第1次米西戦争 2
少し長くなりましたが、今回は在日米軍とイスパニアとの戦争です。なんとなく異世界移転小説っぽくなりましたが残酷な描写が苦手なので、のんびり読んでください。
マニラ沖、イスパニアの無敵艦隊が米機動部隊に相対していた。
マニラの無敵艦隊の船種は10隻、ガレオン船2隻、ガレー船2隻、ガレアス船3隻、武装カラック船3隻の陣容である。真鍮砲が舩側面から突き出している。
対する米機動部隊は空母ジョージ・ワシントンを中心に駆逐艦、イージス艦、哨戒艇、計10隻の陣容である。
船数は同じだが、木造帆船と鋼鉄船、大きさも装備も比較しようがない。
在日米軍副司令官:ジョージ・ラウル4世
「イスバニア総督府フランシスコに告ぐ、汝は現地人を奴隷として不法な就労を行っていると聞く。如何なる事か返答を求める。」
フランシスコ総督:「コレは心外なる物言い、我々は神の御心により、未開なる者を導く使徒なり。」
500メートルの距離を隔てて、拡声器によるスペイン語での応答がなされている。イスパニア側の拡声器は米軍より貸し出された物だ。そこまでするなら直接会って話をすれば良いのだが、武力行使も辞せずが米国の交渉術だから仕方ない。
在日米軍の意図は、(現地人を使ってコーヒー豆の現地栽培して下さい。)だけの話だが軍事的マウントを取って置きたいのだ。伝統的に素直じゃない。
在日米軍副司令官:ジョージ・ラウル4世:
「すなわち、現地人による、現地人のための、現地人による政治を実現すべく、コーヒーとカカオは神から授かり物であり、神の御名に置いて、マンデリンとトラジャとカカオを現地栽培し、関税率を上げて産業を育成するべきで〜〜」
イスパニア・フランシスコ総督:「おい、あいつ何言ってるんだ?」
スペイン兵士A:「さぁ、馬鹿なんじゃ、ないですか?」
フランシスコ総督:「そうか馬鹿なのか。」
納得したフランシスコ総督の拡声器から、開戦における、お決まりの歴史的な名言が発せられた。
「おぉ〜ぃ、馬鹿め!」
交渉は決裂し、米駆逐艦から最初の一発が、スペインのガレー船のマストをへし折った。正確な射撃であり、米機動部隊としては脅しの一発で降参すると踏んだのだろう。
もとより、戦力の差は歴然であり、米軍からしたら「屠殺」は本意ではない。
ただし司令官であるジョージ・ラウル4世が激怒しており、先の渤海海戦の屈辱がトラウマになって、脅しとはいえ、先制攻撃を仕掛けてしまった。
無敵艦隊の船団は、慌てて錨を上げて港に逃げ帰る。反撃などする気は毛頭無い。
真鍮砲も撃てば当たるかもしれないが、絶対に叶わないのはイスパニアの商船の乗組員によって、明との渤海海戦の情報がもたらされている。
さらには目前に島の様な巨大な鋼鉄船があり、鋼鉄船の甲板には飛龍がいる。
それなのに無謀な出撃をしたのはフェリペ2世への建前に過ぎない。
だが歴史は意外なところで、意図しない方向に舵を取る。米海軍が密集隊形で狭い港の海峡に侵入して来たのである。
イスバニア総督府少将:ディエゴ・カルロス
「何と敵船が、我が砲台の前を通り抜ける。マイニラ総督府が危ない。」
海峡の幅は800メートル、長さは2キロ、まさしく米艦隊は袋のネズミである。両者に圧倒的な火力の違いが有ろうとも、油断し過ぎである。
両岸の台場からフランキー砲が火を吹く。さらには射程の長い最新式のカルバリン砲も一斉に轟音を放つ。
狭い海峡では逃げ場がない。数発の砲弾が巡洋艦、さらには空母ジョージ・ワシントンの甲板に着弾する。
(グワーン、ズドーン)
現代の薄い鋼板の船体に激しい衝撃が走る。それは砲弾という重力の塊の破壊力である。
しかし米艦隊の反撃攻勢は凄まじかった。巡洋艦の艦首尾に1基ずつの127mm単装砲が、すかさず連射される。
両岸12基の砲台は、台場・砲撃兵士諸共、瞬時に爆発消滅した。
海峡の砲撃戦は数分で決着した。総督府少将:ディエゴ・カルロス以下、将兵は22名が死亡、負傷者は3名である。将兵は25名であった。すなわち全員が死傷者であり、生存率は11.5%であった。
なお、これはスペイン人のみのカウントであり、徴用された現地人500名程度の消息については記録に無い。
マイニラの湾岸に追い詰められた無敵艦隊船上のフランシスコ総督が拡声器で必死の嘆願をする。
「我々は、抵抗する気は無い。降伏する。これは偶発的な事故であり、無謀な現地人の発砲である。貴方方の要求は全て受け入れ、賠償にも応じよう。だからこれ以上の攻撃は止めて頂きたい。」
対して米軍巡洋艦上のジョージ・ラウル4世司令官:
「許せるか!ハーブムーンミサイル全弾発射!目標、敵、無敵艦隊、及び港湾施設、イスパニア総督府!」
米空母:ジョージ・ワシントン艦上の
在日米軍最高司令官:リッキー・ラップ中将
「誰か!ヤツを止めろ。司令官を解任する。マニラを焼け野原にする気か!元も子もないないだろ。」
だが中将の停止命令に相前後してミサイル2発が放たれイスパニア総督府の上空を通過して居留地に着弾し火災が起こる。これは後日、日本国の議会で民間人への必要以上の攻撃として米軍:中将・司令官非難の対象となった。
この海戦で第二次世界大戦以来初めて米空母に被害が有り、巡洋艦一隻が航行不能となり、マイニラに停泊する事になった。
米軍側の死者は7名、負傷者は54名、これはベトナム戦争以来最大である。
そして、航行不能の巡洋艦の放置が(この世界)の歴史的大失態になった。