それぞれの思惑
「ねえ、なんでルアくんだけ行かせたの?」
「スピードブーストで制限時間内に辿り着ける可能性が上がるから」
「だったら、私たちも着いて行った方が効率よくない?」
「いや、アイツらをボコボコにするためだよ」
「……え?」
ヒナウェーブは脈絡のない言葉に対して、分かりやすく眉を顰めると、ウキワは砂漠の地面にすっぽりと埋まっている岩に視線を合わせる。
「岩の裏にプレイヤーが二人いる。多分、私のマーキングを壊した張本人だと思う」
それを聞いたヒナウェーブもちらりと岩の方向に目を向けると、角と兎の耳らしきものが岩陰から顔を出しているのが見えた。
ある程度距離が離れているかつ話に夢中で、言われるまで気が付かなかったヒナウェーブは、頭隠して尻隠さずならぬ尻隠して頭隠さずという状況に苦笑いを浮かべつつ、ウキワに疑問を投げかける。
「た、確かに人が隠れてるのは分かるんだけど……なんで犯人だと思うの?」
「いや、勘だよ」
「え、ああ……ソウナノ?」
ウキワは何もかも知り尽くしているように見えて、適当に言う癖がある。それが嘘なのか本当のことなのか分からないのが、ヒナウェーブにとって一番厄介な問題点だった。
しかし、その適当さが何を意味するのかを考えたことは無い。単純にちょっとしたジョークとして捉えているからである。
「まあ、どっちにしろ関係ないんだけどね。私たちに手を出すなら一千倍にして返してやるだけだから」
「そ、そうだね……」
その瞬間ら岩陰から笛花火の音と共に発光弾が放たれる。桃色に煌めく楕円状の光は、放物線の軌道を描いて、上空から急速に落下してくる。誰を狙っているのかは単純明快だった。
「来るよ」
「うん、分かってる」
ウキワとヒナウェーブは、お互いの顔を見合わせたあと、二手に分かれて回避する。謎の光はウキワとヒナウェーブが元いた場所にドカンと爆発するかのような音で着弾した。
それと同時に、砂煙が渦を巻くように舞う。周りに飛来する砂埃が目に入らないよう手で覆いつつ、風によって砂が流される時を待つ。
しばらくして、煙の中から現れたのは……
「ニャハハハハハハハ! 爆発からのー、参上!」
「復讐しに来たぜ? ヒナウェーブ」
現れたのは、一本橋の上で害悪行為を繰り返していたのにも関わらず、なぜかこの世界に生き残っているキユウと、白いモコモコの服にうさ耳フードを深く被ったヴァリーレバレットというプレイヤーだった。
「ふーん、そういう事ね」
ウキワは全てを察したというよりも全てを知っていたかのように呟く。
「兎だ! 可愛い!」
「でしょでしょ!」
「はい! センスの塊ですね!」
「こんな筋肉馬鹿と比べて魅力しかないよね!」
「馬鹿馬鹿うるせぇんだよお前は」
ヒナウェーブは、いつの間にかヴァリーレバレットのマスコットキャラクターのようなファッションに釘付けになっていた。
それもそのはず彼女は大の動物好きであり、その中でも兎はピラミッドの頂点に位置するほど愛しているのだ。
「で、私たちになんか用?」
「お前には用はねぇ。俺はヒナウェーブを復讐しに来ただけだ」
「あっそう、でそこの兎は?」
ウキワは、キユウの隣に立っているレバレットに対して、人差し指を突き立てる。
「僕は……お前を倒しに来ただもん! ニャハハハハハハ!」
レバレットは、独特な高笑いで煽りを入れる。それを脳裏に焼き付けたウキワは、一切動じず平穏を保っていた。
「あれ、私なんかしたっけ。あなたとは初対面なはずだけど」
「だって、紫に光ってて……何も可愛くないんだもん」
レバレットは先ほどの笑い声とは違う恐怖を植え付けるかのような低い声で、ウキワを睨む。
「ああ、そう……」
ウキワもそれに応えるように、鋭い眼光をレバレットに浴びせる。絶対に倒して、粛清してやろうと決心したのだ。
「あの子、可愛いけど、すごい変わりようだね。ウキちゃんと似てるような……」
「私はビジネスなんだから、あんなやつと一緒にしないで」
ウキワはあの兎とは訳が違うと言わんばかりに強く非難した。
「そうだったんだ。とにかくそっちは頼んだよ。私は復讐に勝ってくるから」
「うん……」
ウキワは、哀愁漂うような掠れた声で頷いた。
「レバレット、そっちは任せるが俺の戦いに手出すんじゃねぇぞ」
「僕は、あの子に負けると思うけどね。ニャハハハハハハ!」
誰がどうとは言わず、意味深にレバレットは言う。
「ふん、さっさと行くぞ」
余程やられ方が気に食わなかったのか、復讐を目論むキユウとそれに対抗するヒナウェーブ。そして、戦闘狂の兎ヴァリーレバレットと狂人ウキワの戦いが火蓋を切って落とされた。
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