ちんころこうじとたまもりの森
ちんころこうじが東京から戻る途中、ふと立ち寄った森があった。
それは、どこか懐かしくてあたたかい――
だけど、どこか寂しさもある、不思議な森。
名前は「たまもりの森」。
森の奥では、まんまるのたまごのような形をした生き物たちが暮らしていた。
彼らは「たまもり族」。感情をまるごと“もりもり”にしてしまう種族だった。
たまもり族の長老が言った。
「ちんころこうじよ、おぬしの心に、ゆれるものがあるのじゃな?」
ちん「…あいちゃんが、しんどそうでさ。俺、何かしてあげたいのに、何ができるかわからなくなる時があるんだ」
長老はにっこり笑って、こう言った。
「それなら、“きもちのまくら”を作ってみるがよい。この森の素材でできたまくらは、心をぽわ〜っと、まるくする力がある」
ちんころこうじは、たまもり族のふわふわな毛、やわらかい葉っぱ、夜明けの水しぶきのしずくなどを集め、心を込めてまくらを作った。
そして完成した「きもちのまくら」は、そっとあいちゃんの夢の中へと送られた。
その夜、あいちゃんは少し深く眠れた。 目覚めた時、つわりはまだあったけれど、「あ、今日はなんとなく大丈夫かも」と思えた。
それが、ちんころこうじの小さな、でも確かな旅のしるしだった。