ぽこちん、リジットデニムを買う
「硬い! 板だこれは!」
デニム売り場の試着室から、ちんころこうじの叫びが聞こえた。あいちゃんは、それを聞いてクスクスと笑った。こうじの体型に合うデニムを探すのはいつも一苦労だったが、今回は“育てるジーンズ”——そう、リジットデニムを履いてみることになったのだった。
「ねえ、これって洗っちゃダメなの? 一生?」
「そんなわけないでしょ。一回目の洗いで縮むから、最初は履きながら慣らすんだよ。生デニムってそういうもんなの」
あいちゃんは、こうじの腰にぴったりとフィットするインディゴブルーの生地を撫でながら言った。硬いが、それがいい。シワも色落ちも、全部こうじだけの歴史になる。
「ふ〜ん……でもこのジーンズ、曲げるとパキパキ音がするんだけど……これで自転車乗れんの?」
「最初は乗れないと思う(笑) でも、少しずつ柔らかくなっていくんだよ。君と一緒にね」
あいちゃんの一言に、こうじは少し照れながら、鏡に映る自分の姿を見た。なんだか、ちょっと大人っぽい。まだ見慣れないけど、悪くない。
レジで会計を済ませたあと、紙袋を大事そうに抱えながらこうじは言った。
「これさ……名前つけてもいい?」
「へ?」
「"じっとくん"ってどうかな。リジットの"じっと"で」
「……かわいいじゃん。大事に育ててあげてね、じっとくん」
こうして、ちんころこうじの“じっとくん育成日記”がはじまったのであった。