上杉景勝と森蘭丸 7
羽柴秀吉と直江兼続登場。秀吉はいつから豊臣になるかは、この世界の歴史では不明です。信長が元気だから改名は無しかな?
1584年11月:安土城の5階謁見の間(戦国時代の造り)
織田信長:「して、越後の様子はどうじゃ。2回目の納税は如何がなっておる。」
羽柴秀吉:「年貢ですが豊作により、大幅な増益となっております。肥料や田植え、種籾の品種が良かったと思われます。上杉景勝への分与金も5割増しの予定です。」
秀吉に納税を年貢と言い換えられ、信長はカチンときたが黙っていた。近頃、秀吉が怖くなってきたから歯向かわない事にしている。
織田信長:「して、上杉景勝は如何がしておる。余に挨拶に来ぬとは無礼な奴じゃ、年貢の分与金も去年の5割増しにしてやろうと言うのに。
ところで、秀吉、4割増しではいかぬか。儂も近頃、物入りが多くてのう。」
羽柴秀吉:「仰せの通りに致したいのですが、お気遣いは不要と心得ます。」
織田信長:「なに、如何がした。4割増しでは不服だと申すか。」
羽柴秀吉:「いえ、実は先日、上杉景勝が春日山城を出奔いたしました。かなりの借金を残しており
ましたが、分与金で精算出来る物と思われます。」
織田信長:「はぁ〜、出奔となぁ??」
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越後:春日山城にて
直江兼続:「殿、情けのう御座います。」
上杉景勝:「何を申すか、余は京都に物見に行くのじゃ。いや、信長の呼び出しに応じねば打首じゃ。」
直江兼続:「殿、蘆名攻めの軍勢は整っております。いざ御下知を賜らん。それに、その金は軍費で御座います。」
上杉景勝:「いや、余は出奔する。もはや戦はまっぴらじゃ。寿司も饅頭も食えんし、しかもこれから冬じゃ、春にいたせ。」
直江兼続:「春まで待ったら、兵が餓えて死にます。」
上杉景勝:「兵と言っても、傭兵だろ。死んでも構わん。世のためじゃ。」
直江兼続:「そうは申しましても、春日山城は傭兵に占拠され蟻一匹、這い出る隙間は御座いません。銭が払えないなら御首を差し出すか、出兵し新たな領地で年貢を取るしか、我々の生き残る術は御座いません。」
上杉景勝:「そうか、出奔やむなしか。致し方ない。」
直江兼続:「殿、出奔では無く出兵です。」
傭兵が今か今かと待つ、春日山城の物見櫓に、上杉景勝と直江兼続が姿を表した。
傭兵に混じって農民の兵もいるが、どうやら魚津港で身上を潰した輩と思える。堅実な農民は豊作で大金が入り懐が豊かなので出兵する必要もなく御下知も無い。
上杉景勝の頼みとする分与金は勘定奉行所で差し止めを食らっている。景勝の浪費した借金の告訴状が山程来ているからだ。勿論、牢人達に飲んで食わせる分も膨大だった。
景勝1人が浪費したわけではない。
上杉景勝:「者共!今より蘆名攻めに(出奔)いたす。命を惜しまず、命懸けで、命の限り働く様に、いざ、(出奔)じゃ〜。」
もとより傭兵には教養がない。上杉景勝の(出奔)がそのまま伝わってしまう。
傭兵達:「殿のためならシュッポンポン、命惜しまず命懸け、命の限り分捕るぞ~」
まるでイナゴの群の様な飢えた兵隊達が蘆名に向かって進軍したのである。越後傭兵軍団にとって負ければ餓死の瀬戸際である。後世、この蘆名攻めを智将:上杉景勝と名参謀:直江兼続の天正越後背水の陣と伝えられたらしい。