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バウンティ・クロニクル~賞金狩りのVRMMO~  作者: アトラ


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真の目的

 結果的に、俺はヒナウェーブとパーティを組むことになった。ここで出会ったのは運命だとかよく分からない理由を付けられて、彼女から懇願されたのだ。


 ウキワの件で、何か裏があるのではと疑いたくなるが、接近戦に弱い狙撃手(スナイパー)なら組みたくなるのも必然だろう。


 アタッカーがいることによって、狙撃手の強みを存分に生かせるようになるし、何より、人数が増えれば増えるほど、敵の対処もしやすくなるからな。


 ちなみに、バイトの関係で【イサルデ】に着いたらログアウトするという旨を念の為話したところ、ヒナウェーブは難なく承諾してくれた。どうやら、彼女もそこで辞めるつもりだったらしい。


「俺、先行っていい?」


「ど、どうぞ……」


 一瞬、ヒナウェーブが顔を歪ませたような気がしたが、俺は気にせず吊り橋を渡る。木の板が軋む音に多少の嫌悪感を抱きながらも、気がつけば陸地にたどり着いていた。


 ヒナウェーブも着いて来ていることだろうという先入観のもと、後ろを振り向くと……


「あれ……大丈夫か?」


 声をかければ、おぼついた様子で横の縄にしがみつき、カタツムリ並の速度で足を運ぶヒナウェーブの姿を捉えた。


 ――これってもしかして……。


「た、助けてええええぇ!」


 ヒナウェーブはなんの前触れもなく、悲痛な声で叫んだ。


 橋を渡る際の顔の歪みの元凶は、高所恐怖症によるものだったのだ。


「急に情けない声出すのやめてくれよ、思い出し笑いしそうになるからさぁ」


 フウリの断末魔が、頭の中に残っていた俺は、思わず笑ってしまいそうになるが、何とか堪える。


「いいから、早く助けてよ!! さっきの借り!!」


 グラグラとふらつきながら、今にも泣きそうな声を振り絞り、彼女は俺に訴えかけてくる。


「分かったよもう……」


 俺は、吊り橋を引き返し、差し出してきたヒナウェーブの手を取る。まるで引きずるかの如く、何とか陸地に連れ出した。


「ふぅ……あ、ありがとう……」


 ヒナウェーブは武器のスナイパーを地面に突き立て、杖代わりにしつつ、呼吸を整えていた。


「ほら、早く行くぞ」


「はーい」


 さっきまで、吊り橋で蓄積した疲労を顔に浮かべていたヒナウェーブは、急に笑顔で歩き出した。切り替えが早い。流石世界大会出場者と言ったところだろうか……。


 ◆


「ねぇ、なんか来てない?」


 確かに、ヒナウェーブが指を差した方向から、砂埃を立てて、こちらに向かってくるのが見える。


「あれは……スライムだな……」


 幾度となく襲いかかってくる因縁の敵、スライムウッドの大群。それを率いているのは金色に光る拳。【スライムゴールド】だ。


 恐らく、スライムアイアンの上位互換。つまり、レアエネミーなのだろう。それはともかく、スライムの大群は間違いなく俺たちを狙ってきている。


「俺が引きつけるから、ウェブは後ろから撃ち抜いてくれ」


「いや、その必要は無いよ」


「え……?」


 ヒナウェーブは、吊り橋の時とは真反対のキリッとした顔でスナイパーを構える。


「【フラッシュバースト】!」


 ヒナウェーブがスキルを詠唱すると、スナイパーの先端から青白い光が集約していく。その光は徐々に拡大し、サッカーボール程の大きさに落ち着いた。


「発射……!」


 引き金を引くと同時に放たれた弾丸は、光を纏い、レーザー状に飛んで行く。そして着弾したかと思えば、轟音と共に溜め込んでいた光を放出し、俺は、腕を目に被せる。


 向かい風が全身を包み込む。しばらくして、目を開けると、スライムはドロップアイテムを残して、全員消滅していた。また地面は大きく抉れ、黒い煙を上げている。


「さすがに、やりすぎじゃ……」


「ルア君は分かってないね。スナイパーはリロードに時間掛かるし、一人づつしか殺れないから、あの数を相手するにはあれしかないのよ」


「まあ、確かにそうだけども……」


 俺は何とも言えない感情をヒナウェーブに植え付けられたのだった。


 ◇◆◇◆◇


 マップを頼りに、(ゲート)を潜れば、俺たちは車厘ゼリー森林を抜け、第二の街【イサルデ】にようやくたどり着いた。


「だ、ああ゛あ゛あ゛疲れたー」


 膝をつき、猫背になっていた俺とは裏腹に、ヒナウェーブは街の景色を不思議そうに眺めている。


 にしても、ヒナウェーブのおかげで劇的に攻略が楽になった。百発百中のエイムで、スライムが次々に消滅していくからである。


 あのスライム等と戦いたくなかったのは事実だが、経験値が欲しかった為に、結局特攻しまくったせいで疲れがより蓄積してしまったのだ。


「じゃあ、そろそろログアウトするよ」


 少しでも休憩したいがために、早くログアウトしたくてしょうがなかった俺は、ログアウトボタンに手をかける。


「待って、折角ならその……フレンドにならない?」


「え、まあ別にいいけど?」


 俺がそう言うと、ヒナウェーブは太陽のような満面の笑みを浮かべる。


「わ、私から申請するね!」


 《ヒナウェーブからフレンド申請がとどきました》


 《はい/いいえ》


 《フレンド登録が完了しました》


「バイトが終わったら教えて。チャットでも電話でもなんでもいいから!」


「ああ、うん……なんか色々ありがとな」


「ううん、こちらこそ!」


 彼女が再度微笑むと同時に俺はログアウトボタンを押す。すると、視界がボヤけ、世界が閉ざせれた。




(ウキちゃん……私やったよ!)


 ヒナウェーブは、天を見上げながら心の中でそう叫んだ。

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