第4話 理事長からの特別任務指令
恩人である霧生宗介──階級は大佐──との邂逅を果たした春人は、青い顔を次第に落ち着かせた。そしてそのまま気持ちを切り替えて、理事長室の扉を三回ノックした。
二回叩いたあと少し待ったら、
「おう……来たか、理事長権限で第六試験分隊の入室を許可する。入れ」
扉の中からかなり荘厳とも言える力強い声に、宗介とはまた違った緊張感を走らせながら、春人はドアノブをゆっくりと回す。
そしてこの部屋の主であり、専任中央訓練校の最高権力者が鎮座しているであろう場所へと、敬服の態度を崩さず視線を動かしていく第六試験分隊の一同。
なにせ横柄な態度を少しでも見せようものなら、いつ殺されたか気づくことなくあの世逝きだからだ。それほどまでにここに座する人物は圧倒的な強さを内包している。さきほど会った宗介がチワワに思えるほどに。
部屋へと足を踏み入れた春人は部屋を見る。それほど変わった部屋ではなかった。手前に来客用の革張りのソファが二脚と、黒いテーブル。さらなる奥に無機質な黒いデスクがあり、そこに理事長が椅子に背もたれを預けながら手元の資料ファイルを眺めていた。
その外見は逆立てた白髪の髪に口周りに髭を蓄えた荒々しい武人のような姿をした老将。
「……失礼します」
と、春人が分隊長として迷惑にならない程度の声量で言うと、持っていた資料を雑にデスクに投げ捨てながら理事長が顔を上げる。正確な齢はよくわからないが最低でも九○歳を超えているはずなのに、筋骨隆々《きんこつりゅうりゅう》で背丈が一九○に近く巌のような冷たい瞳が部屋にかけられている時計に向けられる。
一七時一分。
理事長の三堂隆厳が告げた。
「遅刻だぞ」
「申し訳ございません理事長閣下。呼び出しに遅れるという失態はどれだけ謝罪してもしたりないほどでございます」
「ふむ。女関係にだらしないと報告があったが、思った以上に誠意ある姿勢を見せたことに免じて今回は特別に許してやろう。だが次からは罰則を与えるぞ。例えば……お前のそこにいる部下ニ名を討滅兵装なしで禁踏不浄区域に捨ててくるとかな」
隆厳理事長は、そんなことをあっさりと言い切る。そしておそらくそれは嘘ではないだろう。この男は専任中央訓練校の頂点に立つ存在で、天裂の乱で多大な功績を成し遂げた生ける伝説なのだ。やろうと思えば鎧殻獣との戦闘経験が少ない二人の人命を蔑ろにした非道な残虐行為を実行し、軍外部に知らせぬよう綺麗に揉み消せる力を当たり前のように持っている。
「……二人を禁踏不浄区域に置いていく判断を、見送って頂いた理事長閣下の寛大なお心に感謝申し上げます。そしてそうならぬよう、この第六試験分隊の分隊長として一生懸命尽力していく所存です」
するとそこで、隆厳理事長は初めて笑みを浮かべ三人を手を動かしてソファへと促す。
「理解力があるようで良いぞ。まあ、まずは座れ。お前らのために紅茶をテーブルに置いてある」
すると横にいた優梨香が言う。
「元討滅本部司令官で、前線を引いたいまの階級は中将。『極東の英雄』という絶大な影響を持つ異名を世界に轟かせる討滅官の一人だって」
本気かどうかわからない声で、妙に楽しそうな顔を見せて笑う。
しかし対象的に薙沙のほうは、いまにも倒れそうなほどにとてつもなく緊張しているようだった。無理もない当然の話だ。この訓練校の絶対的な支配者の部屋へと足を踏み入れているのだから。
三者三様な態度を取りつつ、紅茶の置かれたテーブルのソファへと第六試験分隊の面々は座る。
そんな第六試験分隊の異なる態度を調べると言わんばかりに、隆厳理事長は無言で見つめたあと呼び出した理由について口を開いた。
「まずは──超能力者、という存在は知っているか?」
それに対して春人は素直に「存じております」と頷く。
超能力者。
そう称される存在が公にされたのは、いまから七〇年ほど前になる。
一般的な概念としては、通常の人間にはできないことを実現できる特殊な能力かつ、科学的な手法を持って目覚めさせた特異な人が該当する。古くは神通力などとも呼ばれているものだ。
超能力とされる現象として、例えば「手を触れずに物を動かす」、「人の心を読み取る」「壁の向こう側や箱の中の物がなにかを隔壁越しに言い当てる」などの能力があり、彼彼女らは物理法則すら超越した才覚を見せ、人類の枠を逸脱した力を有する持ち主だった。
それらの力を用いて、陸上短距離である一〇〇メートル走の世界記録を二秒以上余裕で縮めたり、テニス選手だと一度ラケットに触れるだけで逆回転を引き起こさせ、相手のすべての打球をコートの外に出してアウトにし、ピアニストならば初めて聴衆に訪れた者の奥底まで響かせ虜にしたり、アニメオタクでさえ全世界の毎クール各放映アニメを、リアルタイム視聴した上で毎話各カットの詳細なレビューを投稿する。
もちろんそんなずば抜けたことができるのは、人類全体どころか超能力者の中でもごく一握りの存在ではあるが、その数は年々増加傾向にあり、すでに大企業では影響力を見せつつあった。
まだ表沙汰にはなってないが、一部のスポーツ界の出資者が闇カジノのように超能力者専用の興行を秘密裏に主催し、莫大な利益を生み出していたりする。
「だが、そんな超能力者の存在を面白く思わない者は、とてつもなく多い」
と、隆厳理事長は超能力者と現代社会の軋轢を憂うかのような表情をしつつ、そう言った。
続けて、
「そうした言わば『反超能力主義』勢力の内訳は、大きく分けて二つ。まずは超能力者の存在を不気味だと考え排斥しようと過激思想に取り憑かれた一般人。人間選別後に部外秘の科学理論により、飛び抜けた恩恵を授かる超能力者を強く呪い、その嫉妬や憎悪を集団となって超能力者らに向ける者たち」
一部のネット上では『超能力者征服論』なる論調が存在し、超能力者である彼らはいずれ我々のような『優れた一般人』を見下して、家畜化し支配階級に君臨したのち、理不尽な搾取を行い、最終的に我々を完全抹殺するだろうといった予測にかなりの支持が集まっているという。
まるで独裁者の発言に盲信しきって、国家を滅ぼしてきた人類の悪しき足跡そのものである。
「超能力者を狙った銃の乱射やテロリズムやら、イカれた凶行に及ぶ者もいるが、まあ、これらは単なるヒステリー。もともと雑な理由をつけて個人的な不満を爆発させたい者か、凶行が起こりうる要因……行き過ぎた銃社会であったり、治安状況が警察では対処できない地域であったりが重なった結果によるものだろう」
「つまり、超能力者の存在を根底から脅かす類の者ではない、と?」
聞き飽きたらしい優梨香が声を上げる。
隆厳理事長の述べる内容は、優梨香でなくとも温和な世間一般もわかっている現状確認の意図が読めず、控えめに「その程度の状況は把握している」と示しているに他ならなかった。
春人としてはそんな優梨香の態度に心底焦ったが、しかし隆厳理事長は気にすることなく説明を続けていく。
「そうだ。つまりもう一つの『反超能力主義』勢力の暗躍は、過激派な一般人の突発的犯行とは一線を画している」
デスクに肘を置き頬杖をついて隆厳理事長は、ちらりとこちら側の反応を確かめている。
実にまどろっこしい遠回しなやり口に、面倒臭さを感じつつも春人は求めている言葉を紡いだ。
「……もちろん、承知しております。魔導管理機構に属さない彼ら『黒導結社』は、現在の社会秩序を破壊しうる危険性が違います」
黒導結社。
積極的に超能力者らと関わりを持たない一般魔導師とは異なり、主に十字教を中心とした狂った原理主義団体も取り込み、武装秘密結社の幹部として大々的に活動する非公認魔導師らの組織。
その活動内容は政治ロビーから国家を巻き込んだ武力革命まで多岐にわたる。構成員の国籍、年齢、職業はさまざまであり、社会のあらゆる団体に支持者が存在。また、構成員には超能力者でありながら自身の出生を憎み、黒導結社へと参加する者もいるほどだ。
超能力者と同様、物理法則を超えた力……『術法』を修め科学側と融和路線を取り、一部分ではあるが協力することを決めた仲間の魔導師さえ、不浄の存在だと切り捨てる危険集団だ。
彼ら黒導結社からすれば自分たちの強さに近づこうとすること、そして年々数を増やしていくという超能力者の姿勢は、排除すべき脅威だと思われている。
現に、魔導管理機構に否定的な政財界の中から、非公認魔導師の追放を良しとする動きが近年特に活発化している。
「つまりは、このままだと非公認魔導師らの既得権益が脅かされそうで困る。という政治的な意図が内包している話です」
せっかく魔導管理機構と敵対できるほどの絶大な力や知識を独占し、情報工作活動などで莫大な利益を得ていたのに超能力者という新参の大規模勢力が現れ、現在の地位や権力が揺らいで維持できなくなるかもしれない。
ゆえに超能力者のすべてを破壊してしまおう、というある意味では銃の乱射やテロリズム以上に傲慢で腐った考えである。
なんとも由緒ある歴史を辿った魔導師勢力の一分派にしては、ちょっと精神的余裕なさすぎでは? と春人はつい思ってしまう。
「こういう話は人類の歴史を遡れば度々あることよ。苦労の末に手に入れた地位を横から奪われるものほど業腹になりがちでな。人の持つ理性で抑えられない愚かな者が生まれやすいのだ」
実に呆れ返った口調で隆厳理事長は、春人ら三人に語る。
「現に、既得権益を奪われて困る彼らの社会秩序を乱す行いは、治安状況が芳しくない海外に置かれた警察署の規模では、もうすでに対処が追いつかなくなってきている。超能力者を危険視する政治家だとか、超能力者の力を訝しむ大企業の投資家だとかが後ろ盾となっておる。散発的で無計画な犯罪よりも、組織立った黒導結社の超能力者排除計画なら、自分らの求める平穏を取り戻せるのでは? と考えてな」
例えば超能力者に協力的な政財界の要人を秘密裏に暗殺するとか、政敵や商売敵になった超能力有益主義の人物を、物的証拠を残すことなく消すとかだとか。
その手の暗躍や陰謀の類は、超能力者より圧倒的に非合法魔導師が仕事として請け負ってきたものだ。
「が、超能力者の増加を良しとする側も黙って見過ごすほど無能ではない。非合法魔導師による妨害が本格的に始まった一九六〇年代、つまり二三〇年以上前から確実な対策を現実のモノにしていき、驚異的なスピードで造り上げた成果こそ……この日本にある『オッターヴォ』というわけだ」
『オッターヴォ』。
正式名称は、国際学術都市『オッターヴォ』。
日本帝国の旧長野県全域・旧岐阜県全域を利用して存在する最先端科学技術を含め研究・開発している国際相互協力育成研究機関。認知科学や基盤・社会脳科学の追求という名目で超能力の研究、すなわち「脳の開発」を行っている。
日本帝国、アメリカ合衆国、旧ロシアであるピートヴァ共和主義国連邦、オーストラリア連邦、フランス共和国、中華人民統一連邦の六カ国が中核となって計画された大規模な超能力育成プログラムの根幹を成す場所だった。
人口はもうすでに現在の段階で二八〇〇万人もおり、そのうち学生が四割を占め、彼らに適した能力開発と教育環境を提供し、七〇年前に公にした当時から危惧していた差別・偏見・弾圧から超能力者を保護することや超能力者を組み込んだ新しい経済体制の確立、黒導結社のような非公認魔導師との接触を避けることを目的とした都市……というのが表向きの建設理由だ。
それも嘘ではないが、保護者同意の下で行える人体実験──精神的・肉体的双方で安全性を考慮したもの──を公然と実施できることは、世界各地にいる異常な知的好奇心を持つ研究者らを最大限に活用することこそが本当の目的だった。
「超能力者は非凡な才覚を有しているが、魔導師ほど秘密裏な暗殺に向いておらん。しかし、遠隔呪文による殺害や身体的障害に一定以上の耐性を一般人以上に持つことはわかっておる。ゆえに黒導結社らによる超能力者抹殺計画は遅々《ちち》として進んでないと報告されておる」
「はい。しかし国際討滅官機関上層部から三年前に出された軍事文書にはその『オッターヴォ』に対する第四五六調査活動における報告書にて無視できないことが記載されております」
軍事文書を含む国際討滅官機関の内部文書の取り扱いは、重要度の高い順に厳令指定の「最高機密」「機密」「極秘」「秘」の四段階と、常令指定の「部局限り」「外部拒否」「注意」の計七段階で分類されている。
『オッターヴォ』に関する調査報告は、討滅官及び候補生以外では知らせてはいけない「外部拒否」に分類されるため、正式な討滅官ではない春人などの試験分隊も読んで知っているのだ。
「そう。それが──」
「「世界認識操作装置に関する三カ年計画」」
春人と隆厳理事長は口を揃えてそう口にした。
具体的な内容や開発の進行状況、そもそもそんな装置や計画などが存在するかどうかも含めて曖昧で一切不明ではあるが、いかにも不穏そうな響きである。
世界。というのが魔導師が蠢くいまの世界を指すとか指さないとかの次元ではなく、認識そのものを操るというのは世界征服を容易にしてしまう非常に危険なものだった。
「国際討滅官機関に所属する我々としては、噂の真偽や詳細を事細かく調べ上げ、もし実在するのであれば世間一般どころか黒導結社、解放戦団、魔種などの脅威に知られることなく叩き潰す必要がある。ゆえに追加の諜報要員を送る必要に迫られたわけだが、さて、ここまで言えばお前たちが呼び出されたか愚鈍でなければわかるだろう?」
春人たち第六試験分隊をそれぞれ一人ずつ確認するよう、隆厳理事長は視線を動かしていく。
「──なぜ、私たちがその調査を受ける必要があるのでしょう? その『オッターヴォ』に潜入する諜報要員って不確定要素が大きい割に重要度や危険度で言えば桁違いですよね」
が、黙って聞きに徹していた優梨香がそう割って入ってくる。
春人は表情を引き攣らせ、そっと優梨香を窘める意味を込めて、彼女のほうへと見やり隆厳理事長との間に入ったが、
「ちょっと、いまは喋んないでもらいたいん……」
「それに私たちとしては、これからゼネレーションタイプと思わしき魔導秘儀の摘発、というBランク相当の任務を実施する予定なんですよ。いきなり呼び出されて『オッターヴォ』に潜入しろってどういう了見なんですかねぇ?」
そんな風に捲し立てて隆厳理事長に対して強気の姿勢を示す優梨香。
春人としては、極東の英雄と畏怖されるほどの傑物相手に、なぜそんな反骨心と呼べるほどの態度を崩さないのか、と真剣に恐怖した。これ胃液を吐き出すかもなぁと現実逃避気味に考えるほどに。
優梨香の無礼千万とも言える言葉の数々に、むしろ口角を上げ微笑む隆厳理事長は、低い声を室内の響かせた。
「なに、お前らを『オッターヴォ』に送る意図など知れたことよ。噂の真偽を確かめるだの、超能力者を潰そうと躍起になってる黒導結社らなどを潰すだのといった、大それたことは期待しておらぬ」
「それって、どう言う意味かしら?」
「ただの捨て駒だ」
隆厳理事長は誤魔化すつもりも茶化すつもりもなく、平然とした態度で宣告した。あまりにも日常会話として言うので理解が追いつかないといった表情で優梨香は言葉を失う。
それに春人は皆を代表として、隆厳理事長の覆ることはない言葉の真意を聞いてみる。
「……その、捨て駒ということは、つまり」
「ああ、そうだ蒼崎春人上等兵。お前の理解した通りだ。仮に件の計画の噂が真だとしたら、我々国際討滅官機関は総力を持って世界の秩序を守るために叩き潰す必要がある。すなわち、超能力者との対立が表面化すること……最悪の場合は全面戦争になろう。しかしこちらとしては、そのようなことになるのは可能な限り避けたい思惑が大半だ。だが、なにもせぬというわけにはいかん。よりにもよって『オッターヴォ』の設立に関わった六カ国は、国際討滅官機関とも強い繋がりを持つからの。ゆえに超能力者の戦力状況、不確定要素がある件の計画、そして潜んでる可能性がある黒導結社の情報、この三つを向こう側を刺激することなく三年間調べられる人材が相応しいのだ。もちろん、他にも超能力者との直接戦闘のデータは、たとえ一戦でもあったほうが良いというのもあるがね」
隆厳理事長は春人の感情を推し量るかのようにジーっと見つめたあと、瞳を閉じて愉快そうに小さく笑った。
つまりはそういうことだった。超能力者と戦って死に至っても惜しくなく、もうすぐ一般の高校生へとなる年代の候補生を『オッターヴォ』に送り込もうという目算なのである。
そんな非道とも言える潜入任務に、静かだった薙沙はついに口を挟む。
「……り、理事長。そ、それはわたしたちに超能力者の未知数な力に挑めってことですか? 場合によっては死ぬ可能性が……」
「そうだと言っている、十条薙沙一等兵。それどころか今回の内偵に気づかれても終わりよ。だが」
片目を開けた隆厳理事長は、心底不思議そうに両手を広げて見せる。
「それが──どうかしたのか? 紛いなりにも軍人であるのに、上官からの極秘任務を断る理由なぞないだろう? それともなにか、黒の魔導師フォワブロ・ウェスティによって書かれた詩集『オシリス倫理詩篇』の初版本の捜査をしたいと? 確かに第一七分隊のデバイスにハッキングした、道蔵優梨香一等兵の手際の良さは褒められる価値はあるが、お前らの実力では無意味な死となるのがオチだ。ならば内偵のほうが多少の意味を持って死ねるだけマシと思わぬか?」
結論について予測はしてなかったので、春人は特段冷徹な言葉に精神面で揺らぎ表情を崩すことはなかった。
感情的にならず冷静に判断すれば、最初から死ぬことが織り込み済みの捨て駒なら、第六試験分隊ほど向いているのはいない。むしろ、問題児として有名な第六試験分隊の使い方としてはかなり有益ではあるからだ。
それでも、淡々と受け止められるかと言えばそうではないのも事実。
──おいおい、マジかよ。俺は軍に籍を置く事前の段階で死ぬことは覚悟して入ったが、二人の命を見捨てる覚悟はついてないんだが……。どうするよ、これ。
と、呆れながら春人は逡巡する。しかし見習いとは軍人なのだから、二人も死が身近なものとして考えていたであろうと思い直し気持ちを整理していく。
自分は、もうすぐ死ぬかもしれない。
ならば死なぬよう立ち回れば良いだけのこと。そして超能力者の戦力状況、不確定要素がある世界認識操作装置による計画、そして潜んでる可能性がある黒導結社の情報、という三つの任務を達成すれば問題児分隊ではなく、極東総局における将来有望な存在として間違いなく注目されることだろう。
そう思えば悪い話だけってこともない。何事もネガティブじゃなくポジティブに考えれば大丈夫だ。
と、春人はそう改めて、この国際学術都市『オッターヴォ』に関する極秘潜入任務に対して覚悟を決めるのだった。