ギルド対抗賞金トーナメント 其ノ拾
気がつけば、ウキワはギルドルームに戻ってきていた。
最初は相打ちだと思っていたのだが、モニターに映し出されているフウリを見れば、一目瞭然である。
――ウキワはフウリに敗北したのだ。
正直言って、俺の出番はないと思っていた。
俺が見てきたウキワは、常識を覆す破壊者で、頂点に立つ存在だったからである。
わざと負けたのであれば、話は別だが、ウキワの性格からして、それはありえない。勝ちにこだわってきたウキワが、この大舞台で敗北という選択肢を取るはずがないからだ。
まあ、ウキワの計画がどうであろうと、俺には関係無い。
賞金を手に入れる為にフウリを倒す。ただ、それだけの事だ。
「先に言っておくけど、あんたはフウリに勝てないと思う」
俺が無言で試合の準備を進めていると、いつの間にか席に着いていたウキワが声を掛けてくる。
「その根拠は?」
「私が勝てないから」
説得力の塊を突きつけられた俺は妙に納得してしまった。実際、その通りでしかないからだ。
しかし、今の俺にはフウリに勝てる自信がある。過去に、フウリと剣を交えたからだろうか。
――否。
「お前は大きな勘違いをしている。それがなにか分かるか?」
「分からない。何?」
「お前がこの世界で一番強いと過信しすぎていることだ」
ウキワは一切表情を変えずに、俺を冷たい目で蔑む。
客観的に見ればいつものウキワでしかないのだが、今回ばかりは少し違う。唇を強く噛み締めていた。
いつもなら、必ず否定してくるはずのウキワが……だ。
「じゃあ行ってくる。俺の試合、しっかり目に焼き付けとけよ」
俺はウィンドウから一つのボタンを押し、その場から姿を消した。
「だいぶ強気だったね」
口論に水を指すことなく、特等席で傍観していたヒナウェーブは、軽い気持ちでウキワに話しかける。
「口だけでしょ」
「うちは、そんな風に見えなかったけどなー」
「あのロボットは、私達が勝てないように設計されてる。相手の動きや技を分析して、同じ行動をするプログラムに加えて、レベル99のステータス仕様だからね」
「でも、ルア君なら勝てる見込みがあるんでしょ?」
「勝てるはずが無い。絶対にね」
「ふーん」
ヒナウェーブは、全てを見透かしているかのような、相槌を取りつつ、コップに注がれたジュースを飲む。
「それで、ルア君とウキちゃんだったら、どっちが強いの?」
「同じ条件で戦ったら、間違いなく負ける……とだけ言っておく」
「なんか意外だね。じゃあ、うちとウキちゃんだったら?」
「結構いい勝負になるんじゃないかな」
「うちの事、結構評価してくれてたんだ」
「私と同等かそれ以上の人間しかギルドに入れてないから当然でしょ?」
「なんか嬉しいな。今まで、ちゃんと評価された事無かったから……」




