撫順フーシュンと鞍山アンシャン
在日米軍により遼東半島の租借が認められた。歴史になぞらえて(遼東半島租借)と言われたが、かなり強引な米軍の遣り方を揶揄したものでもある。
実際には炭鉱と鉄鉱山と労働力を押えたに過ぎない。炭鉱は撫順、鉄鉱山は鞍山、そして労働力は女真族である。
さらには遼河油田の開発、遼河平野の大穀倉地帯の発展へとつながる。
18世紀に始まる列強による植民地争奪戦は領土の囲い込みと思われがちだが、実際は資源と労働力の搾取が目的である。
戦前の日本のように、鉄道などのインフラ整備をして当該地の民力を向上させ、税収を得るなど、まどろっこしい遣り方は狩猟民族である欧米人、特に人類史に残る悪行:アヘン戦争さえ起こした英米国人の脳裏にはない。
渤海の港から鞍山鉄鉱山まで100キロ、撫順炭鉱までさらに150キロある。鉄道の新設も考えられたが、まずは鉄材が足らない。しかも当時の鉄は高価である。1キロの鉄道を作るため鋼材だけで30億円かかる。
卵が先か、鶏が先か?の話のようだが。鉄の現地生産が出来れば価格は下がるが、それには鉄道がいる。
それよりも現代日本が鉄鉱石を欲している。鉄を何に使うかは問題ではない。鉄を作る現代日本の産業の存続が最優先なのだ。
渤海東端の営口から鞍山に向けての街道を米軍の軍用ジープが走る。
米軍士官A:「この街道なら 鉄の積み出しに十分だな。」
米軍士官B:「今の時期なら道も乾燥していて 車輪もハマりにくいですね。」
米軍士官A:「ところで 女真族の方はどうかね 鉄の採掘や積み出しをやってくれそうか?」
米軍士官B:「はい それは大丈夫だと思います。現在、山海関経由で大量の穀物が荷馬車で運ばれております。」
米軍士官A:「明国は飢饉だというのに有るところに有るもんだな。小麦はあるかね。」
米軍士官B:「美味いパンになる小麦かは期待できません。しかし米は大量にあります。歴史に残る日常的な飢饉というのは中国東北部の方で中国本土には影響はありません。」
女真族の住む中国東北部は慢性的な飢饉に苛まれていた。これは寒冷地での農業の仕方が判らない事にもよる。中国中原の農業技術では如何ともしがたい。
この後、在日米軍と日本政府により、寒冷地で育つ小麦と馬鈴薯栽培を指導された。半世紀後、女真族は飢餓による滅亡の淵から脱し、騎馬民族の頂点に駆け上がり、さらに中原に新国家を樹立する事になる。
彼ら女真族の労働力は凄まじい物があった。鉄鉱石や石炭を満載した荷馬車が鋪装のない土の道を疾走する。