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バウンティ・クロニクル~賞金狩りのVRMMO~  作者: アトラ


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救世主

 漆黒に染まった二本の角、赤色の隈取、筋肉質な肉体に対して、()()という奇抜なファッションセンスは、何故だか見事に調和している。


 そんなキユウの目の前まで来た俺は、この吊り橋を突破する方法を模索していた。


「勝負しねぇのか? 子猫ちゃんよお」


 腕を組み、人を見下すような鋭い眼光を浴びせてくるキユウに圧力をかけられる。


「そこを通してくれるなら、時間をかけなくて済むんだけどなぁ」


 俺は独り言のように呟く。


「おう、俺は何時間でも待つぜ? お前が勝負しに来るまでな」


「じゃあ、この後バイトがある……と言ったら?」


「馬鹿か。それで通すとでも思ってんのか?」


 そりゃそうとしか言いようがないが、この後バイトがあるのは本当だ。この勝負に負ければ【ラ・シーロ】でリスポーンすることになるだろう。


 それは絶対に避けたい。ここまで来たからには、次の街までたどり着きたいという己のプライドがあった。


「まあ、俺はお前と勝負する気は無い。だから……お前のこと色々聞かせてくれよ」


「俺がログアウトするまで、時間を稼ぐ作戦か? いいぜ、乗ってやる」


 我慢比べをするつもりは更々無い。情報を聞き出して、突破口生み出すためのヒントを貰う。それが目的だ。


「まず一つ目……掲示板で見かけたんだけど、お前が害悪ギルド「鬼怒哀楽」のメンバーって本当か?」


「ああ、そうだ。こうして、お前の目の前に立ち塞がってるんだからなぁ」


「ふむ……じゃあ次の質問。お前は今、プレイヤーを妨害する事に重きを置いている。それは何故だ」


「ただの娯楽さ。リスキルを楽しんでいるようなもんだ」


「へぇ……何かプレイヤーを足止めしたい理由があるのかと思ってたんだが、そうじゃないんだ。じゃあもしかして……ストレス?」


「何を一人でごちゃごちゃ言ってやがる」


 細かい情報を集めつつ、多少感情を揺さぶって見たものの、キユウは動じていないように見える。肝が座っていると言うべきか。忍耐力がずば抜けて高い。


「しかし、よく考えたな。βテストのプレイヤーを先に行かせて、ギルドに所属していないプレイヤーを永久に突き落とすとはね。アイツらはお前に感謝してるんじゃないのか?」


「ああ、そうかもな。だが、俺にとっちゃそんなのどうだっていい。お前らの苦しむ顔が見れるならな」


 キユウと対話を重ねるうちに、コイツだけには負けたくないという気持ちが自然と芽生えていた。


 だがしかし、ここを突破するアイデアが一向に湧いてこない。吊り橋の幅が狭いせいで、どうやってもフウリのように投げ飛ばされる未来が見えるのだ。


「お前が今どんな顔をしてるのか知らねぇが、相当悩んでいるみたいだな。お前の顔をなんざ見なくたってわかるぜ。口だけは達者だもんなぁ」


「ブーメラン刺さってんぞ」


「ふっ……なかなか面白ぇやつだ」


 キユウはニヤリと笑みを浮かべる。


 結局、スピードブーストで突破する以外の作戦は思いつかなかった。時間的にも、どちみち勝負するしか無さそうだ。


「スピードブースト」


「ふん、やっとやる気になったか……」


 待ってましたとばかりに、キユウは腰を低くして構える。


 すると――。


『ルア君……聞こえる?』


「……?」


 間違いなく女性の声が聞こえた。しかし、周りを見渡しても俺の近くにはキユウしか居ない。


「どうした子猫。何かあったか?」


『聞こえてそうね……ルア君、あなたはスライムジェルをキユウの顔に塗りつけて。その後は私に任せて欲しい』


 この声の主は、今の状況を何故か知り尽くしていた。よく分からないが、とりあえず指示された通りやってみるとするか……


 俺は武器を取り出し、直線的に駆け出す。からの……


「【ムーンスラッシュ】!」


 バリアに防がれることを知っているキユウは苦笑いを浮かべながら、俺の右手を掴む。だがそれは、ブラフだ。


「これでも喰らっとけ!」


「……なっ!」


 俺は空いた左手でスライムジェルを取り出し、顔面に投げつける。キユウは俺の腕を掴んだまま無理やり投げ飛ばそうとするが……


「銃声……」


 背後からパァンという軽い音が耳に伝わる。その直後、俺の真上に弾丸が通過した。その弾は見事にキユウの頭を撃ち抜き、赤いエフェクトが円形に刻まれていた。


「くそ……がっっ!」


 スライムジェルが効力を失い、消滅した後、キユウはそのまま背中から倒れこむと同士に、ポリゴンとなり消えた。


『よし、完璧!!』


 先程の女性の声がまたしても脳内に直接語り掛けてくる。


 あまりにも一瞬の出来事に、状況も掴めないまま起き上がり、銃声のした方向に目を移すと、プレイヤーが茂みから顔を出し、俺に向かって歩いてきているのが見えた。


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