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第3話「岸谷前総理① ~こいつはマジでやべえよ…。サイコパスくそメガネじゃん…~」

~首相官邸執務室にて~


「岸谷総理!わざわざご足労ありがとうございます!」


ソファーにゆっくり腰掛けながら、岸谷はこちらに視線を向けた。


「前総理ですよ。総理はあなただ、石波総理。

前みたいに呼んでくださいよ、岸谷さんでいい」


「岸谷さんでいいですって?まさかそんな。


そもそも前総理とは何か。そして前総理の呼称としては何がふさわしいのか。

どうあるべきなのか。ほんとうにそれでいいのか。

お互いが本当の意味で納得いくまで話し合って決めるべきではないのか。


そういった点を踏まえながらですね、慎重に議論を重ねていくべきだと考えているのですね。

いかがですか。岸谷総理!」


岸谷はメガネを直しながら笑ってこう言った。


「ははは。それよくやってましたよね。生で聞けてうれしいな。これから答弁でも使えそうですよね。


ははは。まあ僕らの間柄だから、そんなにネットリしなくていいですよ。岸谷さんでお願いします」


怖えよ。目の奥が笑ってない。これ以上ぶっ込むのはやめておこう。


「はい。岸谷さんと呼ばせていただきます。本日はよろしくお願いします」


「石波さんは相変わらず冗談がお好きだ。いやいや、笑わせてもらいましたよ。

それで、あの『腹出しモーニング』。あれは何なんですか?やっぱりアメリカからの指示ですか?」


「ええ。そうなんですよ。困ってるんですよ。何なんですか!あれは一体。


内閣の集合写真で腹を出せなんて。赤絨毯でですよ、憧れの赤絨毯!


全く意味が分からない。どういうつもりなんですかね、アメリカは。おかげで散々叩かれましたよ!


ニュー山王ホテルから来た文書だから無視するわけにもいけないし。

あのバカげた指令が軍事秘密扱いってどういうことなんですか!?」


「まあただの嫌がらせでしょうね。いちおう歴代の総理は、みんなその手の指令を受けているらしいのですよ。


私なんて、『メガネはずっと外すな。月2で床屋行け』でしたよ。レーシック受けたから両目の視力1.5ですよ。


メガネいらないんですよ本当は。おかげでメガネキャラがついちゃって、増税クソメガネとか呼ばれてましたからね。

笑っちゃいますよね。増税なんか一回もしてないよ、私。


あと床屋に月二回行くのも地味に面倒くさくて嫌だったし」


「そうだったのですね…。でもメガネも床屋もいいじゃないですか。清潔感があるから。

腹出しはひどいですよ。ほんとにひどい…。親が泣いてましたよ」


「たしかに。でも安部野さんは『ゴルフの時は短パン』ですよ。これもキツイですよー。

プライベートの時も監視されてるらしいですからね。プライベートでもゴルフの時は短パン」


「きついな…」


「小菅さんだけは何にもなかったらしいんです。ガースーはいじっちゃダメみたいなのが、アメリカでもあったのですかね?


その代わり、総理やめた後はあんな感じになっちゃいましたけど。動きがものすごくスローモーションでしょ。今。どっちがいいのかねー」

と岸谷は満面の笑み。


この人怖え…。それいじっていいのか!?


「いや…、まあ、そうですね…。」


「安部野さんは結局○されちゃったし。ゴルフの短パンはやらされ損ですよね。ははは」

岸谷は止まらない。


今、○されたって言った?この人。何も言えねえ…。

「…。」


急に真面目な表情になり、岸谷は鋭い眼光を向ける。


「石波さん。結局はアメリカなんですよ」


「はあ…」


「アメリカとうまく付き合っていかないと、日本はどうしょうもないんです。


『腹出しモーニング』は"わからせ"なんですよ。お前らは逆らえると思うなよってことです。

くやしいですよね?当たり前です。でも、それを飲み込んでうまくやっていかないといけない。


覚えてますか?森元さんの『神の国』発言。あんなこと普通なら言うわけがない。あれで支持率ぐっと下がりましたから。まあ、あの人は辞めた後もずっと失言してますけどね。女は話が長いとかなんとか。


とにかく、日本の総理として一番大事なのは、アメリカとの関係をうまくやっていくことです。

今日はこれを引き継ぎに来ました」


そう言って、岸谷はおもむろにジュラルミンケースを押し付けてきた。


「岸谷さん、困ります。私、おクスリの方はやってないんで」


岸谷のメガネの奥の眼光が光る。


やべえ…。ミスった。

「いや、冗談です。これは何ですか?」


「歴代の総理だけが見ることを許される機密文書です。私も小菅さんから引き継ぎました。

その時はまだしっかりしてたんだけどな、小菅さんも」

と言って、岸谷はこちらをチラリと見てきた。


リアクションに困る…。とりあえずガースーの件は無視しよう。

「どういった内容の機密なんでしょうか?」


「外交・国防関係がほとんどですが、主にアメリカに関係する機密ですよ。

日米地位協定の密約とか、日米合同委員会のこととか。


近いところで言うと、安部野さん○されたでしょ。あの件についても入ってます。

あとは、さっきの歴代の総理へのお題も入ってますよ。


石波さんもちゃんと入れておいてくださいね。『腹出しモーニング』の件も。


安部野さん、冬の寒い日に長ズボンで1回だけラウンド周っちゃったみたいですね。

たしか銃撃されたのはその年の夏だったかな。まあこれは冗談です」


笑えねえ…。無視しよう。


「岸谷さん、とんでもないものを持って来てくれましたね…。一体どう扱えばいいんですか」


岸谷の顔からふっと笑顔が消える。


「石波さん。あんた、覚悟決まってますよね?

本気で○にますよ。生半可な覚悟だと」


!?マジで怖えよ…。

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