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詩やエッセイ

目の悪い知人

私は目が悪い

ひどい乱視の類 (たぐい)だと思うが

正面は膨らむように歪み

文字をずっと見つめていると

それは歪んで踊り出す


霊がどうとか超能力だとか

そういう話ではなく

本当に目が悪いのだ


寝ころぶと焦点も合わなくなる

もちろん眼科は何度か通っている

市販の目薬は点すなと言われている

使用期限の短い処方された目薬を点している


霊がどうとか超能力だとか

そういった話が本当に嫌いだ

職場にいる自称霊感の強い女が

あそこに誰かいるとか今日もほざいている


こういう奴が本当に嫌いだ

なんで自分の首を這い回る

黒いムカデに気が付かないんだ

霊よりそこが気になって仕方がない


私は目が悪い

スマホやPCのモニターを見続けていると

目がだるくなり眼球が痛む

頭も重くなり耳鳴りがして

誰かが戻れ、戻れと耳元で囁いている様に錯覚する


知人に相談した時

霊がどうとか超能力だとか

そういう話をし始めたので縁を切った

喫茶店で得意げに信仰の話をする彼には

店内で遺言状を読み上げるBGMが気にならないのか


私は目が悪い

眠くもないのに瞼 (まぶた)が落ちることがある

心が疲れているのだろう

背もたれに身を任せ遠い故郷の海の底を思い起こす

 


 黒い波   黒い波   黒い波   黒い波

   黒い波   黒い波   黒い波   黒い波



自宅にいる時が一番安心する

独り身でなにも気にしなくていい

ペットの昆虫がゲージから溢れ

部屋中を飛び回りやがて異臭のする隣の家に向かう


霊がどうとか超能力だとか

そういう話を耳にしなくてすむ快適さ

窓を開ければカラスがささやく隣人の噂

どこかから咥えてきた肉片をつつくまでそれは続く


私は目が悪い

手にした文庫本は栞 (しおり)からあふれる脂でべたつき

文字が流れて床に落ちる

勝手に冷蔵庫をあさる黒い犬がまた入ってきた

ふたつの首で器用に扉を開け

私の夕食を奪おうとする

追い出そうとすると懐いているのか

乳首から生えた長い触手で太ももを突き刺してくる


霊がどうとか超能力だとか

下らない妄想は本当に嫌いだ

現実の美しさを知らないのか

空を見ろ

六つに割れた太陽から光あふれる神々しさよ


そうか!今日はパレードか!

 うか!今日 パレードか!

そうか! 日はパレードか!

 うか!今日は  ードか!

そうか!今 はパレー か!

そ か!今日はパレード !


どうりで緑の涙が止まらないわけだ


いあ!いあ!は たー!

いあ!い !くとぅるふ、ふ ぐん!

 あ!いあ!はすたー!

いあ!いあ!く ぅるふ、ふたぐん!







 ………友人が失踪して二か月になる

   部屋はもぬけの殻で

   狂気染みたメモだけが残されていた

   なあ、あんた

   アイツがどこへ行ったかしらないか

   噂でもいい

   耳にしたら教えてくれ


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― 新着の感想 ―
双頭の黒い犬や長い触手など、「私」の知覚する事物が宇宙的恐怖に満ちていて良いですね。 果たして彼はどうなってしまったのやら、その安否が気遣われます。
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