フウリ大回転
フィールドボス【堅牢堅固のスライム】を突破した俺には、このエリアで唯一懸念すべき点があった。
――それは【豊潤平野】で敵を狩っていた時まで遡る。
このゲームにどんな機能が備わっているのか、確認がてらシステムウィンドウを漁っていた際、掲示板の項目を見つけた。開いてみると、非常に興味深い内容が議論されていたのだ。
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【バウンティクロニクル】総合掲示板⑥
320:マウントヒヒ
誰かあの鬼を倒してくれ。俺はもう10回落とされてる。
321:ヒナウェーブ
何があったの?
322:マウントヒヒ
イサルデに続く吊り橋のど真ん中に、角の生えた鬼が待ち構えてんだよ。
323:サルカニ
マジか。
324:名無しの剣士
それやばくね?
325:DEPO
特殊なクエストとかじゃなくて?
326:マウントヒヒ
>>325 いや違う、ただのプレイヤーだ。名前のアイコンが青色だからな。ちなみに、そいつはキユウと名乗っていた。
327:ヒナウェーブ
その人、いつからその吊り橋にいるの?
328:マウントヒヒ
割と最近からだ。一週間前とかじゃないか。
329:サルカニ
キモすぎだろwww
330:マイタケさん
>>329 それなw
331:ヒナウェーブ
確か、バウクロには通報機能があったはずよね? BAN出来ないの?
332:マウントヒヒ
一応、運営からは規約違反じゃないとだけ返ってきた。
333:スライス
運営もイカれてんのかな
334:マイタケさん
>>333 そりゃそうだろ。あんなチュートリアル作るくらいだしな。
335:マウントヒヒ
とにかく、救援を要請する。俺には無理だ。
336:名無しの剣士
イザルデに辿り着かない限り、ギルドにも入れんしなあ。どうすんだよ……。
337:スライス
たしか……βテストに参加したプレイヤーは、無条件でギルドに加入できるチケットをもらってたはずだよな?そいつらに支援を頂戴したらどうだ?
338:名無しの剣士
もうサービス開始してから三週間近く経つんだぞ。βテストのプレイヤーはどんどん先に進んでる。それに、賞金ゲーなんだから助けてくれる奴なんているわけないだろ。アイツらにとっちゃ後に来るプレイヤーを足止めしてくれる方が得だろうしな。
339:マウントヒヒ
じゃあどうすりゃいいんだよ……。
340:名無しの剣士
プレイヤーを集めて特攻するか、絶滅危惧種のβテストプレイヤーを探すかだな。まあ、健闘を祈るよ。
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「あれは……」
一度見たことあるようなシチュエーションを目撃した俺は反射的に茂みへと避難する。
葉と葉の間から目を凝らして覗いてみると、吊り橋のど真ん中で腕を組み佇んでいる、鬼がいた。
間違いない。コイツが掲示板を騒がせた元凶である【キユウ】だ。
そのキユウが見ている視線の先は、俺ではなく分岐していたもう一方の道だった。そこから姿を現したのは……
(フウリ……)
自分のリズムでキユウの元へ向かうフウリの背中は、小柄ながらも自然と大きく見えた。フウリの実力ならあの肉壁を突破出来るかもしれないと俺は期待を寄せる。
フウリは、キユウの目の前までたどり着くと、身振り手振りで口を動かしているようだった。会話をしているのだと察知した俺は耳をすましてみるが、よく聞こえない。
しばらく監視していると、フウリは武器をインベントリにしまい、いきなりキユウに突っ込んで行った。すると、フウリはキユウに手足を捕まれ……担がれる。
――あ、まずい。
フウリなら、大逆転劇を起こせる……訳でもなく普通に崖に投げ飛ばされてしまった。
その光景を影から見ていた俺は「……ふふっ」という乾いた笑いがこぼれる。すまんフウリ。笑い事じゃないのはわかっている。けどな……
いくらなんでも空中で回転しすぎだろ!
強風に設定した扇風機のプロペラくらい回るのは、予想外すぎて流石に笑うわ。サッカーゲームのバクかよ。
「ふぅ……」
笑いをこらえるのに必死だった俺は、一度呼吸整え冷静になる。
フウリ……お前の死は無駄にはしない。
――あの時の検証、有効活用させてもらうぞ。




