ギルド対抗賞金トーナメント 其ノ拾一
広大なフィールドに降り立った瞬間、太陽の日差しが俺の体を覆い尽くすと同時に、観客の大きな歓声に包み込まれる。
今まで数多くの賞金付き大会に出場してきた俺でも、この規模の大会は生まれて初めての経験だ。
それでも緊張はしていない。むしろ、自信に満ち溢れていた。
きっと、賞金という最上級のバフが俺の闘争心を上げているからだろう。
それに、俺はウキワの戦いを見てフウリに勝てると確信した。
とはいえ油断は出来ない。俺が負ければ賞金を失うという現実をきっちり心に刻んでおこう。
俺は軽い準備運動をした後、ウィンドウを開きスキルや武器に目を通す。
すると、対戦相手のフウリが俺の視界に入りこんできた。
「よろしくお願いします」
フウリはそう言って手を差し出す。
「ああ、よろしく」
俺は迷わず手を掴み取り、固い握手を交わした。
フウリはなんとも言えない表情を浮かべながら手を離し、身体を反転させ定位置へ移動する。
すると、いきなり振り向いて囁くようにこう言った。
「君面白い顔をしているね」
その言葉で俺は違和感に気がついた。今のフウリは明確に何かが違う……と。
「俺の事覚えていないのか?」
「何を言ってるんだ? 今、初めて会ったばかりだろう?」
性格が変わったと言うより、過去の記憶を失っているように見える。
ゲームをプレイしているアバターの中身は人間。つまり、ゲーム内で記憶を消される事は無い。
現実世界で記憶が消える病を発症したなら話は別だが、その線は無い。
フウリは『人間』では無く『AI』なのだから。
「まあ、本気で来てくれればそれで良い。じゃないと、燃えないからな」
「分かりました。でも勝負は僕が貰いますよ」
フウリが遠ざかった後、俺は拳を強く握りしめる。
『AI』あるフウリがなぜプレイヤーとして混ざっているのか。なぜ記憶を失っているのか。
恐らく、ウキワはその全容を知っている。この大会に参加した理由もフウリが関わっていると見た。
後は決定的な情報が欲しい。
その為にも、俺はこの勝負に勝たなければならないのだ。
俺は呼吸を整えてから、軽い準備運動をして背筋をピンと伸ばす。そして、ウィンドウを開きステータスを割り振った。
『決勝戦第三試合開始です!』
実況の開始の合図と共にコングが大きく鳴った。
この大会専用に試行錯誤を重ね作り上げた武器『紅刀・月炎輪翔』を装備し、俺はスキル『瞬雷』で急加速する。
フウリも同様に接近してきていた。
鍔迫り合いになる前に、俺はフワッと吹き上がって身体を捻り首を狙う。
しかし、切っ先は掠めるどころか見事に外れてしまった。
(同じ行動をしないのか……)
ウキワの試合から、俺はこう推測した。
フウリは相手と同じ行動を行うように設定されている……と。
その読みは正しかった。
厳密には相手の動きをコピーしているのでは無く、相手が使用したスキルをコピーしている。
すなわち、今まで培ってきたプレイヤースキルで勝つことが出来る。
俺は瞬時にそう思った。
が、その夢はすぐに打ち砕かれた。
「……ッ!」
俺のスキルによるバフを利用しているとはいえ、いくら何でも早すぎる。
フウリの頭上に表示されたマークを見れば俺のバフしか受けていない。
故に、フウリは自分自身にスキルを使っていないことが分かる。
(なるほど基礎ステータスか……)
この大会はレベル50で統一されている。そして、ステータスは試合が始まる前に自分で割り振らなければならない。
仮に俊敏性に全て割り振ったとしてもここまで差はつかない。
体感、二倍以上はステータスの差を感じる。
フウリはレベル100のステータスで設定されている。そう考えるべきだろう。
もし、その仮説が正しいとしたら俺に勝ち目は無い。
ウキワが短期決戦で勝負する理由が今になって分かった。
だが、俺には取っておきの秘策がある。
……勝負はここからだ。




