月光輪
紫色に染められたロングヘアーに紫色の冷酷な目、紫色のローブを身に纏っている。そんな彼女の頭上に表示されていたのは【ウキワ】という文字だった。
「いやー遅かったねぇ。何かあったのかなぁ……?」
ウキワはわざとらしくそう言った。俺は、絶対言うまいと口を閉ざしていると、ヒナウェーブが口を開く。
「実は、秘霊っていうカテゴリーのクエストに遭遇しちゃって……」
ヒナウェーブは、隠すことなく事実を伝えた。口止めをすべきだったかと若干後悔するも、明らかに何か知っている素振りだったため、俺は意味の無いことを悟る。
「ふーん……って事は足元に居るその猫も関係ありそうだねぇ……」
ウキワはそう言って、俺の足元で毛ずくろいをしているラルメロを指差す。
「ちぇ、見えてたのかよ……」
俺の見解では、あのクエストをクリアしたものにしか見えないのだと思っていたが、どうやらそうでも無いらしい。一応、霊なはずなんだけどな……。
「まあ、そこら辺は後で聞くとして……ほい」
ウキワは、ウィンドウを開きポチポチと手を動かす。すると、俺とヒナウェーブのウィンドウが自動的に開いた。
《ウキワからギルドの招待が届きました》
《はい/いいえ》
(くぅ……押したくねぇ……)
賞金に釣られ、やむを得ず約束をしたとはいえ、いざこの画面が目の前に出されると、少し躊躇する。何と言うか、ウキワに負けたような感覚が押し寄せてくるのだ。
しかし、このゲームにおいてギルドに入るメリットはとてつもなく大きい。故に、入ることを余儀なくされている。
俺は、ヒナウェーブを横目で見ると、既に選択をしているのが見えた。
ウキワは「はよしろ」と鋭い視線送ってくる。それを見た俺は、恐る恐る選択した。
「で、ギルドを立てるのに10万Gかかるんだけど割り勘にしない?」
「いや、三人じゃ割り切れないが?」
俺はウキワ提案にツッコミを入れる。それを聞いたウキワは微笑を浮かべた。
「私とヒナちゃんが1万ずつで、あんたが8万出せば解決じゃん」
「どこが割り勘だよ。どう考えてもおかしいだろうが」
「じょーだん。私が払うに決まってるでしょ。そのくらい余裕で払える額だし。それに、引き入れたのは私だから」
「マイケル?」
毛ずくろいが終わり、地べたでゴロゴロしていたラルメロは言った。多分だが、ウキワの「じょーだん」に反応したのだろう。
「じゃあ、ギルドルームに来てね」
ウキワはラルメロの事は無視して軽々しく言うと、ウィンドウをポチポチと操作して姿を消した。
「インフィニティ・アタックの上位3人でギルドかぁ……何か良いね」
ヒナウェーブは俺に対して言ったのか独り言なのか絶妙な瀬戸際の言葉を言い残すと逃げように姿を消した。
「全くそうは思わないけどな……!」
続いて俺もウィンドウを操作し、ギルドルームの項目が追加されていること確認する。それをタップすると光に包み込まれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ギルドルームは、例えるなら近未来チックなカフェテリアという印象だ。木を基調とした大きめの机と椅子が所々点在しており、ギルドルームの中心には、円形の透明なパネルが浮遊している。そこにはマップが映っていた。
「とりあえず、ギルドの名前を決めよっか。何か案出して」
ウキワが主体となり、場を仕切る。
「インフィニティアタック最強チーム!」
ヒナウェーブは、意気揚々とそう答えた。いや流石に適当すぎない?
「はい次!」
俺に向けられる強固な視線。案を出させたいんだろうなという強い意志を受け取る。
「ラルメロ、なんか案ないか?」
コソッとラルメロに聞くも、そっぽを向いてスルーされた。こいつ、逃げやがった……。
「えー、じゃあ月光輪で」
「おっ、それいいね」
「え?」
ヒナウェーブが俺の案に食いつく。
「ねぇ、その名前どうやって決めたの」
ウキワは俺に詰め寄ってくる。俺が出した案をまるで容認されていないような眼光を浴びせられる。
「月は俺、光はヒナウェーブ、輪はウキワお前だよ」
「私が光なのはなんとなく分かるけど……ウキちゃんが輪なのはなんで?」
「それは……何となくだよ」
「ふーん、じゃあそれで決定!」
ウキワは何を思ったのか俺の案を呑んだ。
「いやいや、もうちょっと考えない? 適当言っただけだからさぁ!」
「あ、もうそれにしたよ」
こうして、俺らのギルドの名前は【月光輪】となったのだった。




