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3/3

潜入


12月29日


雪と別れて10分後


情報処理センター


情報が集まるとしたらここだろうな


茶髪のツーブロックでチンピラのようなゆったりとしたスーツに身を包んだコカラギが愛車のドアを閉めながらブリーフケースを片手に軽い足取りで歩いた


ー情報処理センター、ここにはあらゆる情報を買うことのできる施設

取引できる情報は利用者の社会的地位によって変化する

地位が高ければ高いほど国にとって重要な情報を買い取ることができる

情報一つの値段は一市民が一生をかけても手に入れる事の出来ないほどの額

この施設を使うのは国の要人か大企業のCEOに限られるー


俺にとってはもう一つの脳みその様なもんだな

良い情報を期待してるぜぇ~


コカラギは建物の外側に設置されている非常階段を登り切り

手摺に飛び上がりそのまま6メートル上の屋上へ着地する


うっし!

満点の着地だ

さてさて、仕事道具を出しまして~


屋上に大きなアンテナが設置している

このアンテナがすべての情報を受信するこの施設の要

コカラギはそのアンテナの根元まで行き

ブリーフケースを開けた

中には簡易工具と一世代前の古いノートパソコン

人が見れば低スペックパソコンにしか見えないが

コカラギにとっては動くだけありがたい仕事道具だ

工具でアンテナの配線を剥き出しパソコンから伸ばした配線を繋げ

パソコンのキーボードを操作しだした。


敵に偽の情報を流してた俺がボロイPCで脆弱なプロテクトのアンテナをいじめてる・・・むなしくなってきたなー

さっさと情報を引き出して俺も体張らねぇとな

雪に示しがつかねえしな



同時刻


talkビル隣のビジネスビル


ふー!

四日前より基礎体力が落ちたような気がするなー

殴られすぎて何処か壊れたかしら?

・・・機械じゃあるまいしそれは無いかぁー


ガチャ


あっ!


ん?


・・・・


突然ドアが開きそこには初老の警備員の男が部屋に入ってきた。

室内にいた雪と目が合い少し無言で雪を眺め少し警戒しながら口を開く


ここは立ち入り禁止ですが・・・関係者の方?


・・・う、うん!そうですヨ!

見回りご苦労様デス!


そうでしたか~


ソウデスヨ~


ー誤魔化せたかぁ~?ー


身分証はお持ちで?


ーうん分かってた!どうしようかな!・・・ー


今日は忘れてきちゃった!


え~?ここまで入るのにIDカードが無いと入れないはずだけど・・・


ーこの割れた窓から入りましたなんて言えないわ!

こう見えてお爺ちゃんっ子なんだけど!

おじいてゃん叩きたくないんだけど!ー


ちょっと来てもらいますよー


は、はーい


待って下ださい


大人しく連行される瞬間警備員の後ろから声がかかる


はい?


そこにはボサボサ頭のスーツ姿の青年が立っていた


その人は僕の連れです。

僕がトイレに言ってる間に離れてしまったみたいでして


そうですか、一応お嬢さんのお名前は言えますか?


はい、言えますよ


ー誰かは知らないけど飛び切り良い名前を頼むよ!ー


柴乃山雪さんです。


は?


どうかしました?


は、はーい!って言いました!


そうかい、疑って悪かったねぇ最近物騒だから気を付けてね


はーい


警備員がその場を歩き去ると


入れ替わりに青年が部屋に入り扉を閉めた


ー 一難去ってまた一難ってやつかな!?

この人と知り合いだっけ?もしかしてストーカー?

上手く気絶させれるかな?ー


僕のこと忘れた?


・・・ごめん・・・会ったことある?


うそー!

本当に覚えてない!?

ほら!えっと!ナンバー5だよ!


あっ!真田アズキ君!?


そうそう!


いやー久しぶりね!

20年振りかな?

元気してた?


うん!元気にしてたよ

雪も・・・うん、相変わらず無茶してるみたいだね・・・


ーアズキはバツの悪そうに目線を逸らした

雪はその行動をよく理解していた仕方がないない事なのだ。


あははぁ~、相変わらずいい「目」をしてるねぇ


ご、ごめん!いつもの癖でつい・・・


いいよ!透視されても恥ずかしくないよ


ーそう、彼の目は物を見ることに特化した力

私の様に自分のコードを唱えなくても能力を扱うことが出来て本人が少し注視してしまえば見えてしまう

色々苦労をしてきたんだろうね

途端に暗い顔しちゃってー


アズキ君は何でここにいるの?


何でってここで働いているからだけど?


そうなの?

すごい偶然ね!


うん、でも元気そうで本当に良かったよ

雪はまだ戦っているの?


うん、過激派が気に入らないからね!


雪らしい理由だね、コカラギ君は元気?


うん!君がくれたパソコンをまだ使ってるよ


そうなんだ!うれしいなぁ

僕、臆病だし戦闘向きじゃないから二人にしてあげられるのは限られたし


何言ってんの!助かってるわよ!


そっか!それは本当に良かった


あっ!ごめん、仕事しないと

もう行くね


・・・うん、元気でね!


何か言いたそうにしていたアズキだったが、あきらめて別れを告げた

バタンと扉が閉まりアズキは部屋に残った


20年前と同じだったなぁー

僕も一緒に戦うってまた言えなかった・・・


そこの君!身分証は?


ええっと!


また捕まったみたい


ーちょっとの事でも助けになるならそうしようー


あのすいませーん

その子僕の連れです。


アズキくーん!!


ガチャリとドアを開け雪のところへ向かった




ーーーー


同時刻



arm'screate本社


arm'screateは元々戦火に巻き込まれた被害者を治療、支援、戦後のサポートを目的とされた

ボランティア集団だった

戦後のサポートの延長で体の部位を欠損した人達に義肢を提供を始め

利用者が介護を必要としない生活を送ること目標に独自に義肢の制作を始める

開発予算は募金で集められた義援金、他の義肢製作所からの応援資金

医療学会の条件付きの投資により

研究、開発環境が安定し技術の成長が著しく加速し今では事故や病気で欠損した人達に向けた義肢サービスの開始

その後の様々な功績が認められ正式的に国を代表する企業の1つに参加した。


私達の功績はどう見えるのでしょうね

最初は無償で活動していたのに救済が終われば、不自由な人たちからお金をもらい義肢を提供している

・・・・最初は無償でしていたこと後で同じことを

有償で行う事をよく思わない人はどれだけいるんですかね・・・


その部屋は異常だった。

壁の至る所に義肢が並べられていた

極めつけは移植用の心臓、肺、胃、肝臓、腎臓、腸までもが並べられている

その部屋の窓際の席に1人の男が頭を抱え日頃抱えている自己嫌悪に苛まれていた

彼は齢40にしてこの会社を打ち立てた社長だった。

元々責任感と正義感の強い性格ゆえに

今の会社方針に疑問を抱き悩み続け気が着けば黒かった髪は色が抜け落ち

目の下のクマは日を追うごとに濃く広がっている


社長、お客様がお見えです


分かりました。

通してください


内線が客の来訪を告げた

男は気を引き締め疲れた顔に活をいれ

来訪を待ち受けた。


コンッコッコンッ


どうぞ、入ってください


やぁ!元気だった?


入室許可と同時にドアが開け放たれた

開いたドアから椿が笑顔で入ってきた


椿さん!お世話になっております!


世話なんてした覚えないよ!

疲れた顔してるね?

ちゃんと寝てる?


え、ええ

ちゃんと睡眠はとっています。

どうぞ座ってください!


ありがとう

そう・・・ナンバー4はどうしてる?



応接席に椿を座らせ彼はコーヒーを淹れる

注がれるコーヒーを見つめながら

椿は話を始める


はい、今も眠らせています・・・


本当はこんなことさせたく無いんだけど

ごめんね


い、いえっ椿さんには会社設立前からお世話になってますから


いいよ

化け物の私に変わりなく接してくれた人間は君だけだからね

きみは私の大切な人間の友達だとおもってるよ


化け物とは思ったことはありませんよ

いつも来るナンバー60さんにも大変お世話になってますし

これからも友人でいたいです。


そっか・・・でもごめんね


・・・そうですか・・・残念です。


雪の言葉を受け

何かを察した



うん、それに私たちとの繋がりもバレてしまったみたいだし

迷惑はかけられない

今後の支援は打ち切って

国から情報開示を迫られたら従ってね

進んで協力したことは伏せて全部脅されてやったとせつめいして


・・・それでは貴女達に対する裏切りでは?


気にしない、私たちが今日まで生きてこれたのも君のおかげだよ

霧島サイト君

私たちは君から受けた恩は決して忘れないよ

だからこそ君を守る為に喜んで君から離れるよ


悲しい生き方ですね……思いとどまる事は出来ないのですか? 


ここでやっぱ辞めた!なんて言えたら良いんだけどね

でも、それだと何も変わらないんだよ

変われないし


微笑む椿にサイトは少し納得しながらも椿の為に

少し歩み寄った言葉を投げかける



これが今生の別れじゃない、約束する


・・・わかりました・・・約束です。

私の携帯も調査情報として提出しないといけないと思いますので対策をしておいてください


うん、わかった

・・・コーヒー美味かったよ

さっき飲んできたコーヒーよりやっぱり君が淹れるコーヒーの方が美味かったよ

全てが終わったら必ず飲みに来るからそれまで無事でいてね


はい、どんな手を使ってでもここに残ります。

たとえ、椿さんたちを陥れることになっても


椿の覚悟を受け取り

再会の約束を交わし

サイトは真っ直ぐに椿の目を見つめ

サイトなりの覚悟を示した。


いいねぇ!その目、初めて会った頃の大好きな目だよ!

その様子ならもう大丈夫だね!

公表をテレビで見てるからびしっと決めてね!


ええ!椿さんこそ簡単に終わらないでくださいね!


じゃっ!またね!


入室時と同じように元気よく退出する椿を送り出し

サイトは空になったカップを返却棚に置き

席に着き外の景色を眺める

今は昼くらいだろうか外のベンチで食事を摂る職員がいた

皆がそれぞれ家庭を方や自分為に日夜働いている

サイトにとって椿と同様大切な仲間であることに変わりない

先ほどの自己嫌悪は無くなり自分にできることの為に机に向き直った




同時刻


情報サービスセンター


手に入れた情報はこんなものか・・・

画像もついてるな・・・これは・・・椿か?

armsクリエイトの社長と写っているな……

・・・はぁ?!ありえねぇ!

それはありえねぇーぞ!

死んだ3日後に何で生きているんだ?

こりゃあ社長に直接当たるしかないか?


コカラギは道具を回収し屋上から自分の車まで飛び

急ぎ、乗車し

車を走らせた


雪はちゃんと仕事してんのか〜?






同時刻


商業ビル屋上


結局ここま連れてきてくれてありがと!


う、ううん!どうってことないよ!

休憩時間内だしね


さぁて!世紀の大ジャンプでも決めちゃうわよー!


ちょっとまって


ん?どった?むあっ!


じっとして目を閉じてて


う、うん


気抜けた返事をしつつアズキに顔を向けると

アズキが雪の目を優しく掌で覆った

すると、じんわりと目が在った場所が暖かくなり

雪は喪失していたものが戻ってくる様な感覚を感じた


こ、これで完了だと思う


掌を顔から離すと同時に眼帯を取り

アズキは少し不安げな顔で雪の顔を見た


ん?なにごと?


ーいきなりキスされると思ったけど何事かな?

治った?やけに眩しいけど何かしたのかな?

眼帯を取らないでほしいな、結構気にしてるんだけどー


なんて思いながら不意に目を押さえると

視界が塞がった


あれ?治ってる!?


忘れた?僕の見る事に特化した能力はあくまでも

もう一つの能力の為に付随したものだったんだけど


あ!回復能力持ちだったね!


そうそう、今の雪みたいに治癒能力が落ちた人の為に僕が作られたんだよ

まぁ・・・そんな事ならずに終戦を迎えたわけだけどねぇ・・・

でも、治せてよかったよ!


マジで困ってたの!ありがと!

やっぱり見えるってのは良いね!

どっちの意味でも


色々見ちゃったのは本当にごめん!


いいよ!

あ、そうだ!

連絡先教えて欲しいな

治してくれたお礼したいし


い、いいよ当然の事をしただけだし


コカラギも会いたがっていると思うし

いいじゃん!


う、うん・・・


だめ?


う、ううん

はい、これが僕の名刺だよ


これが名刺かー

初めて貰ったわ

ありがとう!

今抱えてる仕事が終わったら連絡するわ!


うん・・待ってるよ


じゃっ!またね!


今度は振り向くことなくtalkビルへ飛び移った

空中で2~3回転し音を立てずに着地ぃ・・・・


はい!100点満点の完璧な着地ィああああっ!!!!


出来なかった

着地と同時に床が抜け落ちそのまま下へ落ちてしまった。


あっ!雪が落ちちゃった!・・・大丈夫かなぁ・・・





talkビル内



けほっ!けほっ!おえっ・・・

おしり打ったぁー

ひぇ~背中が痛むよぅ

アズキ君に見せれば良かったよー

あー痛い痛い

マジで直りが遅いんだけど!どうなってんのよぉー


瓦礫の山から雪が瓦礫を搔き分けながら這い出てきた

全身の引かない痛みに弱音が出てしまう



今の音は響いただろうから早く現場を見ないとっ!

後ちょっとぉ!

届いたぁ!


落下した穴へ飛び、空中で手足をバタバタさせギリギリ手が届き這い上がった


うんちょっ!

あっー疲れたよぉぉぉぉ!!!

・・・・さてさて、遺体が見つかった場所はぁーアレかな?

あらららー

血の跡がすごいわぁ

両脚が義足で結合部ごと引きちぎられて

被害者は壁に力任せに打ち付けられたと………


義足は害者へつま先を並べて置かれて居た………

この構図に意味があるのかな?

資料通りなら他の事件も必ずこの構図にして置いてあったみたいだし何かヒントが有るはず


うーん・・・足を並べる・・・被害者へ向ける意図・・・

見せつけ?・・・いや、違う・・・


思考しつつ遺体が在った場所へ腰かけ記憶の中の写真と同じ姿勢を取り尚思考する


地面に伏せ義足の足首を右手で掴む・・・

顔は真上を見る姿勢っと・・・

この構図は命乞に見えなくもないわね

でも、自分の足首を掴むのは違うわ

自分の足首いや、手に入れたものへの執着を表している?

死の淵に立たされても執着する程の物なの?

きっと違うわね・・・


足を……掴む……掴み………掴み方・・・

アキレス腱の位 置を血だらけの手で握らされていたわね……

アキレス腱……もしかしてアキレス?


仮説上、足に障害が有る者は良い意味でも悪い意味でも

非人間的存在であると聞いたことが有るわね


かの英雄アキレスは足に障害を持っていたけど、

異常なほど強く数々の武勲を挙げた。


でも、足の腱に矢を受けアキレスはそのまま死を迎えた。


………もしかして死因を模倣したの?

確かにあの義足を使っていた被害者にとって

あの足は非人間たらしめる画期的なものだった

でも、その足を狙われたら?

アキレス同様失うと死に直結する物だった

現に死因は義肢を千切られた事による出血性ショック死


仮説が正解だとして

真上を見上げる体勢にも何か理由があるはず


胡坐をかきながら再度思考に戻ろうとすると不意に気配を後ろに感じた。


動くな!


今日は後ろを取られるわねぇー


雪の後ろには見覚えのある戦闘服を着た5人の男たちがサブマシンガンを構えながら立っていた


ここは一般人は立ち入り禁止だ!

ここで何をしている!


何もしてないわよ?

貴方たちには何かしている様に見えたかしら?


何をしていようが貴様は我々の質問に疑問を抱かずに答えろ

お前のことを撃ち殺してもいいんだぞ!


分かったわよ!

喚くなクソガキィ!


こ、このっ!!!!


あっ!違うえーっと

あんまりうるさいとメッだよ!

お兄ちゃんッ♥


手でハートの形を作り

ウィンクをしながら自分の胸に当てた


ーきもっ!私キモイ!!コカラギに見られたらずーっと

このネタでいじられるわぁーってか、なんか反応しなさいよ!ー


全員構え!

特別公務執行妨害に抵触したため対象Aを処刑する!

うてぇ!


問答無用ですかい!

そうですか!

人が好きなのにこんなことするんだねっ!


銃撃を躱し近くの物陰に隠れ迫りくる一斉射撃に備える


ー今回はコカラギからの助けは当てにならないし

少し乱暴するしかないかな!ー



コード3!

追加コード入力「スノー」


コードを唱えると

雪の頭上のみに豪雪が降り注ぎ瞬く間に雪の身体を覆った



こ、こいつ!

イモータルだ!

全員距離を取り対象に鉛球を浴びせろ!


銃弾が雪の塊に風穴を開け10秒も立たずに雪の塊は崩れ

雪の破片が辺りに散らばり 「雪」の姿は何処にも無かった


弾数確認しとけ!

これで終わりだと思うな!


あーあー崩しちゃダメよ!

まだ、作ってる途中なのに


こ、こいついつの間に!?


振り返ると純白の怪物が大きな雪玉をへその位置で両手で持ち佇んでいた。


な、なんだその姿は!?


その反応を見る限り

上の人間は私たちの事の全ては知らない若しくは教えなかったみたいね

何も知らないままなのも可哀そうだし教えてあげる


私たちイモータルはそれぞれに割り振られたコードを呼ぶと体が変化する

多分君たちが思っていた姿はこれでしょ?


持っていた雪を自身の横へ放り投げ、空中で形を変え

4日前に雪が変化した異形になり着地した


その姿が人間たちが思い描き形にした姿

身体能力を常人の100倍

自己治癒力の増強

ここまでが君たちが知っている範囲


この姿は私たちが戦争で進化した結果

それぞれの個性、趣味、嗜好が能力に反映され

裸の私たちは【服】を手に入れた

私の【服】は【雪】空気中の水分を凍らせ雪へ変換してそれを武器にする


びっくりさせる・・・

所詮は雪遊びの能力だ

総員撃て!


人間って愚かね

決起しろ!

スノーマーセリナーズ


雪が号令を掛けると

周りの瓦礫の陰から赤いベレー帽を被った雪だるまがのそのそと這い上がり

国家警備員達に白い銃を向けていた


っ~!!!


20年前の戦争はどうやって終結したか聞いてる?


首を横に振るしかなかった

油断はしていなかった

敵を見て状況判断を正確にこなして居た

だが、この状況は規格外だった

感情のない目で自分たちに照準を向ける

50以上の銃

目の前にその雪だるまの軍勢を引き連れる異形

勝敗は決まってしまった

示し合わせるわけでもなく全員が銃を下ろしていた。


どうやっておわらせた?

お前は何者なんだ?!


渾身の虚勢心で雪に問う

意外にも雪はその質問に答えた


ご想像の通り戦争は私のこの力で終わらせた

時期も丁度良かった。

操る雪が降ってくる季節だったからね

でも、報告には上げてない

この力や他の隊員の能力がバレたら

実験モルモットに逆戻りにされたくなかったし

何よりも私がこれ以上人を殺したくなかった、それだけの事


・・・ああ、私何者か?だったわね、

私は元イモータルマーセリナーズ隊

総隊長

コード:3

柴乃山雪って言うの


そうか・・・相手が悪かったワケだ

イモータルの中で強い個体に会ったのが運の尽きだったわけか


ん?

私は72の中で中の下くらいの強さよ?

ナンバーはあくまで製造番号で強さのランクではないわ

私が隊長を任せられたのは隊の半数が私の言う事を聞いてくれた

・・・ただけの事よ


俺たちをどうする気だ?


別に?貴方たちを殺すのは簡単だけど

でも、私は後味の悪い思いなんてしたくないのだから見逃してあげる

まだ天国に行くには若すぎる


だから今は退きなさい、年長者の言う事は尊重しなさい


わかった、大人しく退くが

お前はどう見ても20半ばくらいにしか見えんぞ?


イモータルは年を取りにくいのよ

実年齢は被検体になる前の年齢を足せば

50歳くらいよ


詐欺にもほどがあるな


え~?そんなに若く見える!?

いやー嬉しいわねぇ~


異形が目の前で小躍りをしている様を見せつけられる

国家警備員達だった






同時刻


arm'screate本社


この会社は義肢生産工場も兼ねており1日平均200の義肢が製造発送されている

その工場の資材搬入口近くの倉庫に身をひそめる青年がいた

少し小太りな青年は持ち込んだ菓子パンとジュースを交互に頬張り

胃に詰め込んでいた


「ナンバー60聞こえる?」


聞こえる


「本当にいいの?」


うん、僕が暴れてサイトさん達が被害者になれば

その後の措置も軽くなると思うし


「殺されることになっても?」


僕が決めたことだから

椿、後は頼むね


「こんな事になるんだったら別のどうでもいい子を配属しておけば良かった」


どうでもいい人なんて居ない癖に強がちゃって

この先の戦いの為にも【服】を持ってない僕が適任なんだ

もう始めるね


ガキッ


口元に付いたパン屑を拭き

無線を握りつぶし倉庫を後にした。





5分前


社長室



アポイントも取らずにすまないな社長


いえいえ、構いませんよ

私は急な来客でも断った事はありません

24時間いつでも来ていただいて構いませんよ

さぁどうぞ


コトッ


こりゃどうもご丁寧に・・・美味いな!?

店開けるぞ!


若いころはバリスタを目指してました

お口に合ってよかった

では御用を伺ってもいいですか?


コカラギにコーヒーを淹れたサイトは

コカラギの正面に腰掛け

朗らかに要件を伺う


そうだな、濁さず聞くが椿って女と繋がりが在るだろ?


お知合いですか?


ああ

あいつの事はどこまで知ってる?


そうですねどうでも良い事までなら知って居るつもりです。


どうでも良い事?


彼女が人間では無いことですね


あんたは化け物が平気なのか?

平気ですよ


いつからの付き合いなんだ?


それにこたえる前にあなたの事を教えて戴けませんか?


そうだったな

失礼した


サイトは意外に思った

この手合いの人間は横柄で自己中心的だと

だが、意外にも自分の非を謝罪した

自分の浅はかな価値観を恥じた


そうだな、20年前椿と俺は同じ人物の下に付き戦場は走り回った仲だった


だった?


ああ、俺と上官だった奴と一緒に今は人間社会を陥れる化け物を

確保、場合によっては処刑している


化け物専門の警察のようなものですか?


そんな大それたものじゃないさ

話を戻すぞ、椿は人を殺す事が好きになってしまってな

隊を解散させられた時、椿は暴走して上官に殺された


殺す事が好きに?

彼女のイメージではないですね

・・・殺されたのですか?


20年前にね

あんたと映っていた写真が撮られた3日前のことだ


そうだったんですね・・・

資金を寄こせと脅された事はありましたが

命の危険は感じませんでしたね


脅されてたのか?

証拠は?


このことに関しては会見を開こうと思い

関係資料を向こうのデスクに纏めてあります。

もしかして疑われてます?


あんたの話し方に椿に対する敵意を感じられないんだよな

本当は全面的に協力してたんじゃないのか?


いえ、いやいやですよ。

無理やり女性を押し付けられて

その人を眠らせ続けろと言われ、その現場を写真を撮られ脅されてました。


女?名前は?


名前は聞いてませんが椿はナンバー4と呼んでました。



なんだと!?

それはまだここにあるのか?


ええ、生産工場の地下3階です。

お知合いですか?


ああ、そこへ案内してくれ


分かりました。

此方へどうぞ

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