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バウンティ・クロニクル~賞金狩りのVRMMO~  作者: アトラ


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敵か味方か

「マジで遠すぎんだろっ……!」


 ウキワとヒナウェーブが戦っているとも知らず、俺はただひたすらに駆けていた。


 あまりにも例のNPCが現れる気配がないため、この方角であっているのかついつい不安になり、左手に持つ羅針盤と時間を数秒単位で確認してしまう。


「もう15分経ってんのか……」


 バウンティクロニクルの時間と現実世界の時間はリンクされている。そのため、ウィンドウに表示されているデジタル時計で現在時刻を確認することが出来るが、今回はウィンドウに付属されているストップウォッチ機能を使ってタイムを計測している。


 一目で分かるし、何より何時何分に出たかを脳内の記憶から引っ張り出して逆算する手間が省けるからな。


 それはともかく、15分以上経っているにも関わらず、NPCの方角を示す羅針盤の針はピクリとも動かない。


 ラルメロは間違い無く10分毎にランダムで出現するといった。仮にそれが正しい情報なのだとしたら、方角が変わる確率の方が高いはずだ。


 とはいえ、ちょうど俺が向かっている方向と直線上に移動した可能性も確率論的には無くはないのだが、モヤモヤが晴れないので、念の為ラルメロに確認してみる。


「ラルメロ……もうとっくに10分たったけど、NPCのやつ移動してんのか?」


 俺は身体の中にいるラルメロに心の中で話しかける。


「まだ、誰も見つけてないからだよ。その子に話しかけて10分経過した後だか……」


 消費したMPの生成が始まったのか、中途半端なところで途絶える。


「何だそういう事だったのか」


 結果が分かってスッキリしたのか、俺は無意識にギアを上げていた。


 このゲームは、基本的にどこへ行っても暑くもなければ寒くもない気候に設定されている。もちろん未開の砂漠に関しても同様にだ。


 そこら辺の調整には運営に感謝御礼申し上げたい。リアルと同じにされていたらどうなっていた事やら……


 現世はただでさえ暑いのに――いや、これ以上はやめよう。考えれば考えるほど暑くなってきた。


スピードブースト→リキャストタイム→スタミナ走り→スピードブースト→リキャストタイム→スタミナ走りというサイクルを繰り返す。


 これができるのもラルメロのおかげだ。本来は街のショップで買えるMPを回復するポーションを挟まなきゃならない所をスキップしてるんだからな。


 俺は効率厨とまでは行かないが、できるだけ効率的に動きたいタイプではある。ラルメロには悪いが、正直申し上げると、最高でしかない。


 形容するなら、真夜中に走りながら大声で叫びたい気分だ。


(霊じゃなきゃ好物でもたらふく食わせてやれたのにな……)


 有効活用してる俺が言うのもなんだが、死んでも労働しなきゃいけないなんて酷いと思う。


 今回のエリアを見ても、運営は相当性格の悪い人員で構成されているのだろう。賞金を取らせたくないという執念を感じる程に……。


「おっ! んん……? 」


 なんの前触れもなく、羅針盤が反応した。その方角は先程まで示していた方向の真逆だ。


 まさか……NPCを見つけたプレイヤーが?と最初は思ったが、一度来た道を見渡してみると《《そいつ》》はいた。


「あれだ……っ!」


 小走りで、気になる砂の物体に近づくと、頭上に【サーリャ】という文字が浮かび上がる。よし、これは確定演出だ。


 全身砂で覆われた体は上手く景色に合わせて擬態していた。本当に近くに寄らないと分からないレベルだ。


「あのー、ゲートが欲しいんですけど……」


 手のひらを合わせて、目を瞑り何かを祈っている砂で作られた少女に恐る恐る声をかける。


「そなたは妾が見えておるのか?」


「ああ……はい……」


 急に意味深なことを言い出したサーリャ。それに対して俺は若干声を震わせ、そっと返す。


やっぱこのゲームやっぱホラゲー?


転移門ゲートが欲しいと言ったな。ならば、流砂の蠍、サボテン、オアシスの水を差し出せ」


「わ、分かりました……」


 すると、目の前に薄っぺらいウィンドウが開かれ、それぞれ一個ずつ渡した。


「受け取った。約束通り転移門ゲートそなたに授けよう」


転移門ゲートを手に入れました》


《砂人の羅針盤が消滅しました》


「……ありがとうございます!」


「では、また逢う日まで」


 そう【サーリャ】は地面に沈むように消えていった。


 今思えば、砂塵の魔導師の造形に似ていたような気がしたが、そんなことはどうでもいい。ともかくミッション達成である。


「よし……帰宅!」


 目的の代物は入手出来た。後は速やかに帰るだけ……


「……!」


 その時、時間が止まったように見えた。俺の目の前に虹色に輝く一人の男が立っていたからである。

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