79 1592年10月16日 茶々と蘭丸&万暦帝
サブタイトルの形式を変えます。最初に第何話、次に年号、登場人物とします。
16世紀の銀の道
[精神科医としての考察]
淀君の肖像画が遺されている。精神科医の立場から言わせてもらうと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)でまず間違いない。
原因は戦争に伴うストレスによる心理的障害を発症。これは「シェルショック」と命名されている。
そして鶴松と秀頼誕生の謎も、彼女の肖像画と、その後の(行動)が物語って余りある。(行動)とは情動麻痺による回避行動であり、合理的な感情や思考が失われている。
彼女はドラマでは気丈な女帝を演じるが、その実は(滅びの宴)にしか身を置けない(何もできない女性)だったかも知れない。
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しかるに本作品は転移小説である。せめて異世界に転生したなら、史実の淀君ではなく、戦国の美妃の茶々として、過去にも未来にも囚われない自由奔放で幸福な人生を歩んで欲しい。
[玄界灘に捧ぐ・魅せられて]
1592年10月16日 午後3時30分 茶々はレースのカーテンを身体に巻き付け踊っている。茶々が両手を広げるとカーテンが孔雀の羽のように拡がり、玄界灘から降り注ぐ白波の反射光に透かされ、茶々の美しいシルエットが逆光に浮かび上がる。
森蘭丸:「茶々様、手伝ってください。カーテンのそっちの端を引っ張ってくださいよ。」
茶々:「なかなか、面倒な物よのう。このタッセルというのはカーテンの折目の何処に入れれば良いのじゃ。」
森蘭丸:「簡単に引き千切れる訳ないじゃないですか。カーテンの襞々の真ん中に差し込んで下さい。」
茶々:「襞々の真ん中の穴にズッポシ挿入・・なんか・いかがわしいのう。」
森蘭丸:「変な尾鰭付けないでください。」
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茶々:「ところで蘭丸、昨日の毛利輝元殿の借財の連座であるが、細川忠興殿では駄目か。」
森蘭丸:「なんですかいきなり。仕事の話ですか。それなら脚を閉じてから言ってください。」
茶々:「仕方ないであろう。この方が落ちくのじゃ。」
茶々は全裸で股間を開いて座っている。無論、女陰は蘭丸に向いている。それが茶々と蘭丸にとって普通になった。しかし仕事の話の時は別である。茶々は足を閉じて正座した。これも新鮮で良い。
茶々:「連座の件であるが、徳川家康が嫌がっているそうな。」
森蘭丸:「随分、情報が早いですね。毛利輝元殿と細川忠興殿は連座の相子判をしてます。秀次様が了解なさるはずが無いでしょう。」
森蘭丸は先日の料亭「花菱」で茶々が徳川家康を誘惑したのは知っているが、それ以降は入院していたので知らない。故に茶々と徳川家康との密会も知らないし疑ってもいない。茶々の素行など疑ったら際限がない。
それに茶々の誘惑癖や露出癖は日常茶飯事である。ただし今まで大事に至った事が無いから不思議である。誘惑と露出が茶々の趣味である。かといって茶々は恥知らずでは無い。
むしろ恥ずかしがる事を楽しんでいる。そうゆう性癖であるが人それぞれである。
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[遼東半島旅順・在日米軍基地]
1592年10月16日 午後4時00分 (北京時間)
万暦帝は基地の宿舎のVIPルームにいる。
張敬修:「万暦帝様、紫禁城は大丈夫ですか?たまには宮中に顔を出さないと廃帝になりますぞ。」
張敬修は1582年に死んだ張居正の長男で1583年に自殺しているが、移転世界では健在にて、万暦帝直属の張居正特務班の長にて当時40歳である。
万暦帝:「大丈夫じゃ、あの者共には、メキシコ銀と石見の銀を大量に貸し付けておる。返す当てなどない。予の言い成りじゃ。」
張敬修:「それでは帝位より、お命の方が危う御座います。」
※メキシコ銀と石見の銀については後述する。
万暦帝:「日本軍は難儀しておるのう。加藤清正が女真族のヌルハチと一戦交えたとはな。ヌルハチ1万の軍に10万の明軍が挑もうとも勝てぬのにな。あのような戦をするとは愚かな事じゃ。」
張敬修:「明軍が平壌の小西行長らに年明けに総攻撃をかけます。」
万暦帝:「勝てるかのう?、日本軍には、我がマイニラとの貿易によって得た多量の石見銀を在日米軍を通じて貸し付けている。負ければ全てが無駄になる。」
張敬修:「明国側の和平工作が策略だと、日本側にもたらされれば良いのですが、数々の欺瞞情報が流れておりますゆえ儘なりません。
ましてや万暦帝の名で小西行長に知らせても信じませんし、その事が紫禁城に知られれば、帝のお命は無き物となりまする。」
万暦帝:「在日米軍はどちらに動いておる。」
張敬修:「(現代)日本政府の歴史不介入政策により、完全に中立です。在日米軍は日本政府の意向には逆らえません。」
万暦帝:「そうであるか、我には在日米軍が(現代)日本を牛耳っているように思えるが。」
張敬修:「在日米軍は(現代)日本の支援がなくなれば、やがて鉄の塊となり動く事さえ儘なりません。」
※何という事であろう。一体全体、どの国の誰と誰が戦っているのだろうか。
※万暦帝vs紫禁城
※明軍vs女真族vs日本軍の三つ巴
※イスパニアvsアジア諸国
※そして16世紀人類vs梅毒・痘瘡の熾烈な争いが繰り広げられていた。鉄、火薬、銀、石油を巡る人類の争奪戦も、巨大な死の尖兵=梅毒と疫病との戦いの一コマに過ぎなかった。
(16世紀の銀)
石見銀は、生糸や絹織物などの代価として中国に流れ込んだ。また、イスパニアには硝石の支払いに当てられた。
新大陸からイスパニアにもたらされメキシコ銀は生糸や絹織物や茶の代金として明に流れ込んだ。
明・清帝国は火薬の産地であり、イスパニア経由の硝石をさほど必要としない。
すなわち16世紀から19世紀にかけて中国大陸には多量の銀が集積された。新たな悲劇の始まりだが先の話である。