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鞆幕府2 地頭と僧兵

いゃいゃ、ようやく戦国時代転移物らしくなってきました。あの小説みたいに対人クラスター爆弾使えば訳ないですが、鞆の浦を火の海にしたくないし、なんせ御先祖様だから無茶苦茶は出来ません。

地侍3000人と、僧兵1000人の兵力が鞆城の幕府を包囲している。鞆城は南北200メートル、東西500メートルの標高50メートルほどの丘陵に築かれている。名勝の鞆の浦から北に200メートル。足利義昭が居城を築いたのを織田信孝が、そのまま受け継いだ。


居城と言っても、少し大きな館程度であるが100名程度の幕臣が居たのには驚く。毛利輝元にとってはタダ飯を食う食客だったと思われる。

 

いゃ、そんな事よりも事態はかなり危険であり、これだけの兵力で包囲された時点で通常は負けである。


2年前の本能寺の変では圧倒的な劣勢から、織田信長は無傷で賊徒を駆逐し生還した。その事実が信長の魔王伝説に拍車をかけカリスマ支配を可能にした。


近代兵器により武装された神戸信孝に、信長の如き鬼神の業が出来ぬ筈はないが、相手側に相当な死傷者が予測される。

無論、国人や寺社から徴税権を奪った時点で十分予測していた事態であり、自ら招いた筋書きとも言える。


八咫烏なる対人防衛システムが警報を鳴らしている。

「敵兵ニ包囲サレテイマス。総数ハ4000名デス。銃火器ト思エル金属反応ノ形状ガアリマス。」

警報システムのAI音声は抑揚の無いアナライザーモードにしてある。これは生身の人間が自らを冷酷なマシーンと誤認する効果がある。


鞆幕府には、自衛隊員30名、信長直轄兵50名、そして信孝直属の神戸480人衆が戦闘命令を待っている。


包囲軍頭目:「織田信孝、貴様らは完全に包囲されている。もはや逃げ道は無い。降伏せよ。」


丹羽長秀:「信孝殿、如何が致しましょう。」


神戸信孝:「馬鹿め。と言ってやれ。」


丹羽長秀:「はぁ、馬鹿め、ですか?」


そうこうしてるうちに、包囲軍から一斉に火矢が放たれ

た。ただしスプリンクラーが作動して瞬く間に消火する。


鞆幕府側の反撃が始まる。外塀から信長直轄兵が上方に姿を表し、カービン銃を単発で放つ。マシンガン式の連射ではないが、撃った数だけ正確に包囲軍の兵士が倒れる。

レーザー照準なので仕損じる事は無い。


狙撃兵1人で十人ほどが葬られる。狙撃兵は等間隔に10人なので、100名の包囲軍が死亡する。どれも正確に胸を撃ち抜かれている。


よく映画などで見張櫓から矢や鉄砲を放つが、同時に敵からの攻撃目標になるからお勧めしない。

また、マシンガン式の連射をしないのは相手に火縄銃の続け打ちと思わせるためと、狙撃兵のメンタルを考えての事でもある。マシンガンを動かさずに撃つと無惨な肉塊が出来るからだ。


織田信孝:「そこまでじゃ、後は任せろ。」


敵陣は無論、動揺している。だか僧兵の火縄銃隊は健在であり、現代兵器を所有していないとも限らない。

織田信長が、(分相応で身の丈に合った兵器)に限定しているのは相手側に現代兵器が渡る事を危惧しての事でもある。

 

20騎の騎馬が城を討って出る。騎馬の横には歩兵が2〜3人、カービン銃を構えて随行する。

先頭の騎馬は白銀に輝く、鞆幕府公方・織田信孝である。


織田信孝:「地侍諸侯、御役目ご苦労!我は鞆幕府公方の織田信孝なるぞ。されど糞坊主共の味方にて命を落とすとは情けなき事。今からでも遅くない。こちらに参られよ。」


地侍A:「なんと公方なるぞ、アヤツを討ち取れば我が方の勝利ぞ。」


地侍Aが騎馬にて突進してくる。織田信孝が自ら迎え撃つ。古来からの騎馬同士の一騎打ちと相成った。

しかも包囲軍は一方の侍大将、幕府方は総大将である。

ここで双方が名乗りを上げるところであるが戦国時代も末期だと、そんな悠長な事はしない。


地侍Aが槍を構える。と同時に地侍A随行の歩兵2人が先んじて槍を突き出す。その歩兵を信孝随行の歩兵が消音銃で狙撃する。騎馬戦に先立つ歩兵の局地戦と言えるが、戦国時代末期になると一騎打ちなど真面目にやる武将はいなくなっている。


地侍Aの槍が織田信孝の顔面を狙い、凄まじい速さで突き出される。信孝はすんでのところで躱すが槍の穂先が南蛮兜のフェイスガードに突き刺さり兜が跳ね上げられる。


織田信孝:「(これは不味い、止めておけば良かった。)」


地侍Aの槍が剥き出しになった信孝の首を狙って振り降ろされる。一撃で信孝の首が飛ぶところだが、バルディッシュの強化カーボンが何とか防ぐ。側近の歩兵の消音銃から一発の弾丸が放たれる、火縄銃でなくライフルなので古来の具足など軽く貫通する。然るに、地侍Aは怯まない。続けざまに槍が散弾銃の如く飛んでくる。まるで沖田総司の三段突きだ。

なれど消音銃が続けざまに発射され、さしもの地侍Aの動きが鈍くなる。


地侍A:「おのれ、卑怯な、公方ともあろうものが。」


信孝のバルディッシュが振り降ろされ槍の柄が両断されるが地侍Aは槍の片方でさらに挑みかかる。アッパレではあるが、既に致命傷を通常の3倍は食らっている。普通は即死だからゾンビかもしれない。


ともあれ信孝のバルディッシュは地侍Aを鎧毎、何度も斬りつける。信孝も只者ではない。信長の息子の中でも最も武に優れている。故に次男の信雄とは合わない。


頃合い良しと見計らった信孝が、血糊で汚れないように注意しながら左手で地侍Aを組み伏せ、右手の蛮刀を兜の隙間から差し入れ首をゴリゴリと切断する。地侍Aの目がカッと見開かれる。さぞや痛かろう。首を取らせた相手が悪かったようだ。

さらに兜と具足の紐を切り離す。バルディッシュは歩兵に預けている。

なかなか根気のいる作業であるが隙だらけである。もっと手早くやらねばならない。


槍先に地侍Aの首が掲げられる。


織田信孝:「敵将の首討ち取ったり。皆の者共、いざや見参あれ!我は鞆幕府公方:織田信孝なるぞ。」


包囲軍からどよめきが起こる。


包囲軍兵B:「なんと、あれなるは渋川義正殿ではないか。」


武将C:「ならぬぞ、公方、許さん!鉄砲隊前へ〜、撃てぇ〜」


数発の鉛玉が織田信孝を襲う。2発が信孝の頭部と胴に命中するが、兜を取り返して装着していたので難を逃れた。

胴は玉逸しの無い横腹だったので西洋鎧を貫通して軽傷となった。


ただし、敵将を打ち取り、2発の鉛玉を食らって無事だった織田信孝は新たなる伝説を生んだ。

戦鬼・織田信孝と呼ばれるようになる。


上杉謙信が単騎、武田信玄の陣に切り込み太刀を振るった伝説の真偽は定かでないが、この時代では武将としての箔は何者にも代え難かった。


※バルディッシュ:西洋式戦斧、(エイギル・ハードレット卿が愛用したと言われる。)



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