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上杉景勝と森蘭丸 8

ついに越後より出兵した、上杉景勝と直江兼続。宿敵、蘆名を倒して新天地での再起を目指す。

越後街道=会津街道:

会津若松と越後の新発田を結んだ全長100キロの峠道である。越後からは会津街道と呼ばれる。


その街道を一直線に突き進む総勢3千の軍団があった。

かっての越後の虎、上杉謙信軍団の現在の姿である。

兵農分離前の農兵を削ぎ落とした、戦闘専属集団である。よって兵站や補給の考えは皆無である。


行軍5日間で各自が持参した兵糧は使い果たした。さらに季節は11月の初旬で東北地方の山岳地帯を抜ける険しい山道である。荷駄隊がいないので牛馬は無い。また、荷駄が通れる道でもない。牛馬を食い潰して食料にも出来ない。まさしく背水の陣である。


一行は諏訪峠、鳥井峠、車峠、を越え野沢に入った時に東松峠を蘆名勢に固められられているとの伝令を受けた。

守備兵は総勢1万との報告である。


上杉景勝:「何故、我らが来るのが解ったのだ?」


直江兼続:「野営地で竈門を造り、飯炊きをしていたら、蘆名(あしな)の物見に見つかります。それに魚津港には会津の商人も数多く来ております。」


上杉景勝:「何、会津商人とな。先ほどの町人者か。何を商っておる。連れて参れ。」


― ― ― ―


上杉景勝:「そなた、名は何と申すか。」


商人:「作江屋の伊之助と申します。」


上杉景勝:「伊之助とやら、何を商っておる。ずいぶん重そうな背負子(しょいこ)であるのう。」


商人・伊之助「塩にて御座います。それで私に何用で御座いますか。」


怪訝そうに伊之助が言う。景勝はしばらく考えている。


上杉景勝:「のう、伊之助とやら、すまぬが塩を少しばかり分けてはくれまいか。実は蘆名殿の加勢に軍を出したが手違いにより、東松峠の関で足止めを食らっておる。書状が来るまで数日かかるが塩が乏しくなって困っておる。」


商人・伊之助「なんと、滅相もない。この塩は売り先が決まっております。横流しなどしたら商人の風上にも置けぬと、これより後、商いができもうさん。」


上杉景勝:「さもありなん。コレは無理を承知で申したが、すまなんだ。ところで伊之助、近頃。塩の値はいくらじゃ。」


商人・伊之助「塩:1キロ 60文 3000円で御座います。」

 

魚津港での値段は1キロ 20文 1000円である。

上杉景勝は内心(しめた!)と思った。伊之助が値段をふっかけてきたのである。


上杉景勝:「そうか、100文出しても欲しいところじゃが致し方ない。武士も商人も本分を(たが)えては生きては行けぬゆえ仕方ない。足止めして悪かったな。」


今度は伊之助が内心(しめた!)と思った。


商人・伊之助「お困りは重々承知つかまりました。相手先の約定の期限は一月後なるゆえ引き返して再度仕入れては間に合わなくなるのが心配ですので。これにて。」


上杉景勝:「いや、待て待て、一月もあれば十分間に合うだろう。魚津に行かなくとも新発田あたりなら30文と聞き及ぶ。」


と言った具合で、お決まりの押し問答の挙げ句、80文で話が決まった。伊之助は30キロで1800文の粗利である。今の金で9万円となる。


上杉景勝:「して伊之助とやら、コレは無理な頼みやもしれぬが、この荷物を関所越えしてくれぬか。」


商人・伊之助「なんでございましょう。」


上杉景勝:「魚沼産の白米30キロじゃ。それと中には銀が五貫入っておる。」


商人・伊之助:「なんと白米と銀ですと?」


上杉景勝:「いゃいゃ、白米と石ころじゃ、判るの。こちらの代金は受取主からもらってくれ。これは証文じゃ。」


商人・伊之助:「よう御座います。伊之助、確かにお受けしました。」


伊之助は証文に署名し手形を押した。


商人・伊之助:(ちょろいもんだ。武士とやらは署名やら、花押やらでお互いを信用するらしい。関を越えたら白米と銀5貫もっておサラバだ。今度は右之助とでも名乗るか。)


上杉景勝:「では、伊之助、頼んだぞ。それと荷物受け渡しの目印じゃ、背負子(しょいこ)に貼り付けておいてくれ。」


商人・伊之助「解り申した。二重の朱丸に矢とは?」


上杉景勝:「(当たり矢)と申す。縁起が良い旗印じゃ。」










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