楽々戦闘
気がつけば俺は、雲ひとつない青空のもと、太陽の照らす砂浜に立っていた。背後から海の波打つ音が鮮明に聞こえる。それに潮の香りもする。
「すげぇなこのゲーム……」
グラフィック、音、匂い、そして敵MOBのモーション。どれを取っても一級品である。俺が今までやってきたVRゲームの中でも断トツでクオリティが高い。
『チュートリアル 血炎島からの脱出をクリアしました』
突然、ウィンドウとは違う別の画面が出てきて、そう告げられたが、報酬は何も無かった。
「何がチュートリアルだよ……どう考えてもホラゲーだったろ」
思わず率直な感想が漏れ出る。
その後、チュートリアルを続けるかという旨の選択肢が現れたが、俺は「いいえ」を選択した。手探りしながら自分で開拓したいという想いと、時間短縮の為である。
よしっ、ひとまず落ち着いたことだし、ステータスを確認してみようか。
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【プレイヤーネーム】ルア
Lv.1
【職業】侍
【所持金】0G
HP(体力):50
MP(魔力)10
ATK(攻撃力):30
DEF(防御力): 5
ST (スタミナ):15
DEX(技能):15
AGI(俊敏性):30
CRI(会心):5
LUK(運) :10
守護霊:無し
スキル
・ムーンスラッシュ
・スピードブースト
【装備】
右手 日本刀
左手 無し
頭 猫の仮面(黒)
胴 ロングコート(赤)
腰 無し
足 ブーツ(黒)
【アクセサリー】
・なし
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「あれ、俺の刀……粉砕されなかったっけ……?」
骨狼に噛みちぎられ、消滅した刀は、確かにインベントリに残っていた。チュートリアルと明言しているだけあって、夢落ち的なあれなのだろう。
――まあ、運営にも人の心があって良かったようん。
続いて、実数値を確認する。
「ふむ……」
防御力がだいぶ終わってはいるが、当たんなきゃいいだけの話だ。そこは攻撃力で補うしよう。攻撃は最大の防御って言うしな。
一通りステータスを流し見していると、一つの項目に目が止まった。
「なになに……守護霊? NPCを仲間にできる的な?」
ステータス画面からガイドを開いて、詳しい説明が載っているか確認したところ、守護霊の情報は何もなかった。
もしかすると、特別な条件で入手できるとか――なのかもしれないな。
ちょうどガイドを開いたので、必要そうな情報を頭に入れる。そして、やるべきことを定めた。
「まずは、レベル上げってとこか……よし、敵MOB探すかー」
賞金はクエスト報酬だったり、運営の公式イベントだったりと様々な方法で入手できるらしい。また、エリアを進めば進むほど敵の強さも上がっていくとの事だ。
そのためのレベル上げである。サルでもわかるし、サルでも出来る簡単な仕事だ。
◆◇◆
海岸を抜けると、草原が辺り一面に広がっていた。太陽の日差しを浴びて黄金色に輝く草木が美しい。草原ならではの独特な香りも忠実に再現されているようだ。
マップには、【豊潤の草原】と記されていた。草原の中心地には街があって、そこを抜けると、新しいエリアに行けるらしい。
「ガルルルッッッ」
「おっ!出たな」
適当に草原を散策していると、エンカウントしたのは、狼だった。
当たり前ではあるが、骨ではなく毛並みの整った普通の狼である。それに、今回はLv1。さっきのチュートリアルとはまるで安心感が違う。
「ガルルルッッッ!」
狼は牙を自慢げにむき出すと、後ろ足を蹴り上げ、俺に噛み付こうとしてきた。
「行動パターンはもう分かってんだよ」
狼と言うだけあり、血炎島の骨狼と同じモーションが使われていることを確信した俺は、上体を逸らしつつ、脇腹を狙い刀を振るう。
「ガルッ!」
すると、狼は赤いエフェクトと共に体が分断され、地に転げ落ちた。そして、じわじわと傷口から体が消え、蒸発するかの如く絶命した。どうやら一撃だったようだ。
島にいた時から思っていたことだが、この黒を基調とした赤いコート……めっちゃ動きやすい。それに、猫の仮面も全然邪魔にならない。どちらもたんぽぽの綿くらい身軽に感じる。
やはり、バウクロは俺が今までやってきたよりも圧倒的に質が高い。
「おっ……」
《Lv1⇒Lv2》
《ドロップアイテム:狼の毛皮》
《ドロップアイテム:狼の肉》
《10G獲得》
倒した直後、リザルト画面がウィンドウに表示された。
「10Gか……まあ、最初はそんなもんだよな」
Gは自動で手元に入るらしい。しかし、ドロップアイテムはその場に落ちるようだ。試しにに拾い上げると、その場でアイテムは消滅し、インベントリに格納された。
今一番必要なのはGである。というのも、レベルが上がる事にステータスポイントを5ポイント獲得することができ、そのポイントを振るためにはが必要になるからだ。
◆◇◆◇◆
しばらく無心でモンスターを狩り続けた。
一時間ほど狩って分かった事は「豊潤の草原」では狼、鳥、ゴブリンしか湧かないということ。もう一つは、このエリアに湧くモンスターは10Gしか落とさないことである。
そのため、今持っている所持金で何体倒したか把握できる。ちなみに全財産は1200G。つまり120体倒したということになる。
正直言うと、こんなに倒すつもりはなかった。ついつい無我夢中になってしまったのだ。
「そろそろ街に行って、売りに行くか……」
狩りすぎて、インベントリがカツカツになってきたのと、レベルが上がりにくくなってきたので、ドロップアイテムを売りに街へ向かう。
その前に、アレを試してみるとするか――。
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