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バウンティ・クロニクル~賞金狩りのVRMMO~  作者: アトラ


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とある検証

「ちょっといいかな?」


「……ぬっわぁッ!」


 俺がいきなり声をかけると、狼を狩っていた少年は仰け反った。そうなるのも仕方ないか。この禍々しいコートに、猫の仮面だもんな……


「ごめん……驚かそうとかそういうつもりはなくてだな……」


「え、ああ……はい……」


 臆病な性格なのか俺の威圧のせいなのかはわからないが、フウリというプレイヤーは若干声を震わせているように感じる。


「いきなりだけど、その剣で俺を斬ってくれないか?」


「そ、それはどうしてですか……?」


「判定を見たいんだよ。今後役に立つかもしれないからな」


「わ、分かりました……」


 このゲームはギルドに入ると事実上PK《プレイヤーキル》が可能になるらしい。


 わかりやすくギルドに所属している人を○、無所属を✕として、説明するとこうだ。


 ○VS○ どちらも攻撃可

 ○VS✕ どちらも攻撃不可

 ✕VS✕ どちらも攻撃不可


 それで、どんな判定なのか試したかったという訳だ。賞金に一歩でも近づきたいが為の()()である。


「ハァッ!」


 少年は立ち上がった後、先ほどの様子とは打って変わって、真剣な眼差しで容赦なく首を狙ってくる。


 しかし、その攻撃は不透明な結界によって弾かれた。


「――なッ!」


 フウリは弾かれた剣と共に尻もちをつく。


「なるほど……そういう判定なのか……」


 落ち着いている風を演出する俺だが、内心はマジでヒヤッとした。というか、その身長で首狙ってくるとか聞いてないんだが……


「これで良かったですか?」


「ああ、それともう一つお願いがある。今度は、どこでもいいから思いっきり殴って欲しい」


 何言ってんだこいつという顔で、フウリは仮面の中を覗き込むように見上げる。俺も、何を言っているんだこいつって思ってるから安心してくれ。


「は、はい分かりました」


 まじまじと承諾した後、フウリは地面に手をつき、ゆるやかに立ち上がる。気のせいかもしれないが、最初にあった時より威勢が良くなったような……


「ハァッ!」


 予備動作なく繰り出された拳は、俺の腹目掛けて振り下ろされる。そして、結界にはじかれフウリはまたしても尻もちをついた。


「……ど、どうですか?」


「なるほどな、良いデータが取れたよ。付き合わせて悪かったな……」


「いえいえ……お役に立て良かったです!」


 俺が手を差し伸べると、フウリも手を伸ばし握手を交わした。俺は自分の胸の方向に力を入れて少年を立ち上がらせる。


 すると――。


「あの、僕からもいいですか?」


「ん……何だ?」


「本気であなたと戦ってみたいんです」


 フウリは攻撃に転じる時のキリッとした顔で俺に熱い眼差しを向ける。


「分かった。俺の検証に付き合わせてもらった訳だしな。でも……どうやって?」


「武器が相手の結界に触れることが出来れば勝利というルールでどうでしょうか」


「オッケー、それで行こう。スキルは使用禁止良いよな?」


「はい、それでお願いします!」


 ――こうして、侍と剣士の戦いが幕を開けた。







 フウリというプレイヤーは俺の想像を優に超える強さだった。


「お前……なかなかやるな」


「あなたこそ! 僕の動きに着いて来れる人なんてそうそういないですよ!」


 武器のリーチは同じだが、俺とフウリには技術と身長の差がある。


 技術面に関しては、これまで色んな賞金ゲーをプレイし、ある程度実績のある俺の方が一枚上手だった。


 しかし、この戦いにおいて最も重要なのは()()である。単純に当たり判定が大きいか小さいかの問題だ。


 それを理解していたフウリは劣っている技術面を、小柄の体を存分に活かした低姿勢による連撃で補っている。


「……は……っあ!」


「……く……ッ!」


 幾度となく、刀と剣が交じりあい、金属音が周囲に鳴り響く。本気で勝負しているからこそ生まれる面白さがそこにはあった。


 だがしかし、白熱したこの戦いは突然幕を閉じる――。


「あっ……」


 垂直に振り下ろされる剣をバックステップで交わした後、俺は上から刀で叩きつける。すると、剣がフウリの手から離れたのだ。


「投了……ですかね」


 俺が結界に触れようと、刀を振り下ろそうとした瞬間フウリは、万感の笑みを浮かべてそう言った。


 ◆


「フウリ……お前センスの塊だな」


「でも、ルアさんには敵いませんよ……力もスピードも全部負けてましたし……」


「もっと自信持てって」


 俺はフウリを励ます。心の中で思ったのだろう。この少年には伸び代がある……と。


「じゃっ……またどこかで会おうな」


「はい! ありがとうございました!」


 フウリと熱い握手を交わした後、別れを告げ俺は街へと急いだ。


「ルアさんなら、救えるかもしれない……」


 フウリは唇を強く結び、遠く離れた一人の背中を見つめていた。



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