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文禄の役 1 太祖ヌルハチ

どうにも文禄の役の時系列が判らない。天正20年=文禄1年なのだが、年末年始に改元しないでほしい。

挿絵(By みてみん)


文禄の役 直前 1592年


天正20年4月12日午前8時、加藤清正・小西行長らは700艘の大小軍船で対馬・大浦を出発し、午後2時過ぎに釜山に上陸した。

文禄の役と呼ばれる16世紀の朝鮮出兵であるが、改元が12月8日なので天正・文禄・慶長の役と呼ぶべきだが(文禄の役)とする。なお、和暦・西暦・ユリウス暦・グレゴリオ暦についても追求しない。


史実では文禄2年1月、明軍が平壌の小西行長を破り以後一進一退の攻防となるが、移転世界では明軍の参戦は未だに無い。遼東半島を勢力圏とする在日米機動部隊が盾となっているからだ。


なれど歴史の歯車は違った経路で辻褄を合わせる。1592年7月、加藤清正と女真族が戦った(オランカイ侵攻)であるが移転世界では(オランカイ会戦)と呼ばれる。


※オランカイ侵攻がWikipedia等では1593年7月となっているが、かなり辻褄が合わない。釜山上陸後1年4ケ月

というのも変なので、本小説ではオランカイ侵攻は天正20年7月、開戦から4ヶ月後とする。


1593年、史実では女真族同士のナリムブルとヌルハチの戦いが続いていた。

だが、移転世界では秀吉の侵攻は朝鮮半島全土を蹂躙し満州に戦線を拡大していたのである。この侵攻に対して明の李成梁(りせいりょう)を仲介とした全満州合作が成立した。

国民党と共産党の国共合作に先立つ330年前の抗日戦線である。


加藤清正が朝鮮の国境を越えて満州へと侵攻し、女真族の城を攻撃した。城は直ぐに落ちたが報復攻撃に悩まされた。

更にさして得るもの無き寒村ばかりであり、留まる理由も無いので撤退する事となった。


加藤清正:「なんとも貧しき土地よのう。7月というのに寒い。」


飯田直景:「殿、かような北方まで如何(いか)にして来られた?」


加藤清正:「知らぬわ!敵が()らぬゆえ攻め上がったまでの事じゃ。」


加藤清正軍が帰路、朝鮮と満州の国境の豆満江に差し掛かった時に異変に気付いた。増水しており渡河する場所が見当たらない。さらに小舟も見当たらず、オランカイ侵攻に協力的だった朝鮮の民もいつの間にかいなくなっていた。


加藤清正:「これは何とした事か?」


飯田直景:「我ら先を急ぎ過ぎたように御座います。」


加藤清正軍2万は不慣れな土地の河畔にて、野営をせざる得なくなった。

― ― ― ― 


イェヘナラ氏女真族ナリムブル:「ヌルハチ殿、よう来なさった。」  


建州五大部女真族族長・ヌルハチ:「倭人共が我らの土地に攻め入るとはな。」


ナリムブル:「倭人共は豆満江に阻まれ朝鮮にはいけぬ。奴らは知らずに河を渡ったようだ。」


ヌルハチ:「まさしく羊の群れが柵に自ら入ったような物だ。」


ナリムブル:「しかるに奴ら倭人は鉄砲を携え正面からでは叶わぬぞ。」


ヌルハチ:「羊は弱きゆえ群れなす。我ら狼は羊の群れに()らず、群れより離れし羊を食えば良い。」


ナリムブルはヌルハチの双眸(そうぼう)が蒼く光ったのを知った。やはり、この男とは(いくさ)するべきでないと、背筋に冷たい物を感じた。

― ― ― ―


加藤清正の野営の(そば)に小さな火が着く、火は2つに別れ4つになり8つ16と別れて突然大きくなる。火矢が弧を描いて飛んで来るのだ。

柵を飛び越した火矢のうち3本が陣幕に刺さるが、すぐに消す。


加藤清正:「また、火矢か。たわいもない。夜襲も出来ぬのか、なにゆえ鉄砲を打たん?」


飯田直景:「玉と火薬が惜しゅうございます。さらに奴らは逃げ足が早く、直ぐに鉄砲の届かぬところに逃げまする。」


加藤清正:「して、渡河の段取りは出来ぬのか?小西殿への書状は届いておらぬのか?」


飯田直景:「殿が近況にて(障り(さわり)なし)とお書きになるがゆえ、小西殿も動き申せん。」


加藤清正:「女真共はいくらおる?」


飯田直景:「3千とも1万とも、判りもうさん。なんせ畑仕事をしてるかと思えば兵となったりで。」


加藤清正:「ふむ、だがこうしていても仕方ない。兵糧にも限りがあり、この地にはヒエや粟などしかない。攻めてみるか?」

― ― ― ―


翌日、加藤清正軍のうち1万が陣触れをして戦闘態勢を作る。前から槍隊、弓隊、鉄砲隊、更には騎馬隊である。


飯田直景:「敵は現れましょうか?」


山中から笛の音がする。ピピッ、ピー、ピピッ、〜


すると敵兵200騎が現れる。と思えば、矢を射掛けた後、反転するので500騎の中隊が追撃する。また違う200騎が現れしばしの交戦後敗退するので追撃する。


飯田直景:「弱う御座いますなぁ。隊列や陣形も知り申さん。」


加藤清正:「どうやら、(いくさ)を知らぬらしい。捻り潰せ。」


最初に追撃し敵兵を追った騎馬隊が山間に入ると、最後尾の隊列を土石流が襲う。


将兵:「うわぁ〜、何事じゃ〜。」


山間から伏兵が表れ矢を射掛ける。余りにも簡単な罠だが勝ち戦慣れして油断した加藤清正軍は見る間に削ぎ落とされていく。


加藤清正:「何と、罠か。敵にも策士がおるのか。」


逃げ道を失った背水の陣の加藤清正軍は瞬く間に劣勢となり、分隊が敵陣に切り込むも、包囲されて個別撃破されていく。鉄砲隊を繰り出すも敵陣の全容が掴めずに伏兵に切り込まれる。刀術においても女真族は精強な清正軍に引けをとらない。しかも3〜4人で連携して打ち取りにくる。

― ― ― ―

豆満江を背後にしては全滅を免れぬと判断した清正軍は川沿いに渡河出来る場所を探して決死の行軍となった。

― ― ― ―

加藤清正軍のうち豆満江を越えて南満州から逃れて来た者は3000人にも満たなかった。




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