118 1595年9月8日 豊臣秀頼3 覇王
豊臣秀頼は2歳になっていた。普通の2歳児ではない。無情にも前世の記憶を取り戻してしまった。
そして未来の仇敵:徳川家康との(今回の人生初の面会)を大坂城で行う事になる。
ここで重要な事が有る。双方共、莫大な資金を持っている。豊臣秀頼は父の豊臣秀吉が莫大な借金をして自己破産して、いやこの時代だから踏み倒して逐電した。主な借主は清国の万暦帝で多量の銀が有る。さらには石見銀山を手中にしている。
かたや徳川家康は現代日本との交易で貯め込んだ円である。配合飼料の輸出と現代日本からの排泄物処理費である。さらに甲州金と佐渡金山を治めている。
金と銀の莫大な経済力の対決が、16世紀の戦国日本末期に渦巻いている。
ところで織田はどうしているか。征夷大将軍:織田信長、副将軍:信忠、そして鞆幕府公方:武神信孝。
最強の織田一族は、この転移世界では存命である。地位も実績も華々しい。
ところが実史同様、表舞台から隠遁した形になりつつある。
なぜか?、、理由は幾つかあるが、何れも釈然としない。一番の理由は信孝の圧倒的支持な武力行使が現代日本の世論の批判に晒されたからである。
また、信長の税制改革による直接税も封建制度の瓦解を招き、家臣団が崩壊し武士が豊臣に流れた。転移日本は未だに戦国時代だったのである。
そして豊臣vs徳川の時代が始まる。しかしそれは移転世界の一部の歴史でしかない。いや、極めてローカルな戦国日本の話でしか無いはずだ。
世界の各国は現代日本の超オーバーテクノロジーで大きく変化している。
スエズ運河の完成、世界政府の樹立、オスマン帝国の衰退、物流は風頼みの帆船からディーゼル機関に変わっている。
豊臣だ、徳川、織田だの現代日本の出現により些細な歴史になっている(ハズ)である。
しかるに大坂城の天守閣での2人の謁見は異常なモノであった。向かい合った秀頼と家康、秀頼は幼児、家康は壮年である。だが2人の背負う巨大な歴史の軋轢は現代日本のテクノロジーを遥かに上回る巨大なウネリだったのである。