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バウンティ・クロニクル~賞金狩りのVRMMO~  作者: アトラ


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それぞれの関係性

 気が付けば夕暮れとなり、閉店時間となった。夏休み期間という事もあり、顧客が増え多忙ではあったが、先輩の助けと己の気合いで乗り越える事が出来た。


 浦戸(うらと)先輩は途中で帰宅し、オーナーは二階で作業をしている。裏の部屋に残ったのは、俺と来葉のみだった。


 俺の目の前には楕円形のテーブル。その机上には、俺が冷蔵庫から取り出した、ペットボトルのスポーツドリンクが置いてある。そして、その奥には来葉が座っていた。


「さて落ち着いたことだし、色々話を伺おうか」


 俺は、事情聴取的な態度で問い詰める。


「いいよ。なんでも答えてあげる」


 来葉は、机の上に肘を置きつつ、わざとらしく声を低くしてそう返した。


「あ、その前に『IA』優勝おめでとう! いやーすごかったなぁ」


 俺は軽く拍手をしつつ、かなり胡散臭い言い方で振る舞う。


「うん、スゴイうれしいよ! だってあの『ルア』って人に逆転して勝ったんだもん!」


 悪意のある満面の笑みで、見事なカウンターを披露する来葉。それを想定していた俺は、煽りの上乗せを喰らう前に、すぐさま話を戻す。


「で、本題に移るけど……何で、お前がここでバイトをしてんだ」


「え、ダメ?」


「別にダメなんて言ってないだろ。理由を聞いてんだよ理由を」


「うーんそうだなぁ……何となく楽しそうだったからかな」


 来葉は少しの間思考を巡らせてそう述べた。


「絶対嘘だろ……」


「本当の事なのになぁ……全く、これだから『IA』で私に負けるのよ」


 来葉は、身振り手振りで残念がる演技をする。


「運ゲーのどこに因果関係があるのか教えてくれませんかねぇ?」


「無い」


「あ、はい」


 その後、来葉はポケットから携帯を取り出し、操作をし始める。数秒待つと、俺のポケットに入れていた携帯が振動した。通知の合図だ。


 確認すると、来葉からたった一枚の写真が送られてきていた。


「バウンティクロニクル……ギルド対抗賞金トーナメント開催予定……」


 内容は、ギルドバンクに多くのG(ゴールド)を集めた上位4チームが選ばれ、トーナメント形式で試合を行うとのことだ。


 その選考は、サービス開始時から始まっているらしく、あと四日で締切となるらしい。


「だから【ダラワ】に早く来て。それに出場するため()()にギルドを組みたいから」


 記憶によれば、ダラワは確か三つ目の街だったはずだ。俺の現在地は、第二の街【イサルデ】だから……次のエリアを抜ければすぐと言ったところか。


「てかなんで、俺から行かなきゃならねぇんだよ。お前から来いよ」


「無理なんだって。【ダラワ】の前のエリアは、即死の落とし穴が無限に設置されてるんだもん。それにギルドバンクのためにも、デスペナルティでお金減らしたくないから」


 来葉の真面目な話しぶりからして、どうやら本当のことらしい。


「はぁ? クソゲーじゃん」


「それは、車厘ゼリー森林で分かりきってたことでしょ」


「まあ、それはそう」


 銃ゲー世界大会出場者のヒナウェーブがいれば、大抵何とかなるだろうと思ってはいたが、これは険しい道のりになりそうな予感がする。


「一応言うが、俺はまだお前のギルドに入るなんて一言も言ってないからな」


「え、賞金要らないの……?」


 俺は来葉から悪魔の囁きを耳にする。


 ――賞金。


 この言葉を聞いて、心が踊らないわけがない。


 ただ、来葉とギルドを組みたくは無い。俺がコイツ(来葉)と関係を持っているのは、あの時の負けた屈辱を晴らすためである。しかしながら、今の俺は来葉の手駒だ。手のひらで転がされているだけの奴隷と化している。


 いや、今はこれでいい。来葉に関して情報を集められる絶好のチャンスでもあるからな。そのついでに賞金も掻っ攫う。完璧なムーヴじゃないか。


「わかったよ。行けばいいんだろ?」


「ふふっ……ちゃんと連れてきてよ。ヒナウェーブちゃんを」


「は? お前……なんでその名前を……」


 一瞬、聞き間違えかと耳を疑ったが、紛れもなく「ヒナウェーブ」という単語が頭に入ってきた俺は困惑する。


「だって私の友達だもん。しっかり情報は仕入れてるんだから」


 物事には、()()()を|予め()()しておくことで、有利に立ち回ることが出来る。だが、それは不可能に近い。なぜなら、想定外だからである。


 来葉はその()()()を上手く利用しているのだ。


「じゃあそんな訳で、私帰るね」


 来葉は、いきなり席を立つと、荷物を持って扉の前まで歩く。


「おい、結局お前がここのバイトを選んだ理由ってこれを伝えたかっただけかよ」


 確かに、ゲーム好きという観点からすれば、このバイトを選んだのには納得だ。しかし、どこかモヤモヤが抜けなかった俺は、他になにか理由があるだろうと模索していた。


「なわけないでしょ。そもそも、メールで会話できるんだし。それに、賞金トーナメントのことは後で送ろうと思ってたから、ついでに話しておきたかっただけ」


 来葉は扉の前に立ち止まり、早口で弁解した。


「じゃあなんなんだよ」


「本当にたまたまってやつよ……」


 来葉は振り返り、俺を一瞥しながらそう言い残すと、ドアを開けて出て行った。


「ほんとかよ……」


 疑心暗鬼に俺は呟きつつ、残っていたスポーツドリンクを一気に飲み干した。



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