さよなら初恋。虐げられた令嬢は偽りの恋から愛を得る
<ahref="https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/2240569/">【連載版】初恋にさよなら</a>
連載版始めました。
結末は変わりませんが天音の新天地での話が書かれています。
あの人も実はそこにいました。という話です。
評価6300超え初めてで震えております。
ブクマも3桁………ッ…………。
感想もすごく興味深いので世界が広がりますね!ありがたいです!
感謝。週間ランキング17位!
殴り書きしたもので誤字脱字報告大変助かります。
この話を軸に長編書きたいのですが、ヒロイン強強でヒーローがいつもヒーロー出来ないのでヒーローを補強しなきゃなんです。
難航するだろうな。
か弱い女の子かけない病気。
カッコイイ男書けない病気なのに恋愛小説。
頑張ってます。
好きな場面ありましたら感想お待ちしています。
「桔梗院 天音嬢。
本日を以て貴女との『婚約関係』は破棄された。
私はこの真の桔梗院家の姫華音嬢と新たに婚約する。
よって。
この祭事の『舞姫』も退任しろ。そなたには荷が重い」
「………………………」
そう名指しされた桔梗院男爵家長女天音は言葉を失った。
彼女の周りの神官や巫女たち、親族一同唖然としている。
まさかこの目が回るほどの忙しい催事直前の一族の禊を清め払う儀式の前にこんな茶番が始まるとは思わなかったのだから。
今日はこれから一族をあげて執り行う『大舞姫祭』の準備の真っ只中なのだ。
国の絶対君主『天子様』に舞を奉納する日。
各地にある数多の神殿の中で桔梗院家神殿の奉納の舞が選ばれたのだ。
誉れ高い催事でありこの一ヶ月天音が心血を注いだ催事。
天音の研鑽と尽力が報われる晴レノ日なのだ。
それなのに、天音が一番大切にしている仕事を手伝いも敬いも研鑽もしてこなかった人達。
そんな人達がすでにこの催事を穢し始めているのだ。
この国『皇国』は八百万の神という土地に根付いた様々な神たちを信仰している『多神信仰』国家である。
そして他の国と類を見ないのが国の頂点に燦々と君臨する絶対君主で在らせられる『天子様』は〝八百万の神の頂点を治める女神様の子孫〟だということ。
そのためこの国は『神殿』の力が強く民は『神民』と呼ばれる。
その神殿の催事を取仕切るのが国から認められた神官でありその最高位が『舞姫』なのだ。
八百万の神を慰め清め禊払う。
神民の心の拠り所になり祝詞で字も読めない貧民にも神の恩恵を慈悲を贈る。
そんな誇り高い『舞姫』の役職を彼等は手渡せと愚かにも発言しているのだ。
もう婚約破棄の衝撃よりも悲しみよりもこの誇りを穢されたことに天音は愕然とした。
言葉は出ず、出るのは自嘲めいたため息のみ。
催事のために被っているヴェールの中で隠れている天音の眉間はヒクリと戦慄いていた。
今までここまでの怒りを感じたことがあるだろうか。
(なんでこの二人は日を改めるということもできないんだろうか。
何も今日この日じゃなくても良いのに)
天音は呆れはしても驚きはなかった。
予想はしていたこととはいえこの状況にため息をつく。
想定もしていた。
この状況はあの浅はかな妹なら必然だったのだから。
だけど改めて対峙してみるとあまりに馬鹿らしくて二人を見ると頭痛がしたから眉間を押さえた。
その様に彼女はいたくお気に召したらしい。
目の前にいる義理の妹華音は一見すると困り顔でこちらを窺っている。
烏の濡れ羽のような艷やかな髪を惜しみなく風に晒している。
これから姉が祭事のために神事というのにその姉より艶やかな衣装を身に着けている。
自分こそ『舞姫』に相応しいといった顔だ。
確かに華やかで美しい。
だけど性根の悪さは隠しきれていない。
扇に隠された紅がさされた小さな口は愉快そうに歪んでいる。
だけどその大きな瞳を潤ませながらか細い声を出している。
隣にいる気弱そうな男に縋り付いている。
「ッ…………お姉様。ごめんなさいッ…………。
和家様がまさかお姉様ではなくわたくしを見初めるだなんて」
「華音………。僕の姫。君が謝ることはないんだ。
僕等のことは『運命』なんだ。
それを引き裂こうとすることのほうが罪だと思わないかい?」
鳶色のサラサラの髪を揺らめかせながら天音の『婚約者』徳島 和家はその美貌を惜しみなく甘くして華音を見下ろしている。華音を後ろから抱きしめている。
その甘い瞳を見たら否応なしに彼が『本気』なことはわかった。
ただその本気を発揮する場所を間違えている。
この人は実家の徳島家から『桔梗院家』への婿入りの打診兼当主補佐見習いとして来たのだ。
すると父が帝都に行って留守だと知ると見目だけは麗しい華音と意気投合。
本来の婚約者の天音が今日この祭事のためにあくせく働いているのを余所に乳繰り合っていたのだ。
天音はそこは目を瞑った。
貴族の家の中で姉妹がお手付きになることは良くある。
寧ろ忙しい姉に代わり『身体の関係』は妹が担ってくれるなら万々歳だとすら思った。
だから放っておいた。
それが最悪のタイミングで我が家の恥を晒す形になったのだ。
「お母様。このことは徳島の伯父様もお父様も勿論ご存知ですよね?」
「何が問題なの。
徳島家は『桔梗院家の姫との婚約』を打診されたのよ。
我が家の姫は華音よ。
貴女ではないのだから、被害者面はお止し。
その地味な装束で舞う貴女よりうちの可憐な華音のほうが『舞姫』に相応しいのよ。
貴女みたいな白子症の奇人がまともな花嫁になれるとでも?
今日は『天子様』が拝聴なさる我が神殿の『大催事』なのよ。
いくら舞が一番優れているからと。天子様のお目汚しになるでしょう。弁えなさい」
天音は『運命の二人』の後ろでほくそ笑みながら喚き散らす女を一瞥した。
彼女もこの場に相応しくない華美な装いだ。
何回彼女の夫が諌めても変わらない下品な装い。
彼女は『大陸』の貴族の出自だ。
あちらには神がいないらしく『祭り』と『神事』の区別が出来ないのだ。
この桔梗院家の後妻として入ってもう二桁の歳月なのに変わらない人だ。
妻としては正解なのだ。
当主はそんな彼女に惚れたのだから。
簡単には折れないし死ななそうな妻を望んだのだから。
早くに最初の妻を亡くした反動なのだろう。
愛する最初の妻と真逆な妻だ。
そんな彼女もこの場に相応しくない『運命の二人』の味方なのは確かだろう。
天音は背後に控えている一族の者や侍従一族と目を合わす。
青ざめている者賛同している者憤慨している者の三つ巴と言ったところか。
天音はため息をついた。
「当主のお父様がいない場。祭事がこれから執り行われる場ということはお分かりの上の告発ですね?」
「まあッ…………。いつまでも当主の父親の権威に縋るなんて。卑しい子ッ…………。
貴女を庇う優しいお父様には見せないようにこの場を設けたのよ?
これ以上の恥を晒されたくなかったら『舞姫』の役を降りなさい」
「…………。確かに。優しいお父様が聞いたら卒倒しそうですわね」
「大事にしたくないんだ。天音嬢。
何も君をこれ以上貶めようなど思っていない。
舞くらい良いじゃないか。今日は我が婚約者に譲ってくれないか」
天音の言葉が意図しなかったのか。
それか未だに動揺もせずのらりくらりな天音が予想外だったのか。
和家は少し動揺しているようだ。いや未だに彼等を冷ややかに見つめる小娘の瞳に臆している。
こんな大それたことをやらかした割に肝が据わっていない男である。その様子から今日のこの茶番は妹の発案なのがわかる。
(特に秀でた所はなくとも優しく大人しい。そんなアクのない無個性な所を婿としてお父様が見込んだのに)
「ちなみに。
『舞姫』は役職なのです。天子様から賜った地位。
それを譲ることは不可能なことはご存知?」
天音が粛々と述べる姿がお気に召さないらしい。
天音が『舞姫』をすぐ譲ると疑わなかったのか。
父が帝都に行き留守がちなのをいいことに家で天音は下女よりも待遇が悪かった。
そんな天音を使用人達も扱いに困っていた。
天音の不遇を嘆く者。実質女主人の奥方の意を組み冷遇するもの。そんな奥方に服從し虐げられた令嬢が今日初めて我を通すのだ。
彼等は怪訝そうである。
確かに天音は彼等の行く末などどうでも良かったから基本事なかれ主義であった。
「貴女が賜った地位は『桔梗院家の令嬢』だから。
貴女のようにお父様の血を受け継いでいない娘が偉そうに!」
「華音ッ…………。何もそこまで人前で明かすことはないじゃないか」
「不義の子が偉そうに天子様から賜った役職に付いているのよ?貴方もわたしのほうが相応しいと言ったじゃないの。
天子様が今日はみえているのよ?わたしが舞うべきなの」
「………なるほど。和家様。良く調べましたのね」
「和家様はわたくしのために調べてくださいましたのよ。偏に我が家の恥を天子様に知られないためよ」
(その中途半端な有能さをお支えしたかったのに。
それも愛する華音なために発揮した力。
その力はあるのに。何故もう少し思慮深くなれないのかしら。恋は盲目なのね)
妹がせせら笑う。
その場の一族の者の表情は強張った。
さっきまで天音に同情的だった者の一部も心変わりしたらしい。
(なるほど。それが切り札。
本当に恥に恥を上塗りするのが得意な方たちね)
天音は薄く笑った。
涙目の彼女付きの侍女達も青ざめている。
天音は深く息を吐く。
この不利な状況でも慕ってくれた数少ない侍女達には辛い思いはさせたくなかった。
そのために努力してきたのだけど。
(お父様。ごめんなさい。
もう少し庇い立てしたかったのに。この方達は一線を超えてしまったんだわ)
この人達も一族も。
今日この日を以て他人になるのだ。
「それが。桔梗院家と徳島家の総意でよろしいですね」
「ッ…………そうだ」
「………両人ご当主不在ですがよろしいですね?」
「ッ…………我等を子供扱いするか」
「わたくし達は『跡取り』。貴女よりも上の者の言うことに従いなさい」
華音が天音の横面を叩いた。
『運命の二人』は天音を見下ろすように糾弾した。
二人は何か怯えているようだ。
天音があまりに冷静過ぎるからだろう。
「確かに。『立場が上の者の言うこと』はこの国では絶対ですわね。
なら。わたくしは身を引きましょう」
天音は式典用のヴェールを外した。
目の前の和家は天音の素顔を初めて見たのだろう。
驚愕している。
妹から醜女だと聞かされ確かめもせず鵜呑みにしていたのだろう。
式典は『神を慰める儀式』。
『舞姫』は神に見初められないように日頃から家族以外には素顔を晒してはいけないのだ。
それらを勉強不足のものは知らず学ばず天音を気味悪がった使用人達も驚いている。
(帝都の使用人達のほうが学があったわね。
こんな些細な常識もわからないような質しか集まらない家門ならそれまでだったのだわ)
背後の桔梗院一族の者に振り返る。
彼等の中にも天音の素顔をしっかり視認したものは少ない。
「あれが………?醜女?
髪など白銀の美しさじゃないか………?
単純な………アルビノではないぞ?」
「あれでは『神が攫う』のを危惧するのは納得だ。こんな美貌を隠していたのか?」
「菫色の………瞳?」
「あの瞳はどこかで………?」
一族の中にチラホラ動揺の声が聞こえる中、天音は彼等にお辞儀をした。
その優雅さに皆が固まった。
『色なし』と言われた虐げられた令嬢の素顔のお披露目と相まって帝都式のお辞儀は大変目立ったらしい。
和家の息を飲む音がした。
彼の頬は赤らんでいる。
その様も華音は歯噛みしながら見上げていた。
天音は和家を見つめる。
今更和家から色よい反応が得られても嬉しくはなかった。
この祭事が終わり正式に婚約式をしたらお披露目するはずだったのだ。
彼も天音が婚約式まで顔を晒せないのを了承したと聞いていたのに。
彼はそれも待てずに華音に惚れ込んだ。
その時に諦めたのだ。
天音はこの状況になることは覚悟していたのだから悲しくもならなかった。
「お世話になりました皆様。ご機嫌よう。
桔梗院家と徳島家のさらなる発展をお祈りしております」
天音はお別れの挨拶をした。
最後にもう一度天音は和家を見上げた。
彼の鳶色のサラサラの髪は幼い頃と変わらず美しかった。
この国では珍しい色。
黒髪がほとんどの国民の中で珍しい鳶色の髪。
天音の『鳶色の王子』は妹のものになった。
(さようなら。わたしの初恋)
天音は精一杯微笑んだ後退室した。
背後から和家の静止の声が聞こえたが振り返らなかった。
その場でしたり顔なのは義理の妹と母だけであった。
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その後の催事は大荒れであった。
帝都から訪れた桔梗院家当主と天子様が催事を見守る中、華音が精一杯着飾り舞い出した。
天子様はこの国の最も貴き方だ。
その面前で舞えて華音は有頂天であった。
天子様は宮殿以外で尊顔を晒さない神秘の方なのだ。舞を奉納した時だけ近くでお声がけを赦される。
天音は何度も天子様にお近づきになって賛辞を賜っていた。背後で踊る下々の舞巫女の華音を差し置いて。
遠くから天子様の鋭い瞳が紫色に煌めいたのを見たのみである。
天音は天子様のご尊顔を知っている。
それだけで華音が天音を忌み嫌うには十分だった。
今回の天子様からの賛辞は華音が賜るのだ。
それを見つめ心待ちにしている母も婚約者の和家様も嬉しそうであった。
それはそれは華やかな舞だったのに天子の怒号で催事は中断したのだ。
華音は何故天子様がそこまでお怒りになるのか理由がわからなかった。
ただ天子様と共にいた父親が青ざめ頭を垂れた。
彼は天子様から何やらボソボソお言葉をいただいた後、鬼の形相で華音を殴り飛ばし天音を呼んだ。
でも探しても天音がいないことに益々顔色が土色になる。
天音は行方不明となっていた。
屋敷に帰ったものと思っていた一族の者は取り乱していた。
彼女は忽然と姿を消したのだ。
その事実に父は泣き崩れ天子様に縋りだした。
その光景に愕然とする。
次期天子様の『宰相』と噂されその地位を確実に登ってきたはずの桔梗院男爵が天子様に公衆の面前で縋るのだ。
父親の口から「これで桔梗院家は終わりだ」と漏れても華音にはまだその理由がわからないままだった。
母や婚約者の和家様も父に殴り飛ばされた。
その理由を説いても父は泣くばかりで口にしない。
ただうわ言のように「天音を探せ。傷一つ付いてたら承知しない」と侍従達に怒鳴り散らしていた。
(わたしが平手打ちしたことがバレたら叱られるのかしら)
華音はまだ呑気に自分の悪さだけがバレないことだけを考えていた。
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「何故桔梗院家の『面汚し』がこの式典に?」
「見て………。皺だらけのみすぼらしいドレス。
かつての美女の噂も宝石で上乗せだったのね?」
「ご存知?『桔梗院神殿』。『舞姫不在』でお取り潰しになったのよ?天子様が定めた最高位の神官なのに。
跡取りの令嬢は一介の『舞巫女』の試験にも受からないらしくて。『野良巫女』ですってよ?
最高位の試験なんて一生無理だろうって帝都神殿に見放されたらしいのよ?」
「あそこ。『お布施』でなんとか体面を繕っていた家門だものね?
男爵家にしては栄えていたのに。
田舎の勉強不足の貴族は『舞姫様』がどれだけ貴き役職かもわからず虐げてきたらしいのよ?」
「まあッ…………こわい。これだから田舎貴族は野蛮なのよ。
国で一人しかいらっしゃらない役職よ?
普通家門をあげて大切にしないかしら?」
「宰相にまでなれたはずの優秀な男爵がまさか家族に足を引っ張られるなんてね?」
「聞きましたか?隣のヒイズ国から『皇太子』がお祝いにいらっしゃるとか」
「深窓の『姫君』に婚約を打診に来るらしいぞ?」
「姫様もやっと18となられた。
麗しい尊顔を賜われるなんて楽しみですな?
王家は成人するまで国民に姿を晒さない。天子様に似た大層な美女だと聞く」
華音はシャンパンを煽りながら歯噛みする。
帝都の貴族達の視線は冷たいし聞えよがしに陰口が聞こえる。
隣の和家も草臥れた礼服でオドオドしている。
帝都の貴族達からの冷ややかな視線を浴び怖気づいているのだ。
しきりに「帰ろう。場違いだよ」と囁く彼を無視して華音は久しぶりのご馳走を貪っていた。
最近粗食しか食卓に並ばないのだから堪能したかった。
初めて帝都の晩餐会に呼ばれたのだ。
父親からも再三行くなと言われたが無視した。
壁際には父親がやはり草臥れた風貌で華音を睨んでいた。華音がなにかをやらかすと思っているらしい。
心外だ。
憧れの宮廷で粗相などしない。
過去天音が帝都の女学校時代のことを話すたびに憧れていたのだ。
そして嫉妬した。
学力不足で華音は帝都女学校に受からなかったから。
その足並みを揃える形で天音も自主退学させたのだ。
家の神殿で昼夜働かせた。
父がいない時は下女もさせた。あらゆる汚れ仕事をさせた。
それを文句一つ言わず姉は熟したのだ。
完璧過ぎてそれすら可愛げがなかった。
最後くらい傷付いた顔を見たかったのに。
姉が長年懸想していたのが和家様と知った時には有頂天だった。彼には『姉のものを横取りする』以外に価値はなくなってしまった。
見目は麗しく有能と聞いたのに。
家から勘当された元ボンボンほど使い物にならない。
今や不良債権だ。
(なんでお姉様が出ていった途端上手くいかないの?
お姉様ごときでもなせたのよ?
和家様大変な秀才と聞いていたのに。ちっとも商いが回らないし廃れていく一方じゃない)
華音は綺羅びやかな宮殿に赴けば気分が上向きになると期待した。それなのに周りの華やかさは益々華音の神経を逆なでして惨めになるのを認められないでいた。
天子様の怒号で失敗に終わった催事の後、父の帝都での誉れ高い役職は解かれた。
なんとも懐が狭い天子様だ。
なんでも父は『秘密裏の任務』に失敗したらしい。その『秘密裏の任務』は家族に明かした途端死罪となる。次期宰相を期待された父だからこそ任されたものを父は失敗したらしい。
華音の『舞姫乗っ取り』『天音の婚約を横取り』が拍車をかけたと責め立てられた。
天音が行方不明になったことへの八つ当たりだ。
天音こそ家出するなど淑女の面汚しだ。
天音こそ責をおうべきなのに。
失意の上で父は田舎の領地に隠居してしまった。
和家や家令が家の帳簿を漁り愕然としたのはここからだ。
今まで華音や母親が湯水のように使っていた金を天音が産み出していたことをあの日初めて知ったのだ。
父の帝都での給料の倍は天音が産み出していたのだ。
『舞姫』とは国家資格であり10歳でそれを拝命した天音は稀代の天才であったこと。
にわかに信じがたいが帝都での姉天音の評価は『國始まって以来の才女』らしい。大袈裟だ。誇張も甚だしい。
『桔梗院神殿』は天音が管理を任された公共機関であり桔梗院家にはなんの権利もないこと。
数多くある『神殿』の中でも帝都神殿に次ぐ信仰の対象が『舞姫天音』にあったこと。
神殿などただの箱物でしかなかったということ。
桔梗院家のものですらなかったのだ。
現実天音が去った後国から派遣されていた神殿の者は皆去り。
神格化を失った桔梗院神殿は『野良神殿』として浮浪者のたまり場となり廃れた。
もちろんお布施など集まらない。
ただ天音が書いていただけの祈祷の札を華音が書いてもそれすら売れないのだ。
華音がどんなに真似をし邪を祓う舞を踊っても寄ってくるのは華音の美貌と身体欲しさの荒くれ者ばかり。
華音は『野良舞巫女』として服を開けて舞えと野次られるという屈辱を味わった。
姉天音が舞っていた時の『崇める瞳』はどこにもなかった。
信者は皆、他の神殿に盗られてしまったのだ。
最近ヒイズ国との境の領地に新たな神殿が出来てそこは繁盛しているらしい。
國に八百万ある神殿のなかでも格別のご利益らしい。
何百年もの歴史がある桔梗院神殿が新参者の神殿にすら負けるのだ。世も末である。
父は何回も説明したと怒鳴った。
天音を家族として敬い大事にするように再三懇願したと。
そして天音が父の子ではないことも知っていたと。
「何故天音の出生の秘密を言わなかったのか」と責める母を平手打ちし父は項垂れるだけだった。
天音が十になった時に前妻との忘れ形見と紹介されたのみ。後妻の母の苦しみは計り知れなかった。
そんな失意の母は何故かその後大陸からのスパイ容疑で幽閉された。
母の昔の恋人が大陸の高官で未だに便りを交わしていたらしいのだ。
落ちぶれた父を見限りその高官の所に逃げようとした母は帝都の警備局に捕らえられた。
「王命は家族にも明かせなかった」
「後一年天音を慈しめばよかっただけなのに」
「婚約破棄だけならなんとかなったのに。ここまでバカ揃いだったとは」
父は母を庇いもせず呟くだけだった。
桔梗院家の親族から今度は華音が『不義の子』ではないかと噂され出した。
雇いきれなくなった使用人もどんどん屋敷を去っていく。まさに急転直下とはこのことだ。
あれから徳島家を勘当された和家様が転がり込んできた。
今なんとか新しい商いを起こそうと躍起になっている。
天音が手掛けていた呉服店を転がそうにも上手くいかず。
天音が取引きしていた商人が和家や華音と商談するたびに、
一様に落胆して屋敷を去っていった。
天音は下女同然の暮らしの中独学で財を成していた。その財も整理されていて底をつくのは時間の問題だった。
天音が秘密裏に持ち出したらしいのだ。
まさか母の嫌がらせで学校にも行けていない天音がそんな才を持っていたことに商家の坊っちゃんの和家様すら愕然としていた。
彼はかつて帝都大学に通っていたのだ。
その彼すら理解出来ない企画書や決済書が書斎から出てきた時には和家様の視線が華音に突き刺さった。
和家様は華音が述べた『低能』の『醜女』の姉を信じたのだ。その視線は華音を言外に責めていた。
侍従達に「何故天音嬢と語り合わなかったのだろうか。あんなに優秀で美貌を誇る婚約者を捨てるなんて」と愚痴を言っているのを華音は侍女から聞かされた。
和家様は華音を捨てられないのだ。
華音の腹には和家の子がいるのだから。
(まさか。従順な天音お姉様が出ていくなんて。
身の回りの世話をする侍女も減ってお古の礼服を着なきゃいけないなんて。
あの恥さらし。どこにいったのかしら。
下女は下女らしく家に奉仕すれば良いものを)
華音の美貌も影を潜めていた。
艷やかだった黒髪は梳く侍女がいないためゴワゴワだし着飾る装飾品は売り払ってしまったのだから。着るドレスは薄汚れた皺が取れていないもの。
(天子様に直談判しよう。
勝手に家を飛び出したのはお姉様だもの。『舞姫』を退任したのはお姉様の意思。お父様に非はないとわたしが泣いて訴えたらお優しい天子様は赦してくださるわ)
今回の『姫様の生誕祭』は格好のチャンスなのだ。
華音は明るい未来にほくそ笑んだ。
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しばらくして華音の瞳は信じられないものを捉えた。
会場に見知った面々がいたのだ。出で立ちは立派で最初は気付かなかった。
彼女達は貴族の子爵身分でありながら男爵家の桔梗院家の召使いになった『没落貴族』だ。本来ならの華音よりも高位のはずなのだけど。
華音の母は彼等を平民出身の召使いよりも下に見ていた。
母の国では『没落』は賤民より下らしいのだ。
そのはずなのに華音よりも遥かに小綺麗な衣装を身に纏って観覧していたのだ。彼女達はかつて桔梗院家を解雇された侍女達や侍従達だった。
侍従など貴族でもない者まで品の良い礼服を着ている。
隣の元大商人の和家よりも良い生地である。
「何故ッ…………あんた達が」
「ご機嫌よう。華音様」
返事をしたのは天音の筆頭侍女だった少女だ。
華音がいたぶっても辞めなかったのに天音が行方不明になった途端自主離職したのだ。
あまりに潔く怪しいとは思ったのだ。
華音の頬はひくりとした。近くで見れば見るほど装いは洗練されている。
(いつから子爵は金持ちになったの?)
この侍女達の家門など田舎貴族の末端だ。それなのにこの余裕も装いも『満たされた者』のそれである。
「ッ…………」
「『何故』と言いたそうですね?」
元侍女は冷ややかに華音を見下ろしながら囁いた。
彼女達はその働きと献身に見合った主を新しく得たのだという。
その女主人は最近ヒイズ国の境の荒れた土地をわずか一年で立て直し新たな神殿も天子様から賜った女公爵だと。
(女公爵………?確か王籍を離脱した時の老婦人の冠する爵位。はは………ん。こいつら。気の良いババアを誑し込んだんだわ。子無しと見たわ)
華音もその女主人に会わせてほしいと恥を忍んで切り出すと彼女達はふわりと微笑んだ。
「ええ。ご主人様は貴女様のことを気にかけておりましたよ?本日お話しする機会が設けられるはずですわ」
華音は高揚した。
その女主人は華音の今の状況を嘆いているらしい。
(運が回ってきたわ………。そうよ。今まで思い通りにならなかったことはないのだもの)
背後で歓声がした。
天子様とお姫様が登壇されたのだ。
宮殿の大階段を厳かに二人は降りてきた。
大きな王冠を被るのは天子様だろう。
晴レノ日にいつも被る分厚いヴェールはない。
白銀の髪に紫の瞳の美丈夫であった。
あまりの美しさと神々しさに参列した貴族達は目を細める。
『王室は神の子であり目を合わすと目が潰れる』と言われるくらいである。
華音は臆せず見上げた。
周りの貴族は頭を垂れている。
天子様の隣の姫様と目が合った。
彼女も天子様と同じ白銀の豊かな髪を靡かせていて。
本日の主役らしく色とりどりの装飾品を身に着けていた。
彼女の菫色の瞳は煌めいている。
王室お付きの家令が声高だかに宣言する。
華音も和家も身体の震えが止まらなかった。
壁際にいた父などそんな彼等を冷ややかに見つめている。彼は達観しているようだ。こうなることはわかっていたのだろう。
「皇国天子様並びに皇国第一皇女天音様。ご登壇です」
「いやあッ…………。なんであんたがそこに?!」
華音が半狂乱になるさまを天音は見下ろしていた。
相変わらずその冷ややかな瞳は華音を見下していたのだ。
ただそこにいるのはいつも虐げていた姉ではなかった。
贅の限りを尽くしたドレス。
そのひだの多さは権威の証だ。
良く見たくもないのにその生地の滑らかさも刺繍も見たこともないほどの一級品。
彼女が輝いて見えるのは手入れの行き届いた艷やかな肌や髪も勿論であったが。
彼女が身につけている装飾品の純粋な光が反射している。
全身に夜空の星を纏ったかのような煌きだった。
あの汚く埃にまみれた下女の姿の姉はいない。
儀式の時に『品良く』『清潔に』と無意味なことに尽力していた地味な白装束の姉もいない。
彼女は正しく『皇女天音』。
この国で一番貴い出で立ちで華音を見下ろしていたのだ。
その瞳が『憐れんでいた』。
それで華音は正気をなくした。
下に見ていた人間から『憐れみ』を貰ったのだ。
華音があまりに罵詈雑言を並べ立てるから『不敬罪』で近衛兵に引っ立てられていく。
「いやッ…………。なにかの間違いよッ…………。
天子様ッ…………。貴方様は騙されておりますッ…………」
「なんなんだ。あの野ネズミは」
皇女天音は少し微笑んだ。
父の天子が怒るのを宥めながら小首を傾げた。
その仕草も美しく華音の神経を逆なでにした。
「あら………。一介の男爵令嬢が発言するなんて。
この国では『立場が上の者の言うこと』は絶対ですわね。
お父様。和家様。異論はありまして?」
「ございません」
「天音………様?貴女様が親父の言った『桔梗院家が守る姫様』なのですか?」
和家は妻が引っ立てられていくのも構わず呟いた。
家令が彼を睨みながらため息をひとつ。
和家の発言すら不敬罪に問えると新たな近衛兵に指示を出しだしたのを皇女天音は制止した。
そして悲しみを称えた瞳で和家を見つめた。
「皇女は下々に下り修業するのが習わしです。
18歳までは『神の子』ではなく自由が約束されます。
その期間皇女は身分を明かせませんの。
貴方のような平民の商人との婚姻も許される身分でしたの。
和家様。残念ですわ」
「天音様ッ…………お赦しをッ…………。何卒今一度機会を」
天音は首を振る。
泣きそうになるのを耐えた。
彼が欲するのは今輝いている『皇女の天音』だ。
男爵令嬢だったみすぼらしい虐げられた天音ではない。
それは天音が望まなかった羨望の瞳と欲に塗れていた。
「さようなら和家様。お元気で」
(お慕いしてました。さよなら初恋)
皇女天音は天子である本当の父に伴われて奥の貴賓の間に進む。
これからは高位の貴族しか立ち入れない祝の場である。
大きな厳かな扉は天音と和家、桔梗院家の父との身分差を断絶するかのように閉じられた。
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「ひっッ…………ぐ」
「馬鹿だな。お前本当に男見る目がないな」
「ひッ…………ひッ…………ううッ…………」
「何が『初恋の人射止めてきます』だ。
国内で珍しい鳶色の髪の商人の子くらいしかわからなかったのに。
相手も覚えていないような初恋にお前本気になって。諦めろ諦めろ」
「んぐッ…………ッ…………ッ…………ッ…………」
「不細工に泣くな………。泣き虫なのに。
天音よ。そんなに初恋のために努力して身を粉にしたんだ。辛かったろう」
「んんッ…………。お父様は優しかったッ…………」
「嫁と娘を御せないようじゃな………。あれの有能さも頭打ちだったのだろう。お前もみすみす耐えたのが悪い。
だからつけあがるんだ」
「………頑張れば。家族になれると思ったの。
だってッ…………。
皇家に助けを求めた瞬間わたしは『皇女』に戻されてしまう。
辛くともわたしが解決しなければならなかったのよ。
後妻様のストレスも計り知れなかったわ。
もう少し。もう少しで………。和家様のお嫁さんになれたのにッ…………んッ…………うわあ…………ッ…………。
でも彼は変わってしまったの。
その彼に幻滅した自分も赦せなかったのよ………。
本当に………愛していたなら。彼を許せたはずよ。
わたしはなんて薄情なのかしら………。」
「おひいさま」
「おひいさまは頑張りましたわ?」
「お前も下らん努力をした。
どうせ婚姻出来ないとわかった時点でこちらに連絡しろ。
一丁前に行方くらまして新たな領地と神殿開拓しやがって」
「どの面下げて帰れますのッ…………。お父様に顔向け出来ませんでしたのッ…………」
「あほらし。………………心配したんだ。しばらく外出禁止な」
国民から麗しの天子様と崇められる彼もただの人の親である。公の場でないとなんとも口の悪い豪快な親父である。
見目麗しく手腕もあるから貴族からの反発もない。
この天子の世は平和であった。
天音が幼少期から英才教育される『暗殺避け』の処世術にかかれば継母と妹の嫌がらせなどおままごとだったのだ。
毒の知識もないから大した毒も盛られず。
熱湯をかけられたり折檻などは神官の治癒もあり事なきを終えた。
それも男爵が気付かなかった要因にもなったのだけど。
本来なら天子の子を蔑ろにした責は『一族郎党皆殺し』なのだが。
天音を思い天子は帝都との交流も支援も商いもなしで収めた。
実質社交界から締め出された貴族など平民より苦難が伴う。
だが命があり家門がお取り潰しにならなかっただけ情け深い。そう巷では噂されている。
(死ぬよりも辛いことはあるからな。うちの娘泣かせて簡単に苦しみが終わってたまるか。逆恨みしたら殺すのみだからな)
(死ななければいつだってやり直せるもの。
真実の愛をどうか貫いてくださいませ。和家様)
親子で思うことはかなり違うが桔梗院家の『運命の二人』は捨て置かれた。
貴賓の間の貴族達はそれこそ王室縁のものばかりである。
やっと王籍に帰ってきたのも束の間。これから政略結婚をさせられる姫を囲み慰める。
「お父様?無理よ。
わたくし宰相一家ですら籠絡も出来ません無能よ。
あちらの国の皇太子様を支えられないわ………?
政治利用も無理ですわ?傷物。
かの国の名誉のためにも廃籍してくださりませんか?
ヒイズ國の大使にお断りは出来ませんの?」
「ならん。姫は自由を勝ち取れなかったのだ。諦めろ」
「ッ…………女公爵の道は?わたしは領地で頑張りましたの。
精一杯国のために尽くしますわ………?
殿方は懲り懲りですのッ…………」
「わがままは聴かん。………………お前のためだ。
ほら皇太子直々にお目見えだぞ?」
「ッ…………急すぎますわ?どうしましょう………」
天音は情けなく泣いて赤らんだ顔のまま入室してきた『ヒイズ國皇太子一行』を出迎えた。
頭を垂れて待機する。
父の天子が大使と挨拶し皇太子とも会話を交わす。
「ヒイズ國第三王子カズール殿下だ。
この若さで皇太子の座を勝ち得た鬼才だぞ」
「美しき妖精のような姫君。天音様。面をあげてくださいませんか?」
思いの外優しい声色にホッとして天音は赤らんだ顔のまま面をあげた。
彼は美しい鳶色のくせ毛の王子だった。
瞳まで鳶色である。赤みのある茶色。
なんとも優しく純粋なその眼差しに身に覚えがあった。
「かず………君?」
「あんちゃんッ…………。やっと迎えに来たよ。
ごめん。君が辛い時に海の向こうだった僕を赦して」
麗しの隣国の王子は天音の前に跪きドレスの裾に口付けた。
それは『愛の服従』の証であった。
それを見守る貴族の乙女から貴婦人から甘くため息をつく。
最上級の求婚である。
天音の記憶の中の『かず君』は宮殿にお忍びで訪れた大商人の子だった。
勉強が嫌で泣く天音を諌め励まし約束したのだ。
お互いに努力と研鑽をつづけよう。
『大人になったら結婚しよう』と。
「君はいつも泣いている。
僕は強くなったよ。泣き虫の君を守れるくらいに。
君の涙は嬉し涙しか流させないんだ。
あんちゃん。愛しているよ。お嫁さんになって」
「ふえッ…………?」
天音は赤らんで悲鳴を上げた。
口は戦慄き父を見る。
彼はしたり顔でニヤニヤしている。
「お前がなかなか初恋の人の話をしないから探すのが難航した。
まったく………。まさか隣国の王子がお忍びで宮殿の花畑に侵入していたなんてな?」
「その節は………。父が無理を言いまして」
「良い良い。あの『和家』よりは遥かによい婿だからな」
「わッ…………え?ちょ………?」
「可愛らしい………。戸惑って赤らんでいるね?
あんちゃん。僕と違う男と間違えたんだって?酷いな………?僕は君一筋だったんだよ?
妖精さんだと思ってすぐお姫様だと気づかなかったんだけど。すぐ父に直談判したんだ。
そしたら『皇太子になってから物申せ』と言われたんだ。
僕………頑張ったんだよ?褒めてくれないのかい?」
キラキラ輝く皇太子カズールは放心する天音を覗き込む。
鳶色の髪はよく見ると煌めく金褐色も混じっていた。
『かずくんの髪は鳶色の他にキラキラの色があるね?』
(幼い時の記憶って当てにならないッ…………。
サラサラストレートじゃないッ…………。
ふわふわの綿菓子のような美少年だったじゃない?!
ひッ…………。麗しくて直視出来ないッ…………)
天音の身体は戦慄いた。
口が戦慄いている間にどんどん距離を詰められている。
「殿下。うちの姫は『殿方は懲り懲り』だそうだ」
「傷心の天音様に是非とも我が国で静養していただきたい。
あの『野ネズミ』と同じ空気は身体に毒だ」
「お?小童。一丁前に攫う気か?」
カズール皇太子は少年のような笑顔で微笑んだ。
その笑顔は幼き日の『かず君』そのままの笑顔だった。
「あんちゃん攫いますよ?」
「かず君………いいの?こんな………?わたくし傷物………」
カズール皇太子はまた笑う。
天音を抱き上げおでこを擦り合わせた。
それは幼き日に二人で笑い合いしたものと同じだった。
違うのは彼の瞳が蜂蜜のように蕩けていること。
「君が蟻ん子になっても迎えると決めていたんだよ?」
「ッ…………かず君………。お嫁さんにしてえ………」
「ああッ…………。僕の愛しいお嫁さんになって」
天音は初めて嬉し泣きをした。
カズール皇太子も歓喜のあまり頬を高揚させた。
初恋は愛に変わったのだ。
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