。
その人が突然、モチコの視界から消えた。
「えっ?」
どうやらその場でしゃがみ込んだらしい、と気づいた直後。
そこから一転、勢いよくピョーンと飛び上がって、モチコの目の前に現れた。
驚いたモチコの肩が、ビクッと跳ねる。
「平和のためなら悪を蹴散らせっ!」
「じゃん!」
ピコさんがセリフのようなものを叫び、右手で指さしポーズをキメた。
それと同時に、横にいるチャンチャルが合いの手を入れる。
「楽しいことなら猫におまかせっ!」
「じゃん!」
今度は左手で指さしポーズ。
またチャンチャルの効果音が入った。
どうやらこういうシステムらしい。
「空飛ぶヒロイン、魔女っ子ピコニャー! 参上っ!」
「じゃじゃーん!!」
最後は両手両足を広げてXポーズをキメる。
ピコニャーと名乗ったピコさんは、キリッとキメ顔だ。
なんなら隣にいるチャンチャルも同じ顔になってるし。
ふたりとも、完璧にやり切っていた。
中途半端な出来だったらコメントに困ったかもしれないが、相当な練習を積んだと思われる動きは洗練されていて、素直に感心する。
まさに『魔女っ子ピコニャー登場の舞っ!』だった。
「わっ、すごい! かっこいいです」
モチコは称賛の言葉とともにパチパチと拍手をした。
「ふっふっふ、モチコちゃんっ、話は聞いてるよ。今日はよろしくねっ」
「あっ、はい。よろしくお願いします」
「私のことはピコニャーと呼んでくれたまえっ!」
ピコさんは黄色い瞳をキラリンと輝かせながら、笑顔でそう言った。
ピコニャーというのはニックネームだ。
本名はピコットという。
セミロングの茶色い髪の後ろに、瞳と同じカナリア色のリボンを留めている。
そのカナリア色が、胸につけている緑色のスカーフとマッチしていて、見ていると元気をもらえる色合いだ。
「じゃあいこっか! モチコちゃんは、ピコさんのホウキの後ろに乗ってね!」
チャンチャルにそう言われて、モチコはピコットのホウキに二人乗りすることになった。
さっそく屋上展望台へ行き、ピコットのホウキの後ろに乗せてもらう。
ミライア以外のホウキに乗るのは初めてで、なんだか落ち着かない。
乗った後に腕をどうしていいか分からず、胸の前でお祈りのポーズみたいにしていた。
するとピコットが、
「しっかり抱きついてね。わたしのお腹のところで手を組むといいよっ」
と言ってくれたので、そのとおりにする。
その様子を、横にいたチャンチャルが好奇心にあふれる猫のような翠色の瞳で、じっと見守っていた。
すぐにピコットのホウキは空に浮かび上がった。
モチコを乗せているとは思えないほど、軽やかでスムーズに上昇していく。
先輩以外のホウキに上手く乗れるのか心配だったが、杞憂だった。
ピコットのホウキはとても動きが安定している。
それ以前に、ミライアのスピードの半分も出ていないので、全然余裕だった。
もちろんピコットが遅い訳ではなく、ミライアが速すぎるのだ。
「モチコちゃんっ、乗り心地は問題ないかなっ?」
「はい、ピコットさん。とっても乗りやすいです」
モチコがそう答えると、すぐ左横を並んで飛んでいるチャンチャルが言う。
「でしょ! ピコさんのホウキの乗りやすさは世界一だよ!」
なぜかちーちゃんが、ふふん、と得意気な顔をしているのがちょっと可愛かった。
緑組の元気コンビはさっきからずっと楽しそうだ。
「白おかっぱ、ぼやっとしてホウキから落ちるんじゃないわよ」
マルシャとアリサ隊長も後から飛んできて追いついた。
空の上に4人プラス1人が勢ぞろいする。
全員が並んだところで、アリサ隊長が口を開いた。
「では始めよう。午後からは、赤が安全飛行限界まで見回り。緑は通信圏内で船舶の誘導。シグナル発令時と緊急時には私から指示を出す」
アリサ隊長のキビキビとした指示に、残りのメンバーがみな「了解」と返事をする。
その返事を聞いたあと、隊長が今度はモチコの方を見て言った。
「今日は新人のモチコが見学で参加する。ぜひ各自の飛び方を見せてあげて欲しい」
「よぉし。白おかっぱにカッコいい飛び方を見せてあげるわぁぁぁ」
隊長の声かけに、マルシャは気合い十分という感じだ。
チャンチャルはにしし、と歯を見せて笑い、ピコットは振り返ってモチコにサムズアップしてみせた。
モチコはピコットのホウキの後ろで、頭だけぺこりとお辞儀をする。
「みなさん今日はよろしくお願いします」
モチコの挨拶が済むと、アリサ隊長が姿勢を整えて言った。
「ではいこうか。みな、良きフライトを」
「良きフライトを」
全員が声をそろえて、いつもの挨拶をする。
人数が多いと、それだけで挨拶にも特別感があった。
モチコはこぶしをぎゅっと握って気合いを入れた。
わくわくする心を抑えるのが大変だ。
いよいよ見学会が始まる。




