攻防戦
俺を鎖で攻撃してきたのは、『ウキワ』ではなく『ウキワのコピー』。すなわち、複製体である。
なぜそう断定できたのかというと、紫色に染まっていた装飾が白色に塗り替えられているかつ全身半透明な状態であること。
もう一つは、ギルド内のメンバーには攻撃が通らないようなシステムが存在している事にある。奴が本物のウキワだとしたら俺に攻撃するメリットが全く無い。
アイツは頭がおかしい なだけでそこまで馬鹿じゃないからな。
それより、ここにウキワのコピーが現れたという事は、本物のウキワとヒナウェーブも偽物と対峙している可能性が大いに高い。
とはいえ、あいつらは大丈夫だろう。なってったって桁外れの実力者だからな。
ひとまず、俺は目の前の敵に集中すべきだ。
「レベルは53か……」
確か、本物のウキワのレベルも53だったはずだ。当人のレベルがそのまま引き継がれるという事だろうか。まあレベルはプレイスキルと守護霊でカバー出来るし、見縊る必要は無い。
俺は、本気で燃えていた。というのも、この戦いは擬似的にウキワを叩き潰せる最大のチャンスでもあるからだ。それに偽物とはいえ、ここで負ける訳には行かない。将来ウキワに煽られるのが目に見えているからな。
「正々堂々……勝負だ」
無表情で近づいてくるウキワの口元が動く。声は何も聞こえなかった。その数秒後、携えた鎌にエフェクトが入る。
「死神ノ刃 か」
スキルを声で判断できないのは想像以上に厄介だ。口元の動きと同時にどういう動きをしてくるのかしっかり見極めなければ、話にならないとみた。
「スピードブースト、無明剣舞」
実家のような安心感のあるスピードブーストと先程レベルアップと同時に手に入った新スキル無明剣舞をすかさず使用する。無明剣舞は連続攻撃の威力と速度を増加させるスキルとの事。狂刃乱舞との相性は抜群だ。
「さあ来い!」
俺は急かすと、またしても口元が動く。すると、奴の目の前に鏡が設置された。冥界鏡である。もう一つの鏡は……裏だ。
「戦い方もそっくりなのかよっ……!」
俺の背後に生成されていた鏡からウキワが無表情で姿を現し、右手に携えた鎌を振るう。それをバックステップで回避した後、スキル狂刃乱舞を使い、連撃を叩き込む。
「どうした、こんなもんか!」
ひたすら受け身を取り続けるウキワに煽りを入れると、それに呼応するかのように口元が揺らぐ。すると、ウキワが視界から外れた。
「パターンは分かってんだよ」
背後に回られたのを察知した俺は、刀を立ててウキワの攻撃を防ぐ。もしルシラスがウキワに戦いを申し出ていなければ、結構まずかったかもしれない。
俺のプレイスタイル的にも、情報は勝利への道を案内してくれる。それを活かせない限り、ウキワには勝てない。
だが、俺の相手は所詮AI。ウキワの思考を再現することはできないはず。
つまり、分は悪くない。パーセンテージ的には俺の方が上だと思いたいが……
「なッ……」
鍔迫り合いを繰り返した挙句、俺の刀が鎌の湾曲に絡めとられ、地面に叩きつけられる。まずい。引き抜いてから攻撃を防ぐまでの時間が足りない。ならば……
「ムーンスラッシュ」
鎌にバフが乗っている以上、押し負けると一気に不利になる。その為、片方の刀のムーンスラッシュで一旦弾く。すると、ウキワの反応が遅れる一瞬の隙が生まれる。俺はそれを狙っていた。
「フラットと行こうか!」
絡め取られた右の刀を脱出させ、ウキワの腹部に切り下ろす。だがしかし、ウキワもそれを読んでいたのか防いでくる。
「マジか……っ!」
刀の二刀流は慣れていない。なんてったって初めてだからな。どの剣を使うゲームでも一本で勝負してきた人間だ。だが、闘いの中で徐々に適応できているのを実感していた。
「くッ……」
その後も一進一退の攻防が続く。明らかにウキワがしないような動きも取り入れていることから、AIなのは分かる。しかし、ウキワとは別のベクトルでコイツは強い。
「一旦距離を置いたか……」
ウキワは後ろに下がり、鏡を利用して俺から遠ざかる。すると口元が揺らぐ。スキルの合図だ。
「何だあのスキル……」
手のひらから生成される黒い気弾。ヒナウェーブのフラッシュバーストに似ている。
そして、チャージが完了したのか、その弾は俺に向けて放たれた。
「ウキワのやつ、スキルを隠していやがったな!」
俺はウキワに更なる恨みを抱えたのだった。




