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バウンティ・クロニクル~賞金狩りのVRMMO~  作者: アトラ


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戦慄

光明弾こうめいだん!」


 レバレットは右手に装備された小型のフレアガンを自分とウキワに向け発射する。


 弾丸を中心に纏わりつく光ではなく、弾丸が自発的に光を発しているような、ヒナウェーブとは違う種類の弾は放物線ではなく直線的にウキワの元に向かってくる。


 ウキワはそれに反応し斜め後ろに避けると、砂の地に着弾した閃光弾からもわもわとした桃色の煙が視界を覆う。


 すると、ウキワの元に着弾した煙の中から、二本の短剣が飛んできた。


 ウキワは両手に持った鎌をクロスさせて短剣を弾くと、その中から煙を切り裂くように現れたのは、飛んできた短剣と同じものを片手に携え、赤い目を光らせた白い兎だった。


「よく反応できたね!」


「いや、さっきの登場である程度察しはつくでしょ」


 平然を装っていたウキワは内心焦っていた。というのも、レバレットはそうとうな実力の持ち主だということがこの一瞬で分かったからだ。


 小柄ならではの機動力を活かした独特なステップと、軽い短剣の強みを利用した投擲のコンビネーションは、大鎌の圧倒的なリーチを上手く補っている。


 ウキワの瞳孔に映っていたのは、プレイヤーではなく人間を狩る凶悪な兎そのものであった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 一方、ヒナウェーブはキユウの刺々しい棍棒による猛攻を、持ち前の格闘スキルとスナイパーを使いこなし、ひたすら耐え続けていた。


 銃と体術の組み合わせによって近距離も遠距離も対応出来るヒナウェーブに対して、パワーと運動神経を兼ね備えているキユウ。


 お互い、自己流に確立された戦闘スタイルは、ほぼ互角であった。


狙撃手スナイパーの割には、なかなか動けるじゃねぇか」


「まあ一応、プロゲーマーなんでね!」


 語尾に力を吹き込んだヒナウェーブは、キユウの顔面目掛けて飛び蹴りを試みる。だが、キユウは空いた手で、足首をガッチリ掴む。すると、ヒナウェーブの視界が反転した。


「ふんっ、終わりだな狂鬼の一撃(テルムインパクト)


 MPを大幅に消費する代わりに、ATKを一定期間二倍にするというステータスアップ狂鬼の一撃(テルムインパクト)を発動したキユウは背中から大きく振りかぶり、叩きつけようとするが……


変遷空砲エアリスキャノン!」


 ヒナウェーブは、レベルアップによって手に入れたスキル変遷空砲エアリスキャノンを宣言すると、銃口を地面に向けて引き金を引いた。


 すると、上体が空気抵抗を受けつつ、スッと光の速さで宙に浮かぶ。そこからは一瞬の出来事だった。


「何をしやがった……」


 気がつけばキユウは何が起こったのか理解出来ぬまま、雲ひとつない満天の青空を見上げていた。必死に体を持ち直そうとしても、金縛りのように体が言うことを聞かない。


「プロゲーマー、舐めてもらっちゃ困るよ」


 ヒナウェーブは、そう言いつつ上からの目線をキユウに捧げる。


「何をしたかって聞いてんだよ」


「弾速強化、ヘビーバラージ……零距離射撃【煌】」


 ヒナウェーブはキユウの発言に言及することなく、威力を上げるバフを全て積む。


 そして、距離が近ければ近いほど攻撃倍率を上昇させるスキル零距離射撃【煌】を宣言すると同時に、銃口をキユウの額に当てる。


「この世界のシステムに従った。ただ、それだけだよ」


 ヒナウェーブはそう言ったあと直ぐに引き金を引いた。


 ――その瞬間、壮大な爆発音と共に煌めく白光がヒナウェーブとキユウの周りを包み込み、砂漠の荒野に現れる。


 気がつけば、キユウはポリゴンとなって消滅していた。


「いくら筋肉があっても、麻痺には敵わないからね」


 決着をつけたヒナウェーブは一度深呼吸をして、呼吸を整えるとそう呟いた。


 状態異常【麻痺】は、一時的に行動不能になるというものである。痺れが続く限り、身動きが取れず、スキルも発動することが出来ないため、麻痺った時点で格好の的でしかないのだ。


 麻痺になる条件として、キノコ系のモンスターによって噴出される胞子を浴びる。もしくは、そのモンスターを倒すことで手に入るアイテムをポーション化し、飲むor触れることで【麻痺】を得ることが出来る。


 しかし、ヒナウェーブは空砲で上空に上がると同時に、武器であるスナイパーを素早く振り下ろすキユウの肘に当てることで、ファニーボーン現象を誘発させ、麻痺を強制的に付与したのだ。


 かつて、ルアをストーカーしていた際、ヒナウェーブは不注意で硬いスナイパーが肘に接触し、軽い麻痺を起こしたというちょっとした事件があった。


 それを思い出したヒナウェーブは、決死の作戦に挑んだのだ。


(あっちの戦いは終わったのかな……)


 先程まで、バコンバコンと爆発音が鳴り響いていた方角に耳を澄ますと、いつの間にか静まり返っていた。ちょうどあっちも戦いが終わったのだろうと桃色の煙が立つ方向へ足を運ぶ。


 ヒナウェーブはウキワを心配すらしていなかった。どうせ勝つから大丈夫だろうと気にも留めず、目の前の戦いに最大限のパフォーマンスを注ぎ込んでいたのだ。


「はぁ……」


 ヒナウェーブはスタミナの減少による疲労モーションを喰らいつつ、煙の近くまで寄って立ち止まる。すると、風によって煙が流され、徐々に人影が露になる。


「あれは……」


 ヒナウェーブは、そのシルエットに違和感を感じた。身長も武器もコスチュームも何もかもがウキワと真反対でしかないのだ。


「そんな、ウキちゃんが……やられるなんて」


 全てを察したヒナウェーブは、頭の中が空白で埋まる。そんなはずないともう一人の自分が葛藤するも、目の前の情報に対して何一つ覆ることはなかった。


「討ち取ったりー! ニャハハハハハハハ! 」


 満面の笑みで呼吸をするように高笑いを見せるヴァリーレバレット。


 それに対しヒナウェーブは、周りを必死に見渡すが、やはりウキワの姿は確認出来なかった。

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