食料調達作戦
濃尾平野:日本最大の穀倉地帯である。
2025年12月25日(転移後25日)
平野に隣接する津島港に大型の運搬船が横付けされていた。運搬船からは大型クレーンで 次々と 農業機械が降ろされていた。長良川から東の濃尾平野が今回の耕地整理の主眼である。
将来輪中となる平地は、小さな田畑で細かく区切られていたが、陸揚げされた重機は問答無用で切り直して長方形の農地を作って行く。更に支流の水位の低いところは少々の水深は関係なく重機が乗り越えて、そしてまた長方形の田を切り直していく。
1ヶ月もしないうち小さな田畑が20ほどの区画整理された巨大農地群へと変貌していく。
田畑は土地の奥深くまで耕せれ、水路と農道が整備されている。
長良川、揖斐川、木曽川との提は高く盛り上がり、少々の増水にも耐えられるだろう。
巨大なコンクリート製の取水口の水門が新しい技術の凄さを見せつけている。
次に農地整理部隊は更に濃尾平野の北側をも開拓しだした。立ち止まる事を知らない。もっとも平野の南側は河川幅が広く早急な開発が難しく、さらなるインフラ整備を待たなくてはならない。
内閣官房次官 長谷川:「田植えの時期にはどうやら間に合いそうです。」
総理大臣:「大したものだな 長谷川、ところで日本の食料事情は大丈夫なのか。」
内閣官房次官 長谷川:「今回の食料増産作戦で7万ヘクタールの農地整理をしております。日本国の稲作の作付け面積が140万ヘクタールなので5%の増産ですが尾張国に一反当たり200キロの提供を約束してますので3%の増産になります。」
総理大臣:「なんと、それでは食料自給率は40%が43%になるだけなのか?これ程のインフラ整備にも関わらずに。」
うなだれる総理大臣。
内閣官房次官 長谷川:「いいえ違います。40%✕1.03ですので41.2%です。」
さらにうなだれる総理大臣。長谷川の表情は変わらない。総理大臣からすると薄ら笑いを浮かべているようにも見える。腹が立ったが、文句を言っても無駄なので歯向かう気はない。
突然、バリバリバリというエンジン音が聞こえる。大型のオフロードバイクの集団が総理大臣一行に近づく。
SPに緊張が走る。バイク集団が銃を持っているからだ。
オフロードバイク集団の頭目:
「やあ 長谷川殿、田畑は順調に耕されてるかな。」
長谷川:「これは三郎殿ではありませぬか。出で立ちが変わり過ぎて判りませんでした。」
三郎殿:「いゃいゃ、このバイクという乗り物、実に快適である。馬と違って機嫌を取らなくて良いし疲れもしない。」
長谷川:「三郎殿?でよろしいでしょうか。いかがなものでしょう。 これから順次、肥料と作付け作業を行います。秋には美味しいコシヒカリをご献上できると思います。」
三郎殿:「おおそれは楽しみじゃ。先日、献上していただいた魚沼さんのコシヒカリとやらも、誠に美味であった。」
内閣総理大臣:「少しばかり聞きたいが、そちらにおわす三郎殿と言う方はもしや?」
三郎殿:「あっ、さも有りなん。だが、我が名を名乗る前に、自らの氏素性をお聞かせ願えぬか?」
内閣総理大臣:「失礼しました 私は日本国内閣総理大臣の岸川文雄と申します。」
三郎殿:「ほほう、そちが日本国の内閣総理大臣か。長谷川殿から聞き及んでおる。何でも日本で一番の権力者ということか。」
岸川総理:「いえいえ、そのような大層なものではございませんが、日本国の舵取りをやらせていただいております。」
三郎殿:「ふむ、さも有りなん。では 岸川殿また会おうぞ。」
三郎殿と言う男の集団は踵を返すように、その場を立ち去った。日本国転移から約1ヶ月が過ぎていた。時は1581年が終り激動の1582年へと変わろうとしていた。