影武者 豊臣秀吉 6 千利休と茶々
ついに暴かれる千利休切腹の真相。戦国史上最大のスキャンダルが露わになる。だだし今回は前編です。
(たわいもない前書き)
エドゥアール・マネの「草上の昼食」という絵画がある。森の木陰での昼食風景だが、2人の男性と2人の女性が描かれている。その中の1人の女性が全裸である。ただし少しくたびれた女性の横からの描画である。
当時の芸術的な絵画は神話や聖書等の人物をモデルとした「完璧な全裸体の女神」が通常であった。
しかるに「現実の裸体の女性」を描いたとされるマネの写実的絵画は大批判を浴びた。
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今回は千利休と茶々の話であるが、千利休切腹の道程に辿り着けるかは不明である。
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名護屋城の北300mに嘉田神社がある。さらに、その北西100mに白浜の砂地が玄界灘に面している。
富田信則が陣屋を構えていたとされる。ここが茶々のお気に入りの場所である。ただし季節は2月であり海水浴をするには肌寒い。名護屋城の最重要防衛ラインであり一般人はおろか、密偵を恐れて武将すら立ち入りを許されていない。富田信則とその一部の家臣だけが護衛に当たっている。
(撮影当日)
千利休:「茶々殿、お待ちくだされ。某にはきつう御座います。」
茶々:「叔父上、何を申される。ビーチは直ぐ傍じゃ。」
茶々は日本語に英語をまじえる。当時でも外来語は普通に使われていたが、スペイン語やポルトガル語である。スペイン語のCostaは当時の知識人には日常的に使われていた。
茶々と千利休には5人が同行した。メイク担当の女性、カメラマンの男性、アシスタントの男性とアシスタント&ダミーモデルの女性と護衛の武士である。
カメラマン紀伸:「今日は絶好の撮影日和に御座います。気温16度、風は北西から約3メーター、時刻は2時にてややピーカン(雲一つない快晴)で御座いますが、少しづつ日も陰りますればサンセットとなれば最高のロケーションになると思われます。」
千利休:「して、本日は何事に御座いますか?この物々しい出で立ち、ちと合点が致しかねません。」
茶々:「何の事はない。今日は妾のヌード撮影をいたす。」
千利休:「はぁ?ヌードとは如何なるものやら解りませぬが。」
茶々:「なんだ、叔父上はヌードを知らぬのか?東夷国では皆の者が撮っておるぞ。若き日の記念に美しき身体を残すのじゃ。」
千利休:「なんと、カノ国ではそのような事を?・・・・
してヌードとは如何なる事か?」
茶々:「んっ、裸の事じゃ、一糸纏わぬ裸の写真じゃが、叔父上は写真を知らぬのか?東夷国では皆が普通に撮っておる。」
利休は若干、たじろいたが、茶々のあけすけな物言いに納得してしまった。後日、大問題になる事を今は知らない。
利休の脳裏に先日の料亭での美しき茶々の裸体が浮かんできた。利休は(まぁ、いいか。)と心の中で呟いた。
(撮影が始まる)
カメラマン紀伸:「はーぃ、それじゃ、準備して、レフ版と、あっ、小道具のパラソル用意して、日焼け止めはノーグッドだけど被写体を焼いたらダメダメ。」
アシスタント&ダミーモデル:「あの〜、私は日焼け止め塗ってないけど大丈夫ですか?」
カメラマン紀伸:「あっ、君ね、君はフェイスだけ日焼け止め塗ってよ。君は脱がなくていいよ。イメージが崩れるから、服着たままでグッド。」
パラソルの下でダミーの女性がポーズをとる。
カメラマン紀伸:「アホ、何、直立してんの?パラソルのポール持つとか考えないの?」
紀伸の言葉には容赦がない。まるでダミーの女性をモノ扱いだ。」
千利休:「茶々様、あの紀伸と名乗りし者は何者なるか?」
茶々:「うむ、かの国(現代日本)で写真家と申す職業にて、写真を撮らせたら並ぶ者なく。特に女子の裸体を撮らせたら比類なき者と聞く。」
千利休:「それは何とも頼もしきお方に御座います。」
茶々:「妾が銭に委せて呼び寄せたのじゃ。何でもカノ国では、屋外で裸の写真を写すのは御法度にて、職に窮しておったゆえ半値で参らせた。」
千利休:「して、如何ほどかと?」
茶々:「100貫(500万円)じゃ、だがのう、写真集が売れたら、元が取れるばかりか大金が妾に転がり込むそうな。」
千利休:「はぁ、公に致すので御座るか?」
茶々:「そうじゃ、なにか障りがあるのか?」
千利休:「それは秀吉殿や上様(織田信長)も御承知おきか?」
茶々:「知らぬわ。知らせる必要もない。銭儲けをするのに、あの物達の許しがいるか?銭儲けは良き事であろう。
叔父上、それにカノ国では美しき女子」が裸を披露して世の称賛を浴びるのは誉れ高き事と聞き及んでおる。」
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紀伸:「じゃ、本番、行きます。メイクさんよろしく。茶々さんもチャチャと脱いでね。」
少し寒いギャグである。
茶々は着ていた打ち掛けと長襦袢をあっさり脱ぐ。名護屋城の近くで和装だったからブラやパンティなどの下着はしてない。その方がよい。さらに帯は緩くしていたのですぐさま撮影スタンバイとなる。
紀伸:「素晴らしい。なんてビューティフルな御身体でしょう。ビーナス、まさしくアフロディーテ!」
茶々は最初から全裸で撮影に挑む、紀伸の(脱がせ)のサービストークは必要ない。
茶々:「そうかなぁ、少しは恥ずかしいんだよ。茶々も。」
何故か茶々の言動が子供っぽくなる。
ビーチパラソルの下で撮影が始まる。茶々の美しい裸体がしなやかに躍動する。アシスタントの女が茶々に身振り手振でポーズの指示をだす。
茶々はその真似をするだけだから割と楽だ。ただし、アシスタントの女は服を着ているのから構わずに、けっこう陰部が剥き出しになる過激なポーズも仕掛けてくる。
茶々は身体が柔らかい。だがアシスタントの女も訓練している。
茶々:「それは無理かも。」
茶々が初めて音を上げる。アシスタントの女はI字バランスで右足を上半身にピッタリとつける。かなりの体幹を必要とする。
紀伸:「あんまり無茶はしないでください。ところで茶々さん。写真集は何部くらい予定されてますか?」
茶々:「わかりません。それに少しくたびれました。チョット脇腹が痛いし。」
やや無茶なポーズが茶々の身体に軋みを呼んだ。紀伸は少し考える。そして名案が浮かんだ。
紀伸:「「戦国の花嫁」「戦国時代の姫君」「戦国の淀君」うん、これなら間違いない。100万部行くかもしれない。茶々殿、お願いがあるが。」
紀伸の提案は武将を大勢呼んで来てくれとの要望だが、かなりの無茶振りである。
茶々:「それでは富田信則殿の陣にお頼み申そう。」
護衛の武将:「それは如何なる事、某が殿(富田信則)に掛け合って来る故、しばし待たれよ。」
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転移世界の戦国史上、最大にして最上級のスキャンダル事件が始まろうとしていた。